映画「リンカーン」を見てきました。やはり映画が1000円で見られる「映画の日」はありがたい。
以下、つらつらとした感想をまず思いつくまま描く。
・冒頭、北軍と南軍の苛烈な白兵戦が描かれる。先込め銃からライフルに変わっていく時代の戦争であり、白兵戦もままあったのだろうか。素手での殴りあいなどもある。自分は直接的な戦闘シーンなどがそんなに好きではないので(※謀略や駆け引きの描写、がより好きという話)オマハビーチ的に延々描かれてもなあ、と思ったのだが、そこは数分で。「グローリー」などで描かれた、北軍の黒人兵士も描かれる。
・自分の興味の置き方は、ここで書いたようなお話。
■スピルバーグのリンカーン映画は「正しい目的なら陰謀、妥協、駆け引きは許されるか?」を描くらしい
http://d.hatena.ne.jp/gryphon/20121220/p3
■安倍政権、もうすぐ100日?そして映画「リンカーン」公開
http://d.hatena.ne.jp/gryphon/20130403/p4
・そういえば、偶然ほんとうに「憲法改正」と”票読み”が日程に上がってきた(96条の話)なあ……で「偉大な大目標のためには、裏工作も情報隠しも、以前の主張と矛盾したその場しのぎの妥協、穏健化もアリありでおk!」というこの映画のテーマは、やっぱり”汎用性”が高いと見た。これはオバマ政権(のリベラル政策推進)へのハリウッドからのメッセージだ、というのが背景にある、という分析記事も読んだが、同じ論法・・たとえば上のリンクで掲げた「方位磁石」の比喩を鳩山由紀夫も小沢一郎も菅直人も野田佳彦も安倍晋三も橋下徹も・・・ふりかざせる、とは思います。
・やはり議会大接戦での”票読み”は擬似戦争であり盛り上がる。党議拘束に縛られないクロスボートがふつうのアメリカ政治ではなおさらだ。ただこの裏工作・・・主な原作となった”チーム・オブ・ライバルス”などの歴史書での裏付けはあるのかな?そんな買収(主に役職の付与)工作が細部まで判明するとは思いにくいけど・・・
だからロビイストの工作とか、リンカーンの説得だけは理念的な高潔なものだ、というようなところはかなり監督のさじ加減だったのだと思う。
・憲法修正条項を成立させるには「南北戦争の和平は難しい」という前提が必要だった(和平がすぐそこなら、奴隷否定の憲法改正は南を硬化させるおそれがある、ので妥協もやむを得ず・・・というのはひとつのありえた議論だった)このへんは「LIE & PEACE」と自分が勝手に呼んでいる・・・それこそ映画化してほしい「柳川一件」ともダブるのである(笑)。
■江戸幕府を震撼させた国書偽造スキャンダル「柳川一件」の顛末
http://kousyoublog.jp/?eid=2810
・この映画(とくに息子の話&「憲法修正のためには、和平を遅らせるのもやむなし」)を「銀英伝脳」で見るとたぶん『あれ?』となるよ(笑)。単独スレで
・映画には、南北戦争時代の軍歌が歌われる場面もあった。あとワシントンの肖像画の逸話もおもしろかった。単独スレで。
・映画本編が始まる前に、日本じゃ背景がわからないだろーと、特別に監督が時代背景を説明する映像が流れた(youtubeと同じもの)。アメリカ人が「八重の桜」見るようなもんだからな。こういう説明を加えることは確かに史劇の海外輸出において必要だと思う。「監督が直接語る」はスピルバーグだからスペシャル感があるけど、いっそどんな歴史物でも、超初心者がわかるぐらいの初歩的説明を本編前の枠で語っていいんじゃないか。
・今回は「会議もの」というジャンルだったと考えると、今製作中の三谷幸喜「清洲会議」にバトンが渡される、ともいえる。ドラマ「鈴木先生」に波及してもらってもいいのだがなあ・・・そしていっそのこと岩明均「雪の峠」が映画化されてくれればいい(笑)
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http://d.hatena.ne.jp/maukiti/20130430/1367275116