http://mainichi.jp/enta/art/news/20091117ddm010040131000c.html
「竹島密約」を田中明彦氏が評した文章が興味深いので引用する。
◆「竹島密約」=ロー・ダニエル氏
◇日韓交渉現場、生き生きと描く日韓関係を正常化した1965年の日韓基本条約には、竹島も独島も出てこない。竹島についての日本の領有権主張に対する、韓国内での近年の反発の強さを見るとき、よくこの問題に触れないですんだと思われるかもしれない。
しかし、現実の交渉過程では、日本側が領土問題についての言及を求め、韓国側がこれに反対した。よくよく考えてみれば、これは当たり前である。竹島・独島は韓国が実効支配しているわけで、言及しないことによって韓国に不利になることはない。言及していないのは領土問題が存在しないからと言えるからである。
今となってよくわからないのは、なぜ日本が竹島に触れない日韓基本条約を受け入れたかである。もちろん、基本条約の付属文書である日韓紛争解決交換公文に触れられている「紛争」に領土問題が当然含まれているということはできる。しかし、明示的にできれば、日本の立場が強くなったことは明らかだから、依然として謎が残る。
この問題について本書の与えた解答が「密約」である。条約締結時の佐藤内閣の国務大臣であった河野一郎と韓国の丁一権(チョンイルクォン)国務総理との間で、竹島・独島問題は「解決せざるをもって、解決したとみなす」、「両国とも自国の領土であると主張することを認め、同時にそれに反論することに異論はない」などという合意があったのだという。
たしかに盧泰愚(ノテウ)政権までの日韓関係は、この密約のとおりに推移してきた。金泳三(キムヨンサム)政権になってこの問題が再浮上したのは、著者によれば、この密約の原文が焼却され、韓国における民主化などによって、この密約を可能にした時代の「精神」が喪失されたからだという。原文はすでに焼却されてしまったため、著者の説は、あくまでも有力な仮説にとどまる。しかし仮説の当否にもまして本書の価値を高めているのは、日韓交渉をめぐる政治的雰囲気を的確に描写していることである。最近機密解除された韓国側の交渉記録と日韓双方の当事者の回顧録やインタビューなどの資料を的確に引用しつつ、今となっては、なかなかわかりにくい日韓関係の「浪花節」的雰囲気を本書はわかりやすく活写している。【評・田中明彦】
こちらのほうの”密約”の存否も、政権交代で出てくれば面白いのだが、イッシューになるかならないかだな。
岡田外相の定例会見はフリーもミニコミも入れるのだから、だれか聞いてみない?
わたしが面白いと感じたのは、ちょっと外交史を読んでいると、要は「外交とは職人芸であり、選ばれた専門家ギルドが、あちらの専門家ギルドとやってこそ良い結果が出る」という専門家主義(それが貴族的な、贅沢な外交文化をつくった一員である)と、とくに民主主義における民意の圧力、それもナショナリズムを伴った・・・ものとの対立があるということ。
案外、外交の場では交渉そっちのけで「うちのえらい政治家(or民衆)は、ナショナリズムに振り回されて何もわかっとらんのです」とお互いに愚痴を言い合っているかもしれない(笑)。
竹島問題を「解決せざるをもって解決となす」という密約があったとしたら、それは売国的な妥協か、賢明なる相互抑制の賜物か。そして目的が仮に正当だたっとして、それを”密約”として処理していいのか悪いのか?
核密約問題と絡めると、興味が2倍にも3倍にも増す。