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John 8:32 Then you will know the truth, and the truth will set you free."  複数ブログの過去記事を移管し、管理の委託を受けています 

夢枕獏が「第二次電王戦」初戦の観戦記を執筆。だが…「米長邦雄のことをまず書かないと、この観戦記も書けない」

http://news.nicovideo.jp/watch/nw564135

■第2回将棋電王戦 第1局 電王戦記1.2 (筆者:夢枕獏)

── 米長さんのことから ──

 何から書きはじめようか。
 迷っているのは、米長邦雄の『われ敗れたり』を読んでしまったからである。
 本来であれば、今日、本日の朝からこの原稿を書き出す予定であったのだが、半日かけてこの本を読んでしまったため、この時間――二〇一三年三月二十六日の午後五時にこの稿を書き出すことになってしまったのである。
 三日前の三月二十三日のこの時間、ぼくは千駄ヶ谷将棋会館にいた。第二回将棋電王戦の第一局目を観戦するためである・・・

夢枕氏が「読んでしまった」本については、ちょとだけ自分も感想を書いています。

われ敗れたり―コンピュータ棋戦のすべてを語る

われ敗れたり―コンピュータ棋戦のすべてを語る

■「電王戦」から1年、米長邦雄既に亡し…。その歴史、ドラマを本で振り返ろう
http://d.hatena.ne.jp/gryphon/20130114/p2
 
■戦争の夜へようこそ!!本日「第二次電王戦」の幕があがる/故米長邦雄が正座させられた話。
http://d.hatena.ne.jp/gryphon/20130323/p2

だが、獏さんは・・・

一局目と五局目を観戦して観戦記を書くのがぼくの役割であった。
 観戦を終えた時にはすでに原稿の構想はできあがっており、どう書くかという文体まで決めていたのだが、今日『われ敗れたり』を読んで、これまで考えていたことが、みんなぶっとんでしまったのである。
 白紙。
 まっしろ。
 その中で、ぼくが考えていたのは、この本を書いた米長邦雄のことを書かねばならないということであった。まず米長邦雄のことを書かねば、この稿を進めることができないと思ったのだ。
おれはプロだよ。
 書くことのプロ。
 要求された枚数で、必要なこと、思ったことは書ける。
 だから、いきなり、この文章を普通の観戦記としてスタートさせることだってむろんできたのだが、この米長邦雄の本を読んだ時に。それができなくなってしまった

ああ、こうやって「木村政彦のことを書くには、まず前田光世のことを書かねばならない」「前田のことを書くには、まず嘉納治五郎のことをかかねばならない」といって「東天の獅子」ができたんだな(笑)


夢枕獏の将棋小説「風果つる街」。主人公は、氏の別の格闘技小説に出てくる格闘家の父親である、という面白いサービス設定もしてあります。

風果つる街 (角川文庫)

風果つる街 (角川文庫)

その老人はみごとな銀髪をしていた。その瞳は異様な光を帯び、ノラ犬を思わせた。加倉文吉、人はその男のことを「真剣師」と呼ぶ。賭け将棋のみで生活をしているもののことである。旅から旅へ、俗世間のしがらみをすべて断ち切って、ただただ強い相手を求めて文吉は生きる。夢を諦めて師匠の妻と駆け落ちした男、父の敵を追い求める女、プロ棋士になり損ねた天才…。将棋に取り憑かれた男と女。その凄絶かつ濃密なる闘いを描ききった連作集。

いまだに覚えているシーンがあって・・・賭け将棋に負けた相手が、主人公の老真剣師に負けたカネを地面に落として「さあ、拾えよ」と挑発するシーンがある。
それに対して怒りの拳・・・とかがお決まりだろうが、老人は平気でひょいと紙幣をつまんで懐にいれ
「どこに落ちても、金はカネでね」
とひとこと。
たしかにこっちのほうが相手には屈辱的だ。主人公にいい個性を持たせた名シーンだった・・・。
と書きながらデジャヴを感じて調べると
http://d.hatena.ne.jp/gryphon/20040526/p3
でその話かいてた(笑)。まあ9年前の文章だ、許されよ。