INVISIBLE D. ーQUIET & COLORFUL PLACE-

John 8:32 Then you will know the truth, and the truth will set you free."  複数ブログの過去記事を移管し、管理の委託を受けています 

「カソリックの祭(パレード)」に「同性愛権利擁護」の集団は旗を掲げられるか?

この前「聖パトリック祭」は日本でも行われた。
それにまつわるアメリカでのお話。

http://www.cnn.co.jp/business/35045306.html
ニューヨーク(CNNMoney) 米ニューヨークのセント・パトリックス・デー聖パトリックの祝日)のパレードを巡り、アイルランドのビール大手ギネスが16日、スポンサーから降りると発表した。パレードから同性愛者が排除されていることへの抗議としている。
17日はアイルランドカトリックを広めた聖パトリックの命日とされ、同国最大の祝日となっている。ニューヨークではこの日に合わせて毎年、盛大なパレードが開催される。
パレードでは、参加者がプラカードやTシャツで同性愛などの性的指向を示すことが禁止されている。これに対して同性愛者の擁護団体GLAADなどが強く抗議してきた。
今年のパレードを前に、オランダのビール大手ハイネケンがスポンサーからの撤退を発表。同性愛者が集まる同市内のバー「ストーンウォール・イン」は、ギネスも撤退しなければ同社のビールの販売を中止すると警告した。GLAADも17日に同社への抗議イベントを予定していた。

これに対して、こんな記事がある。

http://biglizards.net/strawberryblog/archives/2014/03/post_1594.html

…あ〜あ、またかよ、てな感じである。

左翼メディアの偏向報道だけ読んでいると、このパレードには同性愛者が参加できないかのような印象を受けるが実はそうではない。主催者側はオープンにゲイプライドの旗を掲げての参加は許可しないと言っているだけだ。許可されていないのはゲイプライドだけでなく、例えば銃所持法支持とか、人口妊娠中絶反対、とかいった政治的なスローガンも同じ。どこどこの町の青年団とかなら許可されるが、政治色のあるものは一切禁止されているのである。何もゲイだけが特別の拒否されたわけではないのだ。単に同性愛者たちが元軍人のグループに参加する分には問題ない。
(略)
彼らがモスラムのラマダン祭りにゲイプライドの参加を求めるとかするんだったら多少の尊敬はするけどね

http://biglizards.net/strawberryblog/archives/2014/03/post_1597.html
……行進前夜にボストンのサムアダムス、ニューヨークのギネスビールがスポンサーを辞退したことに対して、地元市民の間でこれらのビールをボイコットしようという動きが出ている。

ボイコットを呼びかけているのは(カトリック宗教と人権のリーグ)The Catholic League for Religious and Civil Rightsのビル・ドナヒュー氏。
http://cnsnews.com/news/article/barbara-hollingsworth/catholic-league-calls-boycott-guinness-sam-adams
ドナヒュー氏が呼びかけるまでもなく、地元では迅速で激しいバックラッシュがすでに起きているという。

前回この話を取り上げた際、ボストンの大手パブ、コーナーストーンパブがサムアダムスを売らないと宣言した話はしたが、サムアダムスのボイコットを決めたのはこの店だけではないようだ。

もともと聖パトリック祭典はカトリックの行事。カトリック教が同性愛を認めないのは周知の事実。そういう宗教的な祭典で主催者が同性愛を表看板にする団体の参加を許可しないのは当たり前。だが、主催者側は最初からゲイのみならず人工堕胎反対とか同性結婚反対とかいった政治的な旗を掲げることは、それが例えカトリックの教えに従うものでも許可していない。だからゲイ団体だけが差別されたわけではないのである。

それを承知でわざわざゲイプライドの旗のもとに行進に参加したいと言い張るのは伝統ある祭典への冒涜だとドナヒュー氏は語る。氏によるとカトリックリーグのボイコットにはカトリック信者でない人たちからの支持が多く集まっているという。


さらに、こんなブログもあった。

http://shimamyuko.wordpress.com/2014/03/17/
毎年パレードが開催される聖パトリック日はアイルランド人のプライドが強調される日である。
しかし、幾つかの地域で同性愛者のパレード参加を公然と禁止している為、論争的な問題が潜んでいる。ワシントン.ポストによると、ボストンやニューヨークではパレードの主催者が公然と同性愛者を禁止したという。ウォルシュ氏は、ボストン市で20年以来最初のアイルランドアメリカ人の市長であるが、昨日開催されたパレードへの参加を拒否した。彼はパレードの前夜、ボストンの戦没者同盟評議会と交渉を行ったが、マサチューセッツ州のゲイ権利保護団体との合意に達することができなかった。この保護団体は、アイルランドアメリカ人である同性愛者もパレードに参加することを希望していた。パレードを主催する民間団体は、公然と同性愛者を禁止することはできないが、同性愛者の権利を表明する旗を掲げて行進するグループの参加を禁止する権利はあるという。

「参加を妨げる権利は無い」が「旗を掲げることを禁止することはできる」という色分けがきちんと法的根拠がある?ことが興味深い。
上ブログでは、米高級2紙の記事も紹介されている。
http://www.washingtonpost.com/news/morning-mix/wp/2014/03/17/no-brewers-and-no-mayor-in-new-yorks-st-patricks-day-parade/
http://www.nytimes.com/2014/03/17/nyregion/amid-mayoral-missteps-irish-eyes-are-rolling-in-new-york-city.html?hpw&rref=nyregion&_r=1


さて。
困ったもんですね。
以前、こんな記事を書いたなりよ。

米国の超人気TV、出演者の同性愛問題発言で騒動/「AKBはイスラム的に猥褻。ASEAN首脳に見せるな」騒動 -
http://d.hatena.ne.jp/gryphon/20131222/p4

この記事の騒動では、要は人気テレビ番組の出演者が「同性婚反対」と語ったら、番組を降ろされたと。しかしその後視聴者の抗議、要請で復活したと。
この記事のブクマで、
こう書いたっけ。段落を分けてかこう。はっきりいやあ、今回の聖パトリックパレードもカテゴリー的にはまんまそのたぐいだすな。

「同性愛が差別されてはいけませんね」
「当然だ」
「宗教で差別されてもいけませんね」
「勿論だ」
「同性愛は宗教的な罪だ、との信念を、信者が公言しました」
「・・・どうしよう?」

このブクマでは「どうしよう?」と書いたが「どうしようもない」がたぶん結論だ(笑)。

実際、アメリカでカソリックはなんだかんだといいつつも少数派に属する。「大統領がカソリックでいいのか?」も議論の対象になるぐらいで。

ケネディ時代「カソリック信徒は教皇への服従義務があるから大統領にするのは危険」という議論があった
http://d.hatena.ne.jp/gryphon/20130812/p2

さらにいえば、アイルランド系に対して「酒飲み、怠け者、単純バカ」的ステロタイプはたしかに存在している。自分もそのたぐいのジョークをいろいろと知っているし、広めたことだってないとはいえない。
上の「アメリカ・ウォッチ」ブログを再度見てみよう。

……ニューヨーク.タイムス(NYT)によると、「 政治生活の中で特大化した役目に長く慣れているニューヨークのアイルランド人は、寒さの中に置き去りにされたように感じている」ため、市長は攻撃されやすいとアイルランドの関係者や市民団体の指導者は述べているという。ブラジオ氏が動物虐待を理由に、セントラルパークから馬車を禁止することを公約したとき、多くのアイルランドアメリカ人は驚き、その業界の雇用主にはアイルランド移民が多いため、彼らのプライドを脅かすとして反発し、俳優のリーアム.ニーソンさえ抗議したという。

新人市長は、アイルランドアメリカ人との緊張に直面しているようであるが、アイルランド地域社会との亀裂を経験しているのはブラジオ氏だけではない。前任のマイケル.ブルンバーグ氏は、アイルランド人を「窓にぶら下がって完全に酔っている人達」と冗談を言ったため、マンハッタンでパレードが開催された時、罵声を浴びたという。
論争的な聖パトリック日のパレードは、一部のグループに対する差別が依然として残っていることを示唆している。1810年代及び1920年代、50 万以上のアイルランド移民が米国に入国した。鉄道建設時代は中国人と同様の搾取と虐待を受け、家政婦の労働市場では黒人との競争が熾烈であった。又、歴史的に「怠け者である」とのレッテルを張られ、皮肉にも、ヨーロッパ移民の中では最も激しい人種差別を受け続けたグループである。ブルンバーグ氏の何気ない冗談さえ、その歴史を示唆している。近年アイルランド人は世界で最も親切であるが、最も怠け者であると言われている。


さらにいえば「それ、イスラム教の祭りでもやれんの?」問題もたしかにある。
或いは「同性愛の権利を訴えること自体は正当だが、『カソリックのお祭り』でそれをやるのは挑発だ」という議論もあろう。
ほい、前例をちゃんと保存している当ブログ。2010年。

■「アラブ系が多い街に行って豚肉とワインで宴会しようぜ!」運動が国家権力の弾圧で中止(フランス)
http://d.hatena.ne.jp/gryphon/20100617#p3

同性婚推進PR」の禁止ではなく「政治的PR」全体を禁止したのだ(かどうか)という問題もある。

もうひとついえば、パレードということは公権力、行政が何かしら関わって道路の占有を許可したり何なりということもあるのだろう。政教分離の概念からいけば、この「聖パトリック記念日パレード」は、行政が許可した段階で丸ごと宗教的意味を持つことは許されず、何が以下の公的、中立的、世俗的価値観の下で行われるものであり、それならその宗教の教義に反する主張の団体は参加し、PRできるべきだ…という議論かもしれない。


論点は多肢にわたりますなあ。
多すぎるんで箇条書きにするか

・Aという政治的主張を、反Aを教義とする宗教の式典で行うことの是非
・その宗教行事が、パレードやお祭りなど公の行政が関わったであろう中で行われるとき、その宗教の教義が反映される範囲
・その宗教がマイノリティだった場合。その教義が、別のマイノリティを排除する(と受け取られる)場合。
・そもそも主催者は、団体の参加や「旗を掲げる」などの権利を制限できる権利があるか
・「政治的主張」一般を排除するという形式の是非。
・その主催者判断を批判してスポンサーが降りること、そのスポンサーを批判して不買運動が発生することの是非。

…ん? この話って延長していくと、「サッカーの応援規制」、さとえばそこから派生した「旭日旗の是非」の話や、アートの中に「現政権の右傾化を阻止」と書かれていて撤去された、という話、「はだしのゲン差別用語が入っている」、云々なんかとつながったりしてるんじゃないでしょうかね。

「政治的」作品撤去を 都美術館「クレーム心配」
2014年2月19日 07時08分
http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2014021990070849.html
 東京都美術館(東京都台東区上野公園)で展示中の造形作品が政治的だとして、美術館側が作家に作品の撤去や手直しを求めていたことが分かった。作家は手直しに応じざるを得ず「表現の自由を侵す行為で、民主主義の危機だ」と強く反発している。 (大平樹)
 撤去を求められたのは、神奈川県海老名市の造形作家中垣克久さん(70)の作品「時代(とき)の肖像−絶滅危惧種」。竹を直径一・八メートル、高さ一・五メートルのドーム状に組み上げ、星条旗や日の丸をあしらった。特定秘密保護法の新聞の切り抜きや、憲法九条を守り、靖国神社参拝の愚を認め、現政権の右傾化を阻止」などと書いた紙を貼り付けた。代表を務める「現代日本彫刻作家連盟」の定期展として十五日、都美術館地下のギャラリーに展示した。
 美術館の小室明子副館長が作品撤去を求めたのは翌十六日朝。都の運営要綱は「特定の政党・宗教を支持、または反対する場合は使用させないことができる」と定めており靖国参拝への批判などが該当すると判断したという。