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John 8:32 Then you will know the truth, and the truth will set you free."  複数ブログの過去記事を移管し、管理の委託を受けています/※場合により、語る対象の「ネタバレ」も在ります。ご了承ください 

歴史のIF「もし日米開戦の前に、満州の石油が発見されていたら?」(浅羽通明)

これも上の記事をついで、「歴史のIF」をテーマに。
この後の話はこの前
http://d.hatena.ne.jp/gryphon/20130902/p4
で紹介した、浅羽通明講演会、その後の懇親会でのやり取り。
そういえば、この講演の動画とテキストがこの前ネットで公開されて、ちょっと話題になっているよね。


浅羽通明講義 軍事思想史から観た「風立ちぬ」(宮崎駿監督)の近代
(雑談ありバージョン) - 受けたい講義を無料で見られる スクールマーケット
http://school-market.net/lecture/1379914461/

ちょっと皮肉を言ってみます。
「たまたま激動の昭和に生まれ合わせた、飛行機を何より愛する一人の日本人を描こうとしたんだ。そのころの日本人、戦時中の日本人というのは、それぞれの持ち場で精いっぱい戦ったんだ。結果として日本が負けてしまったし、その戦争は正しいものじゃなかったかもしれないけど、その場で、全力で生きた。全力で自分のできることをしようとした。その素晴らしさっていうのは、その尊さみたいなものは評価できる」っていうことを、産経抄で、……ちょっと突っ込み入れたくなりました。……(略)戦後の、日本人だってそれぞれの持ち場で、精いっぱい自分の信じることで戦ったわけですよね。で、結果としてそれがうまくいかなかった人とか、今からみるとその方向は間違ってたっていう人も、戦後だっているわけですよ。例えば共産主義の実現のために戦った人、共産党の人とか、新左翼の人とか、連合赤軍の人とか、すごいまじめで必死に戦いましたよね……(略)だったらね、例えば、戦後の左翼をたたえるような、アニメとか映画ができたとする。その際に、仮に産経新聞が、冷戦が終わった今、明らかに間違ってる、そういうものを称えてよいもんだろうかって批判したとする。それに対して、激動の戦後に生まれ合わせて、革命を何より愛する一人の日本人を描こうとした、どこが悪いんだって言われたらどうするんでしょうね。


あっと、この講演自体は本題じゃなかった。上の講演は講演で見て(読んで)もらえばいいのだが、とにかくこの講演後の懇親会で、前のリンクのように、SF的な発想ということが話題になり、そこで架空戦記のシミュレーション的な話題になったとき、浅羽氏が語ったひとつのIfが「のちに中国の油田地帯となった旧満州で石油が発見されるのが、まだ『満州国』の時代、日米交渉で原油禁輸で日本が苦しむ前の段階だったらどうだったか?」というIfだった。


大慶油田」のことだった。

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%A4%A7%E6%85%B6%E6%B2%B9%E7%94%B0
大慶油田(たいけいゆでん、ターチンゆでん)とは、中国東北部黒竜江省に存在する油田である。命名は地名からではなく、油田が建国10周年の節目で発見されたことに因む。
100km四方に広がる中国屈指の大油田であり、油田の開発は、第二次世界大戦後輸入に頼っていた中国の石油事情を一変させた。

1959年 原油が確認される

現実には1959年の、この油田の発見が、
1930年代、1940年代(の開戦前)だったら…と。


自分は2回ほど書いたけど、「ミッドウェー、もし日本海軍勝利だったら」とか「もしもドイツがスターリングラードを陥落させていたら」みたいなIfより、そもそもその前の「もし枢軸国陣営と連合国陣営が大戦争に至らず(独仏・独英戦のみ)、その後長い冷戦状態にあったら」というIfのほうに興味があって、それに似た本やネットの議論を紹介した。

欧州で勝利したドイツ大帝国と、アメリカが冷戦する世界・・・「ファーザーランド」の紹介文から
http://d.hatena.ne.jp/gryphon/20100528/p4

ベルリン、1964年。
ヒトラー総統75歳の誕生祝賀行事を一週間後に控え、ジョゼフ・P・ケネディ米大統領デタント交渉に訪れようという冬の朝、老人の死体が湖畔で発見された。男は古参のナチ党員で…。
第二次世界大戦勝利から20年、ヨーロッパ全土を支配下におさめる大ナチ帝国を舞台に展開される気宇壮大な政治ミステリー。

  

 
「もし邪悪な日帝が、中国を支配し続けていたら」…或るシミュレーション -
http://d.hatena.ne.jp/gryphon/20120419/p5

石油の発見というのは必然でもあろうけど、やっぱり丁半バクチ的な運でもあって、たとえば「タイムスリップしたXXXが歴史を変える」的な作品で、戦前の日本の歴史を変えようとしたら、たしかに「満州のここに石油ありますよー」と具体的な場所をさししめす、というのは労少なくして効果大の一手ではありましょう。
タイムスリップしたときのために皆さん覚えといてください(笑)。


でも、それがいい効果をもたらしていたか、、満州で石油をまかなえた大日本帝国が、70年後に今の日本よりマシかというと…この秘密をそっと隠す選択になるかもしれないな。

たぶんいい形でも、少なくとも軍の影響力がエジプトやタイみたいな感じになっていたんじゃないだろうか。「政局の混乱に際し、軍が仲介し挙国一致内閣が誕生します。首相は陸軍大臣が兼務します」みたいな。
歴史はやはり必然が、偶然を支配するのだろうか。



大慶油田発見の「IF」は、さすがに本になるほどの大きな話題ではないが、先に注目する人もいたらしく、けっこう専門的な板ではネット上での議論になっていたみたいだね。
「未発見たるべくして未発見だった」
「発見しても当時の技術水準ではあまり意味がなかった」という意見も散見される。
http://www.warbirds.jp/BBS/c-board/log/tree_138.htm
http://fukuju3.cocolog-nifty.com/footbook/2012/08/post-68e6.html
http://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q1233075047

ジパング」ではどうだったかな?もっともあの世界では、すでに日米戦争は始まっていた。

コメント欄より情報

木村

大慶油田が発見されたことで歴史が変わる仮想戦史といえば谷甲州の「覇者の戦塵シリーズ」ですね。
谷さんらしく技術的側面から歴史がジワリジワリと変わって行きます。技術屋視点として風立ちぬとは相性がいいかも。