2012年11月22日の毎日新聞に、非常に興味ぶかい記事が載っていた。
うん、まったく興味深い。
これとは別にアウンサン・スーチー単独インタビューの記事があり、それに添えられた感想の記事だ。
春日氏は最近、ミャンマー民主化を徹底的に追い「まもなく検閲が撤廃される」ということをスクープした人だったと思う。
全体的にスーチー氏に苦言を呈するようなニュアンスもあり、そういう点でもめずらしい論調だが、とりあえず今回は表題にした「国名(自称・他称)の正義学」の議論のところに絞って抜粋しよう。
http://mainichi.jp/select/news/20121122ddm007030089000c.html
ミャンマー:スーチー氏単独インタビュー 反体制派から脱皮を=アジア総局長・春日孝之
毎日新聞 2012年11月22日 東京朝刊
アウンサンスーチー氏へのインタビューで私はどちらの国名を使うべきか迷った。旧軍政は89年、英植民地下で採用された「ビルマ」を「ミャンマー」に変更したが、スーチー氏は「ビルマ」にこだわり続けている。「ミャンマー」を使って彼女の機嫌を損ねはしないか、一抹の不安があった。
インタビュー前日、オバマ米大統領がこの国を訪れ、テインセイン大統領との会談後、こう述べた。「大統領が始めた『ミャンマー』での改革は素晴らしい可能性につながる」。米政府が使用してきた「ビルマ」ではなく、公の場で初めて「ミャンマー」と言及し、テインセイン大統領に最大限の敬意と配慮を示した格好だった。
同じ日、ヤンゴン大学で演説したオバマ大統領は一度も国名を口にすることなく、「この国」という無難な表現を繰り返した。最前列で傾聴していたスーチー氏や政権首脳の双方に気遣ったのだ。
ただ、都市名に関しては、現在の「ヤンゴン」ではなく、スーチー氏が使う旧名の「ラングーン」を3回使い、彼女により配慮した印象を与えた。
昨年3月のテインセイン政権誕生以降、「民主化」の進展を反映して「ミャンマー」の呼称が国際的な認知を深めてきた。今年1月、英紙フィナンシャル・タイムズは「ミャンマー」に呼称を変更、その際「『ビルマ』を使い続ければ客観性を損なう」と説明した。
ミャンマー選挙管理委員会は今年6月、スーチー氏に「憲法に規定された正式の国名を使うように」と求めたが、スーチー氏は「個人の選択の問題」と主張し、「使い慣れている方を使うだけ」とも釈明してきた。
私は結局、スーチー氏には「ビルマ」「ラングーン」の呼称を使い、最後にこうただした。「大統領になっても再考する余地はないか」と。彼女は決然と言った。「私が『ミャンマー』という国名に反対するのは、(当時の軍政が)国民の意思とは無関係に決めたからです」
「では、英植民地政府はそれまでの呼称を変える時、国民の意思を尊重したのか?」。私はそんな反論をのみ込んでしまった。
(略)
軍事独裁政権下で、信念の強さや頑固さは民主化闘争の大きな武器になったが、政権が同じ「民主化」を志向する今、存在意義を示す必要がある。呼称問題は端的な一例なのかもしれない。自戒を込めて言えば、彼女の顔色をうかがう私たちメディア…(略)も、彼女の「真の政治家」への「脱皮」を妨げているのかもしれない。
毎日新聞はスーチー氏の手記を長年にわたって掲載してきた。そこが「彼女の顔色をうかがう私たちメディア」と言い切るのにも少々驚いたが・・。
それとは別に上の話は
「政権・支配の”正統性”」
「公式の場と私的な場」
「正式名称を、他人に”呼ばせる”ことができるか」
など、多彩な論点を含む。
満洲、京城、日王、支那、蒙古、日本海、東海、グルジア、ジョージア・・・などとも、もちろん関係は出てくる。
以前のにリンクするぜい。
■国名変更の正義学…グルジア政府の要請から
http://d.hatena.ne.jp/gryphon/20120220/p5
■自称他称…ついでに市場の正義学(ダナとデイナ)
http://d.hatena.ne.jp/gryphon/20120303/p3
■「蒙古と呼ばないで」
http://d.hatena.ne.jp/gryphon/20110302/p4
■韓国有力紙、再び「日王」表記へ
http://d.hatena.ne.jp/gryphon/20050203/p3
■韓国の「進歩派新聞」ハンギョレも、天皇の「日王」表記を続けているらしい(併用?)
http://d.hatena.ne.jp/gryphon/20120818/p4
■韓国進歩派新聞「ハンギョレ」公式日本語版スタート・・・さて訳語は「日王(일왕)」か「天皇」か?
http://d.hatena.ne.jp/gryphon/20121023/p2
■「ハンギョレ」、公式に天皇は「日王일왕」表記と決定?/日本の教科書や資料集、万里の長城の長さをどう書く?
http://d.hatena.ne.jp/gryphon/20121031/p4