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John 8:32 Then you will know the truth, and the truth will set you free."  複数ブログの過去記事を移管し、管理の委託を受けています/※場合により、語る対象の「ネタバレ」も在ります。ご了承ください 

コンテンツと媒体、お金を「貰う」か「払う」かに別に原則は無い。今のTVは、無名の天才が仕組みをつくった(井沢元彦)

上の二つの記事を読んだ上で、
この文章を読んで頂きたい。

……現代人が誰でも知っているもの、その中にテレビがある。テレビを知らない人がいないだろう。では、そのテレビを使って放送事業を始めたのは誰か?それもNHKタイプの受信料徴収システムではなく、番組にスポンサーをつけたCMを流して広告料を稼ぎ、それで番組を制作するシステムを考え出したのは誰か?
これは凄いアイデアだと思う。
テレビが実用化される前も、テレビの概念は既にあった。これは不思議でもなんでもなく、「いずれこういう装置が出来るでしょう」という予想なら今もある。たとえば火星へ行く宇宙船はこういう形になるとか、そこまで行かなくてもやがて宇宙ステーションができると、内部はこんな形になる、というのもそれだ。
実用化されていなくても、その実用化後の状態を想像することはできる。テレビについても、それはあった。
しかし、そういう資料を読んでみると、テレビと言うのは娯楽でなく、単なる通信手段としてしか認識されていない。
(略)
映像を遠方へ送る。これはいわゆるハードであり、その機能をどう使うかはソフトの問題である。
しかし、テレビと言うハードを、収入的には広告会社で実態は娯楽提供会社にするというアイデアは当初はまったくなかったのだ。
民放(商業放送)の番組は何故タダなのか?
いや、実際はタダではない。視聴者は消費者として商品を買う場合、その価格に上乗せされた「宣伝費」を支払っている。それが積もり積もって「広告料」となり、企業から民放に支払われる。民放はそのカネで番組を作る−−まったくよく考えられたアイデアである。
(略)
そういうチリが積もって番組という名の娯楽にばける。このシステムを考えたヤツは、まぎれもなく天才である。
ところが、その天才の名を皆が知っているかといえば、だれも知らない。
筆者は昔テレビマンだった。その私も知らない。そして私の知る限り、当時務めていたテレビ局でも、知っている人は誰もいなかった。
これはテレビ発明以前には無かったシステムである。だからこの百年ぐらいの間に、たぶんアメリカ人の誰かが考え出したのだろうが、その天才の名前をテレビマンですら誰も知らないのである。
(「逆説の日本史」1巻)

井沢元彦氏がなぜこんな例を挙げたのかというと「当たり前の仕組みが当たり前になりすぎると、誰も気にしなくなる」「そのことは記録されない」ということの例として、こう長々と書いているのである。そこから推理する古代史などの仮説は、時々腑に落ちないものも正直あるのだが(笑)、それはそれとして上の「民放の広告システムを考えたやつは天才」「だが歴史に埋もれ、その名を知る人は少ない」というのはなるほどな話で、その後自分が「広告と媒体とコンテンツ」を考える時に大いに示唆されるものがあった。

上の記事で、全日本プロレスのオーナー氏が
テレビ東京の深夜に、プロレス番組を放送して『もらう』ため、放送局に月1200万円を払った」「今はこっちが放送料をもらえるテレビ局を探して営業中」というのは実に示唆的というべきなのだ。


昨年、こんな二本の記事を書いた。
片方は、分厚い漫画雑誌が「200円」というかなりお安い状態で売られていること。
もうひとつは「お風呂屋の風呂桶」=ケロヨン桶が、やはり「スポンサー」の「商品名宣伝」のために無料で手に入った、ちう話だ。
これに対してアンテナが働いたのは、間違いなく井沢氏の指摘があったからだな。

「怪盗ルパン伝アバンチュリエ」移籍連載の「月刊ヒーローズ」がわずか200円で笑った/漫画は「スポンサー時代」かも。
http://d.hatena.ne.jp/gryphon/20130307/p4
 
テレビと、地上波と、CSと、スポンサーと、あれこれと・・・
http://d.hatena.ne.jp/gryphon/20130322/p4

あっ、全日本プロレスのオーナーが嘆く逆転といえば、最近こういう記事が話題になったよね。

■なぜ地方ではアニメが放送されないのか
http://blog.toppy.net/?eid=1073150


地方で放送されるアニメが少ない理由とは何か。

テレビ局の数が少ないから?
地方局が努力をしていないから?

放送の要望を出すにしても、見当違いのところに出しては意味が無い。そもそも、アニメを放送する権限が誰にあるのかを考えることで、その理由を紐解いてみよう。
(略)

この問題に大きくかかわるのは、「テレビ局が作っているアニメ」と「そうじゃないアニメ」の種類わけである。

テレビ局が作っているアニメ

テレビ局が作っているアニメとは、……テレビ局がスポンサーを集めて、そのスポンサーからのお金でアニメを製作している。基本的には、スポンサーが製作費と全国の各テレビ局分の電波料を負担しているので、キー局だけでなく、地方局もネット保証金という名目でお金を受け取り、放送をしている。
(略)
これらテレビ局が作っているアニメは、もし、その地方で放送されていないのであれば、地方のテレビ局に要望を出すことで、その局が放送したいと思ったり、その地方だけのスポンサーがつけば、キー局からアニメを購入し、放送をすることができる……問題は「そうじゃないアニメ」である。


テレビ局が作っていないアニメ
主に深夜に放送されるアニメを見ると、製作は「製作委員会」という形になっている。これは、製作委員会参加企業それぞれが出資……DVDやブルーレイなどを発売し、その収益を参加企業でわけあうのだ。……製作委員会がテレビ局の放送枠を買って流しているのである。
(略)
見分けるには最後の「製作」のテロップを見るしかない。そこにテレビ局の名前が大きく書かれていれば、テレビ局の製作であり、「○○製作委員会」とあれば製作委員会の製作である。

最近は深夜アニメだけでなく、「しろくまカフェ」など夕方に放送されているアニメや、バラエティ番組でも「○○製作委員会」……「深夜じゃなくて夕方に流せばいいのに」という声もあるが、もしそうしようとなると、製作委員会が枠を買う予算をもっと潤沢に用意…
(略)
…地方で、製作委員会形式の深夜アニメが放送されない理由が。……製作委員会と代理店が「この地域では放送する予算もその必要も無い」と判断した結果なのである。DVDやブルーレイ販売などによる収益が電波料を上回りそうな地域にしか放送しない。これはビジネスとして考えれば、残念ながら当然……

こうなってたのか。
これも「番組のDVD(ビデオ、ブルーレイ)を売る」という仕組みが出来て初めて生まれたのでしょうから30年前には遡らないだろうなあ。
そうそう、以前、「視聴率」によってではなく「その番組のDVDが売れるか」によって続編が作られたり途中で打ち切られたりするから、DVDの売り上げランキングのほうが「人気アニメ」の判断には役立つ…と聞いたときも「あっ、井沢元彦のアレだ」と思ったんだっけ。
話は鈴木みそ「銭」のどこかにて漫画化されていたのだった。


そんなわけで「板子一枚下は地獄」じゃないが、コンテンツ側と、それを流通させる媒体側が「どっちがお金をもらうか」は本当に紙一重、そのときの偶然か力関係で決まる。

ダナ・ホワイトが、UFCより先にアメリカで地上波テレビ放送をした他団体をDisって、「カネを出して大会を放送してもらうなんてのは、UFCならやろうと思えばすぐに出来る。そういう誘いだって何度もきた。だが、俺はちゃんと金をもらって放送するために我慢しているんだ」と豪語してたんだっけ。
しかし、最後の最後にUFCが一発大逆転のホームランを放った「TUF」は…どっちだったっけかな??

このへんの経緯や他団体Disの話は「OMASUKI FIGHT」に長年載っていたのだが、ちょっと今は探せない。どこかで見つかればいいのだが。
http://omasuki.blog122.fc2.com/

頭の体操。「広告」によって、ほかに何が無料に出来る?

例えば、広告費1億円があるとする。100000000円。
これで「飲み物のスポンサー」になり、100円のジュースを100万本無料にする。半額の50円とかのほうが現実的だし、供給量も増えるか。
コンビニあたりで「ポコペン電気の50円ジュース」がふつうに売られれば…テレビでイメージCMを流すより、消費者や市民に与えるいいイメージは生まれないかい?
一代で新興企業を起こしたオーナー社長で、のちに国会議員になったものの、企業イメージが悪くていろいろ苦労しているお金持ちとかにおススメかも(笑)

漫画の電子書籍は、ひとりの天才が「広告付き」を開発し、…そして成功した、か?

Jコミ
https://www.j-comi.jp/

http://ja.wikipedia.org/wiki/J%E3%82%B3%E3%83%9F
Jコミは、絶版となった漫画、ライトノベルTRPGルールブックなどを電子書籍として配信するウェブサイト。2010年(平成22年)11月26日に仮公開され[2]、2011年(平成23年)4月12日に正式公開された。運営は漫画家の赤松健代表取締役社長を務める株式会社Jコミによって行われている[3]。
 
作者の了解を得て広告を挿入した形で絶版作品を公開し、広告収入を作者に還元することを目的としている[4]。仮公開時には赤松健の漫画『ラブひな』全14巻が公開された[2]。絶版作品とは謳われているものの、単行本未収録の読み切りやそれらを独自にまとめたオリジナルの短編集も公開されている。なお、紙メディアで復刻が決まった作品は公開停止になっている。

【メモ】「新聞に広告をつければもーかる」と気づいたのは新聞王ジラルダン

一度教えてもらったあと、どこにあったか忘れてたが見つかった!忘れないよう複写

togetter.com
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未知神明(みちがみ・あきら) @ontheroadx
2016年3月26日

(豆知識)電波における世界最初のCMスポンサーは当然ラジオで、1922年8月28日のクインーズボロ・コーポレーションという不動産会社によるもの、ということになっています。

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gryphon(まとめ用RT多) @gryphonjapan
2016年3月26日

ontheroadx その周辺の、どこかの知恵者が考え付いたのでしょうな…これこそ、図書館レファランスサービスに聞いたら調べがつくだろうか? /【募集】作家・井沢元彦が「調べたけれどわからなかった」とギブアップした、「電波は娯楽を提供するのと一緒に宣伝を流し、『広告会社』として収入を得れば成立する」(1922年のラジオが元祖ということは判明)を発案・実行した人名をご存じの方は教えてください。

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gryphon(まとめ用RT多) @gryphonjapan
2016年3月26日

gryphonjapan ontheroadx となると、すでに新聞や雑誌は(それ自体も売っていたけど)そういうビジネスモデルを持っていたのだから「印刷物には、ニュースや小説といった、読者が読みたいと思わせるコンテンツと一緒に『この商品買って!』という情報を載せて、その商品を売りたい業者からも金もらえばいいんじゃね?」と考えたなぞの天才、出版社?の元祖を探すべきか…

hararitto @sseg14
2016年3月27日

gryphonjapan それは確定しています。19世紀フランスの「新聞王」エミール・ド・ジラルダンです。 評伝 鹿島茂「新聞王ジラルダン 」(ちくま文庫) があります。