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John 8:32 Then you will know the truth, and the truth will set you free."  複数ブログの過去記事を移管し、管理の委託を受けています/※場合により、語る対象の「ネタバレ」も在ります。ご了承ください 

橋下徹の「難波出直し選挙」、以前流行した「直近の民意」論から考えるとOKか?政治、議会的な「べき論」について

橋下徹の出直し市長選
ハフィントンポストから。発言はニコ生の文字起こしらしい

http://www.huffingtonpost.jp/2014/02/03/hasimoto-denaosi_n_4715191.html

橋下氏:維新以外はみんな、設計図づくりで一案に絞ることに反対したんですから。僕は一案に絞るために選挙で問うのでね。反対するんだったら、対立候補を立てないとおかしいんじゃないですか。対立候補を立てないんだったら、僕は一案に絞らせて欲しいといったのに、なんで法定協議会で反対するんですか。それこそ税金の無駄遣いじゃないですか。

選挙を避けて、誰も見ていないような法定協議会の場で反対の採決をして、お金がかかって表舞台に立つ選挙の場に来たら反対しないのは、おかしいんじゃないですか。法定協議会で反対したんであれば、しっかり選挙で反対して欲しいですね。

僕が選挙で再任されたなら、法定協議会の意志に反して、夏までに一案に絞り込みます。これはコメンテーターや学者は「議会の構成が変わらないから意味ない」と言ってますが、議案じゃありませんから、議決はいらないんです。ただ、政治的に法定協議会で反対の意志が表示されたら、それを無視して進めようと思えば、民意を得るしかないじゃないですか。


これへの反対論で、自分の目に付いたものとして映画監督・想田和弘氏のツイートを引用する。

https://twitter.com/KazuhiroSoda


想田和弘 ‏@KazuhiroSoda 2月3日
橋下徹市長の出直し選挙には、民主主義の仕組みに照らして大義がない。無理筋。昨日は思わず「対抗馬を探せ」的なツイートをしたが、この単なる逆ギレ駄々っ子作戦に付き合ってはならない気がしてきた。つまり対抗馬を立てずに一人相撲をさせることこそ、最も筋の通った「大義ある」対応なのでは。

想田和弘 ‏@KazuhiroSoda 2月3日
大阪市長が直接選挙で選ばれているように、大阪市議会も直接選挙で選ばれている。両者は別々。これを二元代表制という。たとえ橋下市長が出直し選で勝利したとしても、大阪市議会は都構想を進める義理も道理もない。当たり前だ。逆に進めてしまったら二元代表制ではなくなってしまう。

想田和弘 ‏@KazuhiroSoda 2月3日
出直し選でたとえ橋下氏が勝利したとしても、議会構成は変わらないわけだから、橋下市長の出直し選挙には、そもそもやる意味が無い。「無い」のにあたかも「ある」かのように、橋下氏はふるまって主権者やマスコミや他党を騙そうとしている。その詐術に引っかかってはならない。

想田和弘 ‏@KazuhiroSoda 2月3日
もっと言うと、出直し市長選によって市長に対する「民意」は問えても、議会に対する「民意」を問うことはできない。なぜなら、議会は別の選挙で「民意」を託されているから。橋下氏が出直し選挙に出るっていうことは、要するに隣町の選挙に出て「わが町の民意を問う」とわめいているようなもの。

想田和弘 ‏@KazuhiroSoda 2月3日
ちなみに、橋下が無投票で再選されても任期は残りの2年弱で変わらず。つまり維新以外の会派が対抗馬を立てずに不戦敗をしても現状維持されるだけで、実は痛くも痒くもない。逆に橋下市長は大義の無い選挙で税金を浪費したという非難を受けるだろう。

さて、市長選と議会の選挙は別物であり、どちらもここに民意を代表している。
これはよくあること。知事選と市長選、衆院参院アメリカの大統領選と中間選挙、それらも同様だす。

そこで、数年前には流行って、今はだれも使わなくなった言葉を記憶の押入れからひっぱりだしてもらおう。
すなわち「直近の民意」だ

なつかしいだろ?
これが流行ったとき、一緒に流行ってたのが「そんなの関係ねぇ!」「はい、おっぱっぴー」だからな、なにしろ(笑)。

これが流行らなくなったのも理由があって、もともと「直近の民意」という考え方自体が、複数の……ある意味反対の民意が示された制度の対立、考え方の違いを解消するためのものだからだ。そういう対立があるからこそ「その場合は、選挙が近かったほうに、それより前の選挙でえらばれた存在は従うべきだ」という考え方が出てくる
だから衆参とも同一の政治勢力が握った現在の政治状況で、国政では「直近の民意」という言葉はそもそも不要になり、お蔵入りする。

そしてそもそも「直近の民意に政治は従うべきだ」は法律の定めがある話でもなんでもなく、一種の精神的な「べき論」であり、従う従わないは自由な話ではある。


だが、「直近の民意」論になにがしかの理があるなら、「市長選をここでもう1回やって、その結果を元に『これは直近の民意だ』として法定協議会や、市議会に方針変更を求める」という議論、それは成立する…かな?
議会や選挙、政治の「べき論」は結局のところ、一定以上のパワーは無い。
直近の民意論を適用すれば、名護市の市長選結果は埋め立て許可を出した仲井真知事の判断より重い、とやることもできる。逆に実は、想田氏の言葉をちょっと変えれば、「たとえ稲嶺市長が再選されたとしても、仲井真知事は埋め立て許可を進める義理も道理もない。当たり前だ。」という理屈もできる。
実際の琉球新報を引用しよう

http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-217215-storytopic-3.html
名護市長選は、「県内移設」の可否に対する直近の民意を示す、文字通りの天王山となろう。

ま、そんなこんなで「直近の民意」という言葉をリバイバルで思い出しました。

過去の「直近の民意」関連記事

議院内閣制と首相交代とねじれ現象(毎日新聞「発信箱」から) - 見えない道場本舗 (id:gryphon / @gryphonjapan) http://d.hatena.ne.jp/gryphon/20081204/p5
  
アメリカ上院の特別選挙で、野党の共和党候補勝利・・・こういう時、大統領(与党)は政策を修正すべきか? - 見えない道場本舗 (id:gryphon / @gryphonjapan) http://d.hatena.ne.jp/gryphon/20100120/p4
  
参院選と首相の進退」で朝日新聞社説は07年と矛盾?一応本人らの説明は… - 見えない道場本舗 (id:gryphon / @gryphonjapan) http://d.hatena.ne.jp/gryphon/20100713/p3
 
衆院補選で自民・町村勝利。「直近の民意」とは?共産ファクターとは? - 見えない道場本舗 (id:gryphon / @gryphonjapan) http://d.hatena.ne.jp/gryphon/20101025/p4

過去の新聞社説

昨夏までのねじれ国会で民主党など野党は「『直近の民意』は参院にある」と主張し、自公政権を徹底的に追いつめようとした。当時、民主党の対応を政局優先と厳しく批判した自民党が今度は逆の立場に立つ。
 反対ありきではなく、適切なチェック機能を果たす「責任野党」の見本を示してほしい。

「べき論」思考実験

こういう政治の「べき論」(議会や政治の「法律で定めてはいないが、〜する(しない)のが筋だ」という話)に元来正解は無い。
拘束力がないぶん、誰でも勝手に提唱できる。
 
そこで、ちょっと今回の件に関係して思いついたことを書いておく。
「市長を任期途中で辞職」+「次の選挙に出馬」に関連し、特に前段を「選挙で選ばれた人が途中で投げ出すのは無責任。税金の無駄遣いだし」という批判があった。
これは石原慎太郎竹中平蔵大橋巨泉各氏の知事や議員辞職でもそういう批判が出ている。

、あえて冗談半分で仮説を言うか。

「市長や知事、議員の任期半ばの辞職は、投票した有権者に対し無責任。」
 
「同様に、正式告示後の選挙候補者が『一本化』等の名目で退く(※法律上は辞退したくてもできないので、辞退の「表明」)のも有権者に無責任。期日前投票をした人だっているのに」

どや?「べき論」としてな。