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John 8:32 Then you will know the truth, and the truth will set you free."  複数ブログの過去記事を移管し、管理の委託を受けています/※場合により、語る対象の「ネタバレ」も在ります。ご了承ください 

スピルバーグのリンカーン映画は「正しい目的なら陰謀、妥協、駆け引きは許されるか?」を描くらしい(町山智浩「サイゾー」記事から)

http://d.hatena.ne.jp/TomoMachi/20121219

発売中の月刊サイゾー1月号で、スピルバーグの『リンカーン』について論じています。

というのを読んだ最初の感想
「あれ?この前の吸血鬼退治の映画とは別?」だった。
別に決まってるとすぐ自分で気づいた(笑)

で、つぎに思ったのは
「ほほースピルバーグさん、またそろそろアカデミー賞ほしくなりましたか、この欲張り!! ・・・で『ガンジー』みたいな、何時間もかけて偉大な人物の生涯を一から十まで描くようなやつっすか」と。


ところがちゃうちゃう。
実際にサイゾーの記事を読んだんですよ。
未公開映画だし、どこまで書いちゃっていいかアレだけど

リンカーン南北戦争の最中、ある重要なXX法の改正を進めていた。
・それは今からみれば必要な改正だった。
・そして、そのために非常に汚いこともした。
・敵と妥協もした。
・情報隠しもした。

そして、それは許されるのではないか・・・というお話である、そうです。
そして、それはオバマ大統領の現在の状況に対する、スピルバーグのメッセージだ・・・というのである。



へえ、と思ったね。
まず、アメリカ史に詳しい人なら有名な話だったのかもしれないけど、世界中の大多数にとっては「偉大で高潔なリンカーン」像である。それが妥協と陰謀をやっていたという話は、それだけで人目を引く。


自分は、多少は「知られざるリンカーン像」系の本を読んでいたが、それは大統領になるさらにそのまえ「議員になろうとあがいていたころのリンカーン」で、これはもっとエゲツなかった(対立候補を落とすため、人種偏見を煽る側にまでなったんだよ!)
記憶だと、たぶんこの本にあったはず↓

リンカーンの三分間 ゲティスバーグ演説の謎

リンカーンの三分間 ゲティスバーグ演説の謎

ただ、その議員になるためのあがきも含め「(いい)目標を果たすためにはやむを得ない」ものなのか、と。


あー、町山記事を補足する記事があったよ。
はいはい、これを読んでもらえりゃいいんだ。
以下 ○ミ\(・_・ )トゥ ←丸投げ

■映画『リンカーン』はハリウッドからオバマへのメッセージなのか?(マイケル・ホーガン)
http://www.fabloid.jp/michael-hogan/is-lincoln-a-memo-to-obam_b/

くしくも数日前、オバマは「財政の崖」や「同性婚」に加え、あらたに「銃規制」の問題も抱え、さきほど「バイデン副大統領を座長とした対策会議を発足させる」との報道が入ってきた(それがお茶にごしか、本気かはわからないが)。オバマ政権と銃規制のジレンマについてはこちらを参照。

■『銃規制』議論によって追い詰められるオバマさん
http://d.hatena.ne.jp/maukiti/20121219/1355862039

ただ、「いい目的のためなら陰謀もゆるされる」という話は、その「いい目的」を共有しない側にも認められるのか、という話にもなる。フセインを打倒できたから、存在しない大量破壊兵器の疑惑提起もOKだ、みたいな。


そして、この映画は日本で来年3月に公開されるという。
来年3月といえば、安倍晋三政権が、およそ100日といわれる新政権と世論とのハネムーンを終える時期だ(現実に、それがあるか知らない)


「(正しい)目標のためには、ゆっくりと、妥協も駆け引きも、三歩進んで二歩下がる、もあっていい。支持者はそれを理解し長い目で見守れ」というメッセージは、映画好きだという安倍晋三にも届くかもしれない(笑)。支持層に届くかはしらない(笑)。
そしてちょうどそのころ参院選への折り返し地点だな。


第一次安倍内閣がつまづいた最初の点であった人事は、前回の反省を踏まえ重鎮、煙たい存在も入閣させるなんて噂も飛び交う。
絶対多数議席を持っても、参院選憲法改正をにらんで低姿勢で、慎重に発進していく第二次安倍内閣・・・がもし生まれるなら、逆に非支持者にとってはどうなんだろう。
これは根本的な難題だな。
「自分のイデオロギー、欲求をむき出しにして強引に政権を運営してもらい、派手に自爆してほしい」のか「批判の世論で牽制しながらマイルド、慎重な姿勢を続けさせ、あちらもダメージは少ないがこちらの害も無い状態のほうがいい」のか。

この映画はアメリカでは「ドリームワークス社とフォックス社」が配給してるんだって。

名言「方位磁石は正確に北を指す。でもそこまでの障害物は示してくれない」

さっき紹介したホーガン氏の記事で、映画のリンカーンのセリフが引用されているのだ。奴隷制に対してリンカーン以上に理想主義的な急進議員に、リンカーンが妥協の大切さを説く場面らしい。

コンパスは真北を示すことが出来るが、君の目的地と君との間にある障害物については何も知らせてくれない。もし君が真北を目指して、その結果、沼にはまってしまったら、君は良いことを誰にもしてあげれない。

ホーガン氏は
リンカーンのこのメッセージは、ネット上の多くのブロガーが覚えておくべきものだろう:政治とは、物事の達成を目的とするものである。我々は倫理的な潔癖さを求めるあまり、物事の進歩を阻害してはならない
としている。
なかなか含蓄のある名言だが、
ただし、この弁明はリンカーンオバマ(とその支持者)が使えるかもしれないけど、安倍晋三橋下徹小沢一郎前原誠司石原慎太郎嘉田由紀子・・・(とその支持者)だって使えるのかもしれないわねえ。

「妥協と駆け引きと陰謀の芸術」を描くこの映画がヒットするなら

日本でも映画「竹下登」が作られるかもしれない、と思った(笑)。