【河野談話検証】政府検証全文(1) - MSN産経ニュース http://sankei.jp.msn.com/politics/news/140621/plc14062100260005-n1.htm
河野談話検証結果の政府報告書のまとめ - Togetterまとめ http://togetter.com/li/682602 @togetter_jpさんから
この検証結果と、またその前に産経が中心になって報道していた各種の事実を読んでいつも思い出したのが「柳川一件」だった。
■江戸幕府を震撼させた国書偽造スキャンダル「柳川一件」の顛末 http://kousyou.cc/archives/4445
(※先方がサーバー移転し、過去記事とリンク先が代わっています)…李朝は慶長十一年(一六〇六)、講和条件を対馬側に提示する。それは以下の二点である。
(1)朝鮮国王の墓を荒らした犯人(犯陵賊)の引き渡し(2)家康から朝鮮国王に宛てた国書の送付
(略)…対馬藩は国書偽造に手を染める。まず対馬島内の罪人二名孫作(三七歳)、叉八(二七歳)を犯人にでっち上げて送致、あわせて家康の偽の国書を作成して送付した。偽書は日本国王家康の名義で日本国王印が押されていた……予想外の進展に李朝は驚き国書の真偽なども話題に上ったが、最終的に主張が通ったことから講和を進めようという機運…(略)…対馬藩は再び国書偽造を行う。なにせ朝鮮側からの国書は「日本国王家康からの国書の返事」という体裁だったから、それを初の国書という内容にすり替えなければならない。改竄した朝鮮側国書をすり替えるタイミングがなかなか訪れず、すり替えが成功したのは秀忠謁見の日、江戸城登城の途中であった
何度読んでもドラマチックな。なぜ大河ドラマにならないっ。
自分のいうところの「取りつくろいもの」のドタバタとしても、史実だけでそのまんま三谷幸喜ドラマのようなおもしろさ。
国と国の関係というのは伝統に呪縛されるものだろうか。それを数百年のときを超えてだ再現した、と考えればほっこりと……してる場合じゃ、ござんせんな。
「公開と透明性」(選択的な)の持つパワー。それは鋭い「凶器」にもなる
今回、産経新聞がまず先導するように、河野談話作成過程での、さまざまなバックステージを報道してきた。
そして今回、公の形でそれが検証され、公開されるようになった。
それが政権や一部の派の意図、意向が反映されたものであろうことは想像に難くない。
だが、そこで今まで隠されたことが、白日のもとにさらされるのも悪いことではまったくない。沖縄密約だってウォーターゲートやペンタゴンペーパーだって、権力内部の思惑、内部闘争の亀裂がリークとなり、それが報道となった。
「すでに談話作成時の、日韓の水面下調整は報道されていた。目新しくない」と専門家は一部語っていたが、実際に検証結果が出たところ、相当に新事実が明らかになった。
また、そもそも自分は事前調整とかは「やっていい」と思っているのだが、それなら堂々と当時から認めて、隠すべきではなかった。
産経新聞の報道で一番驚いたのは、阿比留記者が書いたこの部分である
http://sankei.jp.msn.com/politics/news/140206/plc14020613020009-n1.htm
A4版22枚、計36問にのぼる想定問答は、記者会見で出るであろう質問を予想し、それへの模範解答を記している。当時の河野洋平官房長官への事務方からの説明にも使用された。ところが、内容はというと事実認定の部分は非常に曖昧で、明らかな嘘まで混じっていたのである。
例えば「韓国に対しては、発表案文について事前に協議しなかったのか」という問いには、こんな模範解答が示されている。
「事前協議は行っておらず、今回の調査結果はその直前に伝達した」
だが実際は、河野談話も調査結果報告も原案段階から韓国側に示し、その修正要求を大幅に受け入れたのみならず、韓国側が提示した文節そのものを採用した部分もあることが、産経新聞の取材で判明している。(今年元日付と1月8日付朝刊紙面で既報)
これでは河野談話は、初めから国民の目を欺いて成り立ち、発表された
たとえば河野氏が当時現職で、そしてこの事実がもれたら、その時点で辞職もののスキャンダルである。うそをついているのだから。
「両国間で水面下の調整をするのは、円滑な外交のための許容範囲の行動だ」
というのはそれ自体は正論だと思うのだが、自らの隠蔽姿勢で、それが公開されたときに一種のスキャンダルになるようなものにしてしまったのは時の政権のせい、だともいえる。
その結果、逆に産経の報道も、今回の検証チームの調査も「政府が隠していた情報を明らかにする」という点では正統性が生まれてしまった、といえる。これは各種の、他の密約・隠蔽を暴く調査報道や政府の透明性、の文脈になってしまったのだよ。
それが政権や時の権力の意図であってもさ。
もともと政府の透明性や公平性を二大政党や政権交代が担保するのは、正義と悪ではない。対立するふたつの悪が、自分のエゴを原動力にして、相手の悪を攻撃してさらしあうことを想定したものだったではないか。
沖縄密約を民主党政権下の調査で確定させることが出来たとき、それを褒め称えた小生の目から見ても、両者が基本的には同じカテゴリーにあると思うのである。
「すべては歴史の前にひれふす」。・・・外務省密約公開は現政権の”適時打”だ。http://d.hatena.ne.jp/gryphon/20100312/p3
そう、今回の検証で発表されたような事実が、事実として公になったことは、これがずっと闇のままであるより良かった?とは到底、思えない。
毎回で恐縮だが、やはりこれを再引用する。
http://www.aozora.gr.jp/cards/000119/files/622_14497.html
書洩らしは? と歴史家が聞く。
書洩らし? 冗談ではない、書かれなかった事は、無かった事じゃ。芽の出ぬ種子は、結局初めから無かったのじゃわい。歴史とはな、この粘土板のことじゃ。
若い歴史家は情なさそうな顔をして、指し示された瓦を見た。
文字の精霊共の恐しい力を、イシュディ・ナブよ、君はまだ知らぬとみえるな。文字の精共が、一度ある事柄を捉えて、これを己の姿で現すとなると、その事柄はもはや、不滅の生命を得るのじゃ。反対に、文字の精の力ある手に触れなかったものは、いかなるものも、その存在を失わねばならぬ。
文字の精霊が、歴史の闇をとらえた。
「吉田調書」も、それであっただだろう。まだスクープのみであり、正式に公開されていないのが大問題だが、あれが報道されたのと同様に「河野談話検証」がなされたことも良かった。
プロの「外交屋」たちが連携して「自国の愚かなシロート」と対峙する…そんな”古典外交”の名残を感じたりも
http://d.hatena.ne.jp/gryphon/20091208/p5
今週の本棚:山崎正和・評 『メッテルニヒ』=塚本哲也・著
メッテルニヒは(略)……ナポレオン敗北後のウイーン会議を主宰し、一九世紀前半の欧州の平和を実現した大外交官だった。保守的な現実主義を貫き、勢力均衡による平和を説いて成功した指導者として、キッシンジャーのような二〇世紀の政治家にも大きい影響を残した・・・・高坂正堯が呼んだように「古典外交の成熟と崩壊」の瞬間でもあった。
(略)
政治的には彼の嫌う民族主義と社会主義が勃興し、英国風の穏健な改革を願う彼を追いつめた。宮廷では逆に蒙昧な因循姑息が横行し、彼の現実主義的な外交政策を妨げた。
白手袋をはめ、美酒と美食とダンスを楽しみながら、「外交は外交官同士」という鼻持ちならないエリート感覚を共有する。その共有した感覚をチャンネルにして、お互いに自国政府の原理主義者、強硬派をどう丸め込み、ごまかすかということに知恵を絞り、力を貸しあう。
スパイや軍人や警察も含め、こういう連中の「国際連帯」はかつて大きく歴史を動かし、今もその連帯は確実に存在している。
これを妨害するのが「愛国者」にくわえ、「民主主義」と「説明責任」なのである。
実際に今回、まさに建前上は民主主義の説明責任において、かつてはうまく丸め込んだ外交の「なあなあ」な部分が暴かれて、さらに混乱しそうだという(笑)。
まあ、『その「なあなあ」がほころびて機能してないから、暴いて一掃するんだよ』と言われたらそれにも一定の理があるとは思うが。
だとしたら、今回の問題は、「民主主義政府とその外交」が常に持つ永遠の課題…「外交官は、どこまで秘密の交渉や密約をしていいのか?」「そういう情報を、政府はどこまで秘密にしていいのか?」という問いを我々に突きつけている、そんな気がするのであります。