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John 8:32 Then you will know the truth, and the truth will set you free."  複数ブログの過去記事を移管し、管理の委託を受けています/※場合により、語る対象の「ネタバレ」も在ります。ご了承ください 

「グレート・ムタvsシンスケ・ナカムラ」雑感

まず動画を。多くはノア公式。

グレートムタvs中邑真輔

いやあ、いい試合だったですね。「イヤァオ、いい試合だった」というべきか。
公然とした情報だから普通に書くけど、武藤はもはや障害者手帳を持つほどのヒザの故障があり、ムーンサルトプレスをこなしたような全盛期の動きというのは全く持ってできない。
しかし、徐々にヒザを悪くしていく間に、必殺技もムーンサルトプレスから「シャイニングウィザード」という「労力を使わない」ものに以降。レスリングも全体的に動き回らずに済む内容に組み立て直し、それゆえに還暦までファイトすることができた……


という話をあらためておさらい。
これについて夢枕獏氏が、以前書いた内容を思い出したのである。

彼はジャイアント馬場アブドーラ・ザ・ブッチャーがたしか平成に入って唯一行ったシングルマッチを「これはまるで歌舞伎のようだ」という言い方で語っていたのだった。
これ、猪木信者の揶揄かと思えばさにあらず。

「歌舞伎のような」とは……そこにも造詣深い夢枕獏氏は、別の場所でこういう話を語っていた。
名歌舞伎役者が、老いて今までのような演技ができなくなる。男性がその若さを生かして、若い女性に変化する女形の魅力も、ストレートな意味では消失する。
だが、歌舞伎ではそんな老役者も、たとえば舞台にまで歩くことがしんどいような人でも、そのまま舞台に上がってもらった状態で幕を開ける「板つき」というやり方がある。それで、その場で(歩かず)踊ってもらう。

そんな老俳優の女形は、単純に若い男が若い女性を演じるようなものとは違う魅力がある。



みたいなことを語っていた、のである。
グレート・ムタ武藤敬司が、往年のような動きができない、ということは相手もわかっている。そこで、試合をどう成り立たせるかという話になる。
シンスケも新日やWWEで鍛えに鍛えたそんなプロレス頭によって、永遠に残るであろうグレート・ムタとの対戦という作品を作った、ということだ。



合わせてみてもらいたいのが、この動画。
ずっとアイドル的善玉だったアンドレが、大ヒールに転向したとき…この時のアンドレも膝などが相当悪くなっており、全盛期の動きなどできなかった。
(だからヒールターンしたわけだが)
だが、だからこそ単純なチョークという技だけをアンドレが披露し、それを全レスラー総出で「とんでもない剛腕チョーク、しかもそれをやめさせようと全レスラー総がかりでもびくともしない!」というふうに見せてくれたのだ。





…………こんな見方は”ミスター高橋以後”だからできるので、
やはりあの本は出てしかるべきだった、と思うのだな。21世紀の始まりの年に出たその本の価値を、2023年の元日にあらためて知った、ということ。

つづく。あとで別記事に


この本から…毒霧について語る予定だけど、今後の別記事にしよう