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John 8:32 Then you will know the truth, and the truth will set you free."  複数ブログの過去記事を移管し、管理の委託を受けています/※場合により、語る対象の「ネタバレ」も在ります。ご了承ください 

アプリ経由のTV番組「予約録画」数は集計でき、当然順位も分かる。しかし「視聴率」ほどの影響力はない…今後は?

偶然、こんな記事が目につきました。毎日新聞系の「まんたんWEB」です。

速報トルネ番付:秋アニメ1話“暫定”首位は「ドリフターズ」 強敵「ガンダム」に大差 http://mantan-web.jp/2016/10/15/20161015dog00m200030000c.html

ソニー・インタラクティブエンタテインメント(SIE)のレコーダー用アプリ「トルネ」の「トル機能」を使い、東京都内で録画された人気番組のランキングを発表するコーナー「トルネ番付」。10月に放送がスタートした秋アニメの第1話を対象とした“速報”で、1〜9日時点でのトップは、「DRIFTERS(ドリフターズ)」だった。

 ドリフターズ」は約1万7200トルで、2位の「機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ」に約1700トルの大差をつけた。春アニメで2万トル前後をキープする「ジョジョの奇妙な冒険 ダイヤモンドは砕けない」にどこまで迫れるか注目だ。

 3位は「3月のライオン」の約1万4700トル、4位はオリジナルアニメ「終末のイゼッタ」の約1万4600トル、5位は「亜人」の約1万4400トルだった…

こんなものがあったのか!!
今回知りました。
しかしまー、デジャブと言いますか…

もう2009年には、こんな記事を当方書いていたんですよ。

「視聴率調査」に「録画率調査」が並ぶ日・・・本当の意味でのIT”革命”とは - http://d.hatena.ne.jp/gryphon/20090716/p3

……なんといっても視聴率は、たかだか300?程度の世帯を調査したサンプリングだ。そして時間と労力がかかる。
対して「Gガイド」は、業務の傍ら勝手にデータがたまる。しかもその数字自体はサンプリングではなくそのままの数字だ。
もちろん「ネットを使える人」「ネットが好きな人」「ただ見るだけでなく、録画する人」が母集団になるという構造的な部分は当然存在するのだが(ニコニコ世論調査なるもののズレと同じだ)、しかしこれは間違いなく、「テレビをだれが見ているか・どの番組に人気があったか」を調べるというツールという部分での比較において、現在のニールセンやらの視聴率調査を脅かす存在になっていく…


その元となったのは、J-CASTのこの記事

アニメ映画「ヱヴァンゲリヲン」 信じられない低視聴率のナゾ http://www.j-cast.com/2009/07/07044828.html


・・・録画予約数調査で日本最大のソネット「Gガイド・テレビ王国」によれば、なんと、録画予約数では「歴代アニメの中でも断トツに高い数字」だったという。「Gガイド・テレビ王国」は全国の番組(地上デジタル・アナログ、BSデジタル・アナログとスカパー!スカパー!e2)が調査対象で、視聴者がパソコンを使って同サイトの番組予約ボタンをクリックすればパソコンに録画、予約数がカウントされる。HDDレコーダーにも録画予約が可能で、月間に700万件以上の予約が行われている。
最初から録画すると決めていた人が多数だった
同サイトのランキングを見ると、「週間予約ランキング」(09年6/29〜7/5)で「ヱヴァンゲリヲン」が1位。(略)「歴代のアニメジャンル作品の中で、まれにみる圧倒的な数字を記録しました。今回のヱヴァンゲリヲンを見る場合、最初から録画すると決めていた、という人が多かったようです」
と説明している。

当時にしては、
ブクマもついているね
http://b.hatena.ne.jp/entry/www.j-cast.com/2009/07/07044828.html


「Gガイド」は今もフツーに続いている。
http://tv.so-net.ne.jp/ranking/


最近、この「ネットでのコンテンツ視聴結果は、細かい結果まで確実に出る、しっかりした数字。テレビの視聴率はサンプリングの『推測』に過ぎないじゃないか」という話が、ネットコンテンツの当事者たちから出てくるようになりました。

「(略)僕は…DAZNとかabemaTV等も地上波を食うくらいの脅威になるのではと思っているんです。ネットのひとつの強みは『いいね』とか視聴者数とか、しっかり数が出るところですよね。(略)広告主も予算を通して社内で承認とるのに、しっかり数字があるほうが全然いいじゃないですか…(かなり略)…このコンテンツにはこれだけ視聴者がいますよと示せば、広告スポンサーがつきやすくなる…実際にWWEのケースを見ても(ネットの無料コンテンツに力を入れて)しっかりスポンサーが付き続けていますからね。ネットテレビ局も、ちゃんとした視聴者世帯数を出せば広告につながるんです」

http://ch.nicovideo.jp/dropkick/blomaga/ar1083998
北野 ごらんのとおり、AbemaTVはいろんなコンテンツを扱っていますが、格闘技はあくまでその中の一つであって。「AbemaTVが仕掛けた」という見方をしていただくことは多いですけど、格闘技放送の反響が大きかったことで、AbemaTVとしても「もっと格闘技を取り上げたほうがいいんじゃないか?」という方向にシフトしていったところはあります。

――というと、予想以上に格闘技コンテンツの反響が大きかったわけですね。

北野 はい。AbemaTVには番組ごとに述べ総視聴数が表示されていますが、ボクらは「いま何人見ているのか」「滞在時間はどれくらいか」など、細かいことまでわかるんです。
で、格闘技中継はほかのコンテンツと比べても数字はよかった。なのでUFCやベラトールの中継をしたことで、格闘技ファンから「AbemaTVありがとう!!」という声が挙がっていますが、ボクらからすれば「格闘技ファンありがとう!」と言いたいくらいなんですよね。格闘技ファンの力で大きくなったんですよ、と。

そんなこんなで2016年、ビデオリサーチ社が”やっと”録画率の調査と公表に乗り出した。

http://www.sankei.com/entertainments/news/161012/ent1610120007-n1.html
NHKは12日、従来の世帯視聴率に録画視聴分を合わせた「総合視聴率」を初めて公表した。総合視聴率はビデオリサーチ社の新指標で、3日に放送した連続テレビ小説「べっぴんさん」の初回は27.0%(関東地区)だった。

 NHKによると、初回の放送をリアルタイムで見た従来の世帯視聴率は21.6%で、録画して放送から7日以内に再生したタイムシフト視聴率が7.1%だった。総合視聴率は、リアルタイムとタイムシフトの重複視聴分を差し引いて集計している。

しかし、この録画率もランダムサンプリングによる調査だとか…


録画率に関しての悲観、ネガティブな記事を紹介しよう。

http://news.livedoor.com/article/detail/12126358/
世代によるテレビ視聴形態のギャップや、デバイスの多様性に視聴率測定法がなかなか対応しないのはなぜか。

「スポンサー側からは早く対応してほしいという要望が強い。でも、実施する側はネット関連の最新技術導入に対して腰が重い。独占的に実施してきた測定に、新興企業や外資の協力を仰がねばならないのが生理的に嫌なのでしょう。あまりに残酷な数字が出る可能性があるので、それを怖がっている節もある。とはいえ、現実はどんどん進む。視聴率測定が大胆に変わらない限り、視聴率そのものの価値が下落してゆくだけでしょうね」(構成作家・40代男性)

 視聴率はさほどでもないのに、TwitterなどSNSでつぶやかれる回数が多い番組、というのも最近では増えてきた。テレビ番組の波及効果を計る物差しとして尊重されてきた視聴率は、いま大きな変換の時代…

https://geinou-news.jp/articles/bIeTb
……録画率が高くて喜べるのは多くの人に所属タレントをみてもらうことができる芸能プロダクションと原作がベースとなっているドラマならばその原作者くらいであろう。

というのもテレビ番組の制作費の多くはスポンサーから来ているわけで自社製品の宣伝をするために多額のお金を出して番組中のCMの放映権を買い取る仕組みです。広告代理店はその指標として視聴率を見て多くの人に見てもらえる人気番組にはたくさんのお金を払ってでもCMを流したい思いがあるのです。

しかし録画率になってしまったら早送り、巻き戻しが容易にできる環境で直接番組に関わってこないCMは多くの人が飛ばしてしまうと思います。そうなってしまうといくら録画率が高くても代理店からしたらCMを見てもらえるかがわかりずらい録画率は判断の対象にはなりずらい…

http://www.audience-rating.com/01kiso/g-rokuga.html

……そもそも、なぜ視聴率を調査するのでしょうか。我々に人気のある番組をサービスで教えてくれるためですか? 違いますよね。それはあくまでも視聴率調査による副産物であって、重要なのは視聴率におけるテレビ局とスポンサーの関係ですよね。つまり、「視聴率=スポンサー会社のCMの視聴率のバロメーター」なのです。ビデオには早送り機能がついています。ほとんどの人がそうだと思いますが、ビデオで撮った番組のCMはすっ飛ばしますよね。リアルタイムの放送であってもCMの時間帯は視聴率が下がるのですから、ビデオに録画された番組のCMの視聴率はほぼ0だと言ってもいいでしょう…

ということで、誰もが知ってるけど
やっぱり言えなかった
「録画した番組は、みんなCMを飛ばして視聴している」
という身も蓋もない話が、また大きな声で言われるようになったねえ。
でもこれも、ちゃんとした調査とかあるのかね。
もう上の記事では、それを前提としているのだが。

しかし「本は古本や図書館で読むのではなく、作者を応援するために新刊で見よう」とか「ファンは会場に行ってお金を落とそう」という議論があるなら、「ファンは録画した番組も、CMを飛ばさずに見よう!」という呼びかけもあるのかな?ないか。少なくとも見たことはない。


しかし!!
そもそも!!
我々はスポンサーではないので、視聴者にCMを見る機会をどれだけ与えたか?は、はっきりいってどうでもいい話である。
我々が知りたいのは各種コンテンツの「人気」「反響」「影響力」なので、視聴率より録画率…それもビデオリサーチの調査結果も、「トルネ」の結果も「Gガイドテレビ王国」の結果もフラットだ。

それを本当に公平に厳正に調査すれば、ひょっとしたら「トルネ」「Gガイド」のほうが上なのではないかね?
そんな場合は、あとはこれらの数字の「権威」「ニュース価値」だよな。

「新作ドラマ〇〇が大人気!!!『トルネ』で脅威の録画数XXXXXX件!!」
「『Gガイド』予約数、歴代一位をついに奪取!!快進撃アニメ△△の秘密」
みたいな感じで、非ビデオリサーチの、集計方式の数字結果を「世間」がどれだけ扱ってくれるか…冒頭に紹介した記事の様に、毎日新聞系の「まんたんウェブ」が「トルネ」の世約数をニュース価値のあるものとして報道してたわけだが、こういうことが以後、広がっていくのだろうか。


そういえば、アニメやドラマの「人気」判断…一番ダイレクトにいえば、「続編が作られるかどうか」の判断基準が、知らないうちに「テレビ視聴率(あるいは番組関連おもちゃの売り上げ)」→「DVDの売れた数、予約枚数」→「配信収益」に代わっていったのでしたよね。
そういう点では、案外視聴率というものも脆いものではありませんかネ?

「アニメの『DVD売上が評価の中心』という時代は終わる」「有料配信の収益が指針になる」という話 - Togetterまとめ http://togetter.com/li/954640
 
アニメの配信市場がパッケージ市場を上回るかも!もう円盤の時代は終わりか http://yaraon-blog.com/archives/75029

自分がこういう視聴率話に以前から興味があるのは、やはり「視聴率」は統計・サンプリングの一種であり、日本全国で見られている番組の「人気」というあいまいなものを、なんとか形にしようという「科学」の試みであるからだ。

だから、逆に「アプリ経由の録画数集計」が、同じように人気という不定形のものを形にする力があるなら、もっと表舞台に出てもらわないと気が済まない。
それゆえに、こういうふうに気になるのであります。
(了)