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John 8:32 Then you will know the truth, and the truth will set you free."  複数ブログの過去記事を移管し、管理の委託を受けています/※場合により、語る対象の「ネタバレ」も在ります。ご了承ください 

町山智浩「間もなくTVドラマは滅びます。ネットでの直接有料配信が滅ぼします」…アニメもそうなる??

ちょっとタイトルは過激すぎるかも知れないが、発言の大筋ということで許されよ。
元ネタはこちら。
この冒頭部分です。


冒頭の数分は、作品そのものではなく、その作品の配給、配信方式を語っている。このドラマはネットフィリックスネットフリックスが直接制作、直接有料で配信しているのだ!「視聴率がよければ、そこでCMを流した商品が売れるかも…」という、あやふやな二段階、三段階も踏むような必要はない、と。


文字起こしたほうがいいですかね。(1分半ごろから)
いや…まてよ、なまじ一字一句書き起こすよりは、、ざっくり要約したほうがあれこれといいじゃないか、権利的には(笑)
それだ、一字一句厳密にではなく、要点を書くことにしよう。


町山智浩氏が語る「テレビドラマが滅びる未来」〜「たまむすび」トークより。】

・上のドラマに関して…

・シーズン3がこないだ一挙配信されたんで、はまってみまくってるんですけど…。さっき「テレビドラマ」ってぼく、言っちゃったんですけど、ネットフリックスっていう、映像配信サイトのオリジナルドラマなんです。
 
・この会社は映画の映像を、レンタルビデオの代わりに配信していた会社なんです。今アメリカはそういったところがドラマをつくるというのがどんどん主流になっていって、アマゾンね、あれもドラマを作っている。
 
・テレビでドラマを作るということ自体がもう終わります。そろそろ。少なくともアメリカはもうおわります。
  
・決まった時間に家に帰ってテレビをみることがもう不可能になっています。みんなドラマはスマホタブレットで観るようになっていますし、
 
・まぁ、はっきりいうとスポンサーがついて、番組にお金を出して、広告をだしてってってのが…広告を出せば、どのくらいドラマで商品が売れるかって計測不可能ですからね。そこで企業がお金をかけることは今後もう不可能でしょう。
 
・でも直接配信でやると、1回につき2ドル3ドルで買うんですよ。観たぶんだけ。だから確実に制作費が、当たれば回収できる。
 
・視聴率というあいまいなもので、それが高ければ広告で商品が売れる、だからおかねをもらえるという、曖昧なシステムは消えます。もうスポンサー制度は無くなってきますよ。ラジオもテレビも…テレビの存在意義は殆どなくなっているんですよ。


(このあとはドラマ自体の解説に入っていく)

ちなみに、当然ながらこの話はラジオで軽妙にトークを行う「たまむすび」だって、視聴率(聴取率)によって広告主から制作費を貰うという点では同じであり(笑)、だから町山氏、スポンサー制度、広告制度の終焉を語るとき、口調にほんのわずか躊躇のあとが見られる(笑)よく聞いてみてね。


そして、この町山智浩氏の解説は…この前語ったばっかりだが、井沢元彦が十数年前に語った予言が、あまりにもピタリと当たっているのでおそろしくなるくらいなのだ。

ネットフリックス上陸。「米国ではスポーツ放送料が急騰。生放送の強みがあるのはスポーツだけ」?…あれ、井沢元彦予言がほぼ的中? - http://d.hatena.ne.jp/gryphon/20150403/p3
 
「視聴時間を指定」するテレビはオンデマンドに変わるか〜「ラピュタ」テレビ放送前に井沢元彦の予言を振り返る。 - http://d.hatena.ne.jp/gryphon/20130731/p3

【逆説の日本史13 第四章「演劇の変質編」より】(初出の雑誌掲載はだいたい2003年)
実はテレビが映画に勝った「利点」というものが、今新しいメディアに崩されかけている・・・それがインターネットである。
たとえば「従来型」のテレビ会社「フジテレビ」の名物番組に「月9」ドラマがある。文字通り「月曜午後9時に良いドラマをやりますよ」ということだが、これは実は「月曜9時にはテレビの前に座って下さい」と言っているのと同じことだということに、テレビ関係者は気づいているか?
映画・・・テレビは・・・「時刻を指定している」点では実は同じことなのだ。ここで敢えて問うが、サービス業というものは「客に指定してもらう」ものなのか、それをサービスする側が「指定する」ものなのか?言うまでもないだろう。ということは、実は「月9」などという言い方は、サービス業としては改善されるべき点だということでもある。
もちろん、ビデオ録画という方法はある。しかし、これも現時点ではサービスの提供者であるテレビ局ではなく、視聴者がやらなければいけないという問題がある。「お客様は神様です」に明らかに反する行為だ。
そんなこと言っても他に方法はないじゃないか、というのは十年前は確かにその通りだった。ところが番組を作ってインターネット上にプールしておく形になれば、たとえば次のようなことになる。
「ねえ、タッキーの『水戸黄門』見た?」
「七回目までは見た。八回目はプールされたの?」
「きのうね。面白いよ」
「ああ、じゃあ、今日は忙しいから、明日の朝にでも見ようかな。CM抜きでね」
 
決まった時刻にしか放送しないのではないから、いつでも見られる。当然「月9」などという言い方はなくなり、主演俳優やドラマのタイトルが重要視される。直接注文があるわけだから、視聴率などというランダム・サンプリングの不確かな数字に頼らなくても、セルビデオのように販売実数が出る。また個々の注文に応じられるわけだから、たとえば少し「受信料」を払ってもいいから、CMは抜かしたバージョンで・・・ということも可能になる・・・となればフジ、テレビ朝日、TBS,などと分かれている意味もあまりない・・・これは「近未来の話」というより現実の話でもある。アメリカでは一般放送を大量録画し、自動的にCMをカットする機器が大いに売れているという。いずれ日本にも上陸するだろう。そうなるとスポンサー(広告主)が民放テレビを見放すという事態もありうるのだ。
(略)

逆説の日本史 13 近世展開編 (小学館文庫)

逆説の日本史 13 近世展開編 (小学館文庫)

上の予言では「最新回がプールされた」とかかれているが、すでに「配信開始日」という言葉は、日本語でもふつうに登場するようになってきた。
うむ、やっぱりこの予言の当たり具合はすごいよ。



ただ、数週間前に書いたばっかりのネタなので、これだけでは今、記事を書こうとは思わなかっただろう。

この記事をあらためて書く気になったのは、はてブでこれが話題になったから。

アニメ業界にお金を落とす方法がない http://anond.hatelabo.jp/20150410132726

1.○○面白かった!DVD、BD買う?

買わない
理由

高い(ほんとうに欲しいのなら届かない値段じゃないけど)
基本的に一度見終わった物を何度も見返さない。
また見たくなったら、定額見放題、配信、レンタル等で事足りる(定額見放題とかレンタルとか落ちるお金は微々たるものだよね?)
特典に興味なし
(略)

いくら頭をひねっても落とす方法がなかった。
やっぱ広く浅くは難しくて、ソシャゲのように金払いのいい一部の人間に支えてもらうしかないのかな。

この意見への、アンサーソングに上の「ハウスオブカード」、その紹介たるこの記事は多少はなるんじゃないかと思います。


まあ、それだけ多量の配信ファンが見込める基盤をネットフリックスやHuluが作ったからこそこれができる、のでしょうけどね。でも日本でも、未来永劫これができないとはおもえませんね。


そしてアニメ…日本において、1本いくらの値段で何本配信できれば、今の構造に負けないぐらいの採算が取れるでしょうか?それは不可能でしょうか??



こういう枠組みを作ることは、ある意味作品作り以上に重要。井沢氏は、そもそも「広告によってテレビ、ラジオ番組をつくる」という制度を考え付いたアメリカ?のどこかの無名の男を「本当に天才」だれが考えたのか調べたが、「考案者はだれか分からなかった」と書いています。

逆説の日本史1 古代黎明編(小学館文庫): 封印された[倭]の謎

逆説の日本史1 古代黎明編(小学館文庫): 封印された[倭]の謎

コンテンツと媒体、お金を「貰う」か「払う」かに別に原則は無い。今のTVは、無名の天才が仕組みをつくった(井沢元彦) - http://d.hatena.ne.jp/gryphon/20140330/p3

……現代人が誰でも知っているもの、その中にテレビがある。テレビを知らない人がいないだろう。では、そのテレビを使って放送事業を始めたのは誰か?それもNHKタイプの受信料徴収システムではなく、番組にスポンサーをつけたCMを流して広告料を稼ぎ、それで番組を制作するシステムを考え出したのは誰か?
これは凄いアイデアだと思う。
テレビが実用化される前も、テレビの概念は既にあった。(略)しかし、そういう資料を読んでみると、テレビと言うのは娯楽でなく、単なる通信手段としてしか認識されていない。
(略)
映像を遠方へ送る。これはいわゆるハードであり、その機能をどう使うかはソフトの問題である。
しかし、テレビと言うハードを、収入的には広告会社で実態は娯楽提供会社にするというアイデアは当初はまったくなかったのだ。
民放(商業放送)の番組は何故タダなのか?
いや、実際はタダではない。視聴者は消費者として商品を買う場合、その価格に上乗せされた「宣伝費」を支払っている。それが積もり積もって「広告料」となり、企業から民放に支払われる。民放はそのカネで番組を作る−−まったくよく考えられたアイデアである。
(略)
そういうチリが積もって番組という名の娯楽にばける。このシステムを考えたヤツは、まぎれもなく天才である
ところが、その天才の名を皆が知っているかといえば、だれも知らない。
筆者は昔テレビマンだった。その私も知らない。そして私の知る限り、当時務めていたテレビ局でも、知っている人は誰もいなかった。
これはテレビ発明以前には無かったシステムである。だからこの百年ぐらいの間に、たぶんアメリカ人の誰かが考え出したのだろうが、その天才の名前をテレビマンですら誰も知らないのである。
(「逆説の日本史」1巻)


80年代、パトレイバーを低価格の数本のシリーズで採算をとったり、「銀河英雄伝説」シリーズを1本ごとにビデオを配送して販売することでみごとに採算を取った、あれはすごいことだったのだなあ、と思います。
どこかが、この完全有料配信によるアニメ制作に乗り出すことはあるか。
そのための配信基盤が日本にできるか。
採算はとれるか。
【参考】佐倉 大 (北久保弘之) @LawofGreenの質疑より。
http://ask.fm/LawofGreen/answer/127664406479


追記おまけ テレビマンのほうは「オンデマンド? ふざけんな!俺たちが月9といったら、月曜9時にみんなでテレビの前で見ろよ!!」と叫ぶ(笑)

再掲載

「番組は我々が提供する時間帯に、テレビの前に座って観賞してよ!」…旧体制の”新撰組”はかく抵抗する。

水曜どうでしょうの製作者 
「ぼくはネットとTVはまったく違うと思ってます。で、ぼくの番組は確かに生放送じゃない。だけどなんかこう、腹が立ってしょうがないんですけど、テレビマンは…ぼくはいま、腹が立ってしょうがないんだけど、みんなそう思っていると思うんだけど、テレビマンは、『その時間にテレビの前に座ってみてくれ!』といわなきゃいけない。」
糸井重里
「みんな、一緒に見たいんですよ。人間は一人で生きているわけじゃない。会社で同じ話題、家族で一緒の話題のうれしさはばらばらに、ああ先月に見たじゃなりたたないんですよ。今日XXがあるから帰るね、ってのがうれしいんですよ。」
(略)
テレビ東京ガイアの夜明け」製作者 
「そんなに皆さん便利なものがみたいのか。便利なものがいいのかと・・・。情報とかオンデマンドとか、そんな便利なものばっかりを求めてどうするんだろう。」
http://d.hatena.ne.jp/gryphon/20090427#p2

関連過去記事

「怪盗ルパン伝アバンチュリエ」移籍連載の「月刊ヒーローズ」がわずか200円で笑った/漫画は「スポンサー時代」かも。- http://d.hatena.ne.jp/gryphon/20130307/p4
  
「WEB公開漫画が本になる時、作者の報酬は」の議論で「メディアとコンテンツ、どっちがカネを払うか」が再び気になった、テレビの放送料を含め。 - http://d.hatena.ne.jp/gryphon/20140925/p4
 
(外部リンク)
【WEB漫画が無償でコミックス化される現状】に対する漫画家たちの声 - Togetterまとめ http://togetter.com/li/722723
 
■なぜ地方ではアニメが放送されないのか-http://blog.toppy.net/?eid=1073150