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John 8:32 Then you will know the truth, and the truth will set you free."  複数ブログの過去記事を移管し、管理の委託を受けています/※場合により、語る対象の「ネタバレ」も在ります。ご了承ください 

『この機械の是非は、民放連で協議すべきだった』…かくも「SPIDER」をテレビ旧体制は恐れる(Dropkick)

【記録する者たち】
最新号が発売された。

Dropkick(ドロップキック) Vol.8 (晋遊舎ムック)

Dropkick(ドロップキック) Vol.8 (晋遊舎ムック)

藤田和之インタビューとか、グローリー12.2大会撤退の裏話、とかいろいろあるが、まず何号か続いている「SPIDER」の話を・・・というのはいつもこのブログ、いつも巻頭記事は格闘技・プロレス話だが、そこに時事、経済、新技術の持つ意味などが絡んでくる・・・というかウチの芸風を「Dropkick」にやられると困るな(笑)

企画は水道橋博士が絡んでいる・・・・
おお、ありがたいことに前回の特集がノーカットでネットに掲載されている。
一部を抜粋するけど、まずこっちを読んでもらおう・・・でも長いんで、それを読んで満足しないでこっちに戻ってきてね(笑)。


ただその前に、予備知識として「そもそもSPIDERって何?」をおさらい。
http://www.itmedia.co.jp/pcuser/articles/1210/16/news083.html

・・・SPIDERシリーズを簡単に説明すると、地上波放送全チャンネルの番組を1週間分ほぼすべて録画し、いつでも再生できるという製品だ。
 複数チューナーと大容量のHDDを内蔵し、放送中の全番組を録画する、いわゆる「全録機」は他メーカーからも発売されているが・・(略)SPIDERと「全録機」はどこが違うのか? ・・・
(略)
SPIDERの番組表はこの1週間に放送された番組表になっている。ここから、例えば先日の日曜日の朝7:30にTBSで放送されていた「がっちりマンデー!」が面白かった、ということをTwitterFacebookを通して知ったSPIDER利用者は、リモコンで番組表を表示し、先日の日曜日の朝7:30までさかのぼって、その番組を見ることができる。
 ここまではほかの「全録機」も同じかもしれない。

 しかし、SPIDERでは、さらに、その番組を見て面白かったと思ったら、そのことを自分の友だちにも勧めることができる。勧められたSPIDER所有の友人は「お勧めメッセージ」を開くと、その番組の「面白かったシーン」から再生できる。

 さらにSPIDERは検索機能も備えており、例えば「iPad」といったキーワードを登録しておくと、この1週間のあいだに放送された「iPadが登場したテレビ番組」(iPadそのもののCMも含めて)を、すべて検索にひっかけて視聴できる。

 この検索機能は、番組表に書かれた情報を参照しているのではなく、番組中に出演者が話したセリフなどがすべて文字おこしされた状態で検索対象となっており、たまに番組にチラっと写っていただけのポスターに書かれていた文字などでも検索できることがあるようだ。さらにはCMで使われていたBGMの曲名やアーティストなども検索対象となっている。
(略)
 こうしたことができるおかげで、SPIDERを使うとテレビの視聴スタイルが、まったく変わってしまう。


という予備知識を持った上で、前回のDropkick特集にGO。

■【Dropkick】水道橋博士&佐々木俊尚&有吉昌康「SPIDERとメディアの未来」完全版
http://ningenfusha.jugem.jp/?eid=328


博士 これは前から言ってるんですけど、このSPIDERを作っている会社って“日本のアップル”や“日本のグーグル”になりえる。決して大げさじゃなくて ね。SPIDERは『ガイアの夜明け』とか『情熱大陸』や『NHK特集』で取り上げるべき革命的な代物なんだけど、この世界観を掴めてる人がいないからテ レビ側からの取材もそんなにされていない。だからここでも、まずイチからSPIDERの説明をしていかないといけない



博士  (略)・・・これが実現すると「ソーシャル」のコーナーでテレビ番組をキュレーションできる人がいれ ば、それはテレビとネットのつながりを深くすることができるんですよ。「ガチ相撲」で生じたようなズレはもっと小さくなる。
 
有吉 これは「ソーシャル」がひとつのテレビチャンネルになっていきますね。「科学技術」や「アート」、「プロレス」というチャンネルがあってもいい。そのジャンルに強いキュレーターの方がつぶやくことで、ある種、雑誌のようにテレビが観られるんです。
 
博士  SPIDERの中に絵がある雑誌ができちゃう。テレビを巻き込んだネットの世界。ネットとテレビの融合によってホリエモン堀江貴文)が「ドラマで女優が 着てた服がその場で買える」と言っていたけど、そのときは何それ?って思ったけど、その時代が間もなくやってくるんですよ。



有吉  (略)テレビ番組ってじつは1週間のあいだに2000番組もあるんですが、「知ってる番組名を書いてくださいよ」って言うと、だいたい 誰もが20番組ぐらいしか書けないんです。ということは知ってる番組はわずか1パーセントしかなくて、99パーセントも知らないまま「テレビはくだらな い」と言われてしまっている。・・・(略)検索により偶然、見つけられるし、「ソーシャル」の他人のツイートからも発見できる。



博士  1・5倍速や2倍速ってあるでしょ。そうじゃなくて、1・5、1・6、1・7、1・8と刻んで倍速で観られるんだよ。それの何が凄いかっていうと、自分の 視聴能力が倍速に慣れてくると全然追いつくの。それは活字の速読術する人が文脈を読んで語尾まで読まないのと同じで、ニュース番組なんかでも1・5倍速で も普通に観ることができる
 
佐々木 NHKのドキュメンタリーなんかゆっくりだから、3倍速でも平気ですよ。

最後の「倍速で見るとなれてくる」って昔、「こち亀」でギャグに使われてたネタだ(笑)。でもたしかに、今の倍速って(俺のHDDレコーダーは)「そのまま早く聞く」のには向いてない。朝まで生テレビなんかは言葉に依拠するから、この「早聞き」で1時間半ぐらいで番組を見たいってのはあるし、ニュースも早聞きが一般的になるだろうね。

いかに「テレビ旧体制」が”検索される”ことを恐れているか…それが今号のDropkickで分かった

で、今回のDropkickでは
「SPIDERとお笑い芸人論」として

☆大反響のSPIDER特集にあの“T部長”が登場! 白熱するお笑い芸人論――
水道橋博士×土屋敏男
「50歳になってボクはもう反省するのをやめた。だってボクも土屋さんも、もう死ぬんだから!」

電波少年」の土屋敏男Pが、ダースベイダーのテーマ曲に乗って登場したのだが・・・なんと今回はリック・フレアー並みに後ずさってノーノオーと懇願する、やられ役のジョブをしている。そのせいでこの「未知の強豪」SPIDERの強さ、すさまじさをアピールしているのだ!!(結果的に)

「・・・・・・これは、おっかない機械だね(笑)。テレビを長いことやってきた人間からすると。」
 
「博士の言ってることは凄くわかる。わかるんだけど、やぱpり怖いよね。・・・CMスキップに対するアゲインストは凄くデカい」
 
「(略)いますぐ切り替えられるかというと、これまでのかたちが崩れてきちゃうわけじゃない。」
 
「いろんなテクノロジーが発達したにもかかわらず、テレビはいまのビジネスモデルを守ろうとするわけでね。(略)SPIDERってのはある種の外圧」
 
「夜8時の枠だから設定していた広告料が変わってしまう」


まだまだあるけど、切り上げよう。
そして、特にこの言葉がすごい↓ので、別立てで紹介する。

「こんなものを大手の電気メーカーが作ったら『ちょっと待って。民放連で話し合ってからじゃないと発売は出来ない』ということになるよ」

昔から「燃費が今の20倍の自動車はすでに完成しているんだが、石油メジャーが妨害している」という系統の都市伝説はあり、土屋さんはそれにのっかってオーバーに言っているのかもしれないが・・・
ただ、「対アップル敗戦」が語られるとき「技術や価格じゃない。日本の、特にソニーが自分もハリウッドに会社がある関係で著作権に遠慮しているうちにI-podを売り出したアップルがネット上で簡単に曲を買えるようにして、それが致命傷だった」とよく言われる。てか上のDropkick第一回特集にもあるね。

佐々木俊尚 それは2001年にアップルがiPodを送り出したことに似てるんですよ。そのあとアップルは2003年にiTunesをスタートさせましたよね。
 
博士 そうですね。あそこで音楽配信ビジネスは「勝負あり!」って感じで。
  
佐々木 でも、iPodが発売されたときに日本では「こんなものはまったく売れない」とさんざん言われて、日本の名だたる電機メーカーの従事者たちが雑誌のiPod企画でみんな口をそろえて「日本のメーカーなら簡単に作れますよ。もっと質の高いものを」と。たとえばいまのiPodはそうでもないですけど、当時は部品の噛み合せが悪くて隙間が空いていたり、内部を開けてみると基盤がバリだらけだったりした。それなのになぜiPodが売れまくったかといえば、製品の出来でもなければ性能でもなく単純に“使いやすかった”ことに尽きると思うんですよね。

いや、これの凄いところは・・・テレビや今の笑いに詳しくないぼくはそんなにピンとこないけど、土屋敏男といえばテレビ界のカリスマであり、新しいものへの感覚や常識外れを許容する器は、いまさら言うまでもない人だ。

その人「ですら」、SPIDERの機能を見て「おっかない」と感じてしまうのだ。いくら切れ物で大物でも、テレビ幕府の幕臣小栗上野介である以上は、その才能を知りつつも維新を起こす可能性のあるSPIDER龍馬は暗殺せざるをえない、ということだ・・・
 
今回、「土屋氏がフレアーばりに後ずさることでSPIDERの強さをアピールできてる」と言った意味がお分かりっすか(笑)。


まあ詳しいことは実際に同誌をご覧ください。
ほかには藤田和之のインタビューや桜井マッハ速人の逸話がすごかった。


テレビを検索、記録しアーカイブ化するということ。

たぶん自分はネットに触れ、そしてグーグルがどんどん便利になっていく時代に「べんりだなあ。テレビ番組もこんなふうに検索できればいいのに」とちらっと思ったことがあった筈だ。
だから俺がSPIDERの社長になってたかもしれないんだよ(笑)。

だけど自分のそれはドラえもんの歌じゃないが「こんなこといいな できたらいいな」というだけで、てか本当にドラえもんひみつ道具レベルで実現不可能と思っていた。


こんな感じで。(ここは大山のぶ代の声で)

『 「検索テレビ」〜〜。これに人名やキーワードを検索すると、その芸能人や見たい場面が探せるんだよ 

うん、HDDレコーダーにはそれなりにあったとはいえ・・・やはり事前登録の番組表データだけじゃ十分じゃなかったね。そして今はオペレーターが頑張っているそうだが、音声入力や顔画像検索の技術が進歩すれば「水道橋博士」の顔が映ったときは自動的に顔画像を認識して登録されるかもしれないし、オペレーターはキーボードでなく口頭で「野田佳彦」とつぶやくだけでOKになるかもしれない。そうなればさらに充実だ。

「テレビ映像を『記録』にとどめたい」という人々の軌跡

過去のブログ記事からプレイバック

■「ニュース映像の図書館作れ」毎日新聞記者が提言
http://d.hatena.ne.jp/gryphon/20050929/p2
 
・・例えば10年後、20年後に各分野で、テレビ映像を使用したどのような検証や回顧が可能かという問題である(略)・・・太平洋戦争や戦後史については、「ある程度まで出来る」だろう。しかし、今話題沸騰の「小泉劇場」の解明については後日、「なぜあの時人々は、“小泉マジック”に、催眠術にかけられたようになったのか」を、具体的な映像を通じて解明しようとしても、極めて困難である。放送されたニュースやドキュメンタリー、さらにはドラマなどを保存して公開する「放送ライブラリー」が、日本ではまだ十分に機能していない

■テレビの笑いを活字に記録した本(水道橋博士日記より)
http://d.hatena.ne.jp/gryphon/20081019/p4

水道橋博士
松田さんは、テレビのバラエティだけを見るという、
偏ってはいるが、膨大な(5500本のお笑い番組!)視聴時間を通し、
絶妙な抽出力で、旋風のように過ぎ去る、"笑い"を定点観測している。

テレビの笑いをすべて記憶にとどめたい 笑TV爆笑シーン採録2006~2008

テレビの笑いをすべて記憶にとどめたい 笑TV爆笑シーン採録2006~2008

そう、自分が一番「これが記録されず、消えていくの?それは惜しい、というか損失だよ!」と思い、実際にビデオなどで総集編をつくったりして必死で抵抗したのは「朝まで生テレビ」と「バラエティの掛け合い」だった(90年代の話で、当時はそれなりにお笑いを見ていた)。
西部邁でも姜尚中でもいいんだけどね、彼らを思想家、学者として扱って50年後の人が評伝や研究書を書くとするじゃん。そのとき「朝まで生テレビ」での彼らの発言や態度を検証できてなくて、どの程度の価値がある??
また政治家のうかつ発言、現在の立場との矛盾発言など・・・・・これは現在、SPIDERのようなものがない資料不備ゆえに、攻撃されないで済む・・・だけではなく、言わなかったことを言ったことにして理不尽に攻撃されたりもする(「福島瑞穂の警官発砲に関する幻のコメント」など)。

そしてバラエティの当意即妙のやりとり、これもその場でほぼ消えてしまう。
上で紹介した本は、活字というかたちでそれに抗った本だ。


かれらの思い、夢、期待を乗せてSPIDERはある、のではないか。そのデータベースは数年を待たずして・・・というか今現在、この時間も、一企業のコンテンツであると同時に、国会図書館に比する人類史の文化遺産になっているのだから。違うというなら、SPIDERに匹敵する日本のテレビデータベースを提示してみ?してみ????

「番組は我々が提供する時間帯に、テレビの前に座って観賞してよ!」…旧体制の”新撰組”はかく抵抗する。

これは何度も紹介したよね。

■「ラピュタ」TV放送で考えたこと。「バルス論」「みんなで一斉に見る」「宇野常寛」…
http://d.hatena.ne.jp/gryphon/20111210
■「UFCネット中継」「TBS、DREAM&内藤コラボで勝負」で再度考える「TV」の未来(「日本の、これから」より)
http://d.hatena.ne.jp/gryphon/20090427#p2

水曜どうでしょうの製作者 
「ぼくはいま、腹が立ってしょうがないんだけど、みんなそう思っていると思うんだけど、テレビマンは、『その時間にテレビの前に座ってみてくれ!』といわなきゃいけない。」
糸井重里
「みんな、一緒に見たいんですよ。人間は一人で生きているわけじゃない。会社で同じ話題、家族で一緒の話題のうれしさはばらばらに、ああ先月に見たじゃなりたたないんですよ。今日XXがあるから帰るね、ってのがうれしいんですよ。」
(略)
テレビ東京ガイアの夜明け」製作者 
「そんなに皆さん便利なものがみたいのか。便利なものがいいのかと・・・。情報とかオンデマンドとか、そんな便利なものばっかりを求めてどうするんだろう。」

新撰組」と称したのはもちろん、彼らが既得権益にまどろむ旗本ではなく、剣の腕には覚えがある一騎当千の荒武者たちだからだ。
しかし彼らだからこそ「視聴者の都合で録画してバラバラの時間に見る?そんなの許さん!!」と言い切ってしまえる。

彼らにあらためて「SPIDER」をどう思うか、聞いてみたいところ。


関連のリンクも紹介
■「今」という時を共有する役割においてテレビは生き残るよみたいな
http://d.hatena.ne.jp/tvhumazu/20090910/p2
■「テレビの、これから」に思うこと。
http://senkanburian.jugem.jp/?eid=563
WBC勝戦、「バーチャルお茶の間」出現を目撃
http://blogs.itmedia.co.jp/akihito/2009/03/wbc-a218-1.html




ただ自分は

けっきょく「SPIDER」の導入は遅くなるんじゃないかな(笑)。この場合
てれびのスキマ」さんや「はてなでテレビの土ふまず」さんがSPIDERを無償提供してもらい、面白いテレビの場面をバンバン「ソーシャル」で伝えて欲しい。


「それ、いまやっていることと同じ」
「そうですよね」。

このブログの横断的テーマとして

粘土板に刻んだ楔形文字から、三十一文字の和歌から、江戸の落首から・・・「記録を残すもの、伝えるもの」たちの歩みを追う壮大なサーガの一編と捉えている。

はてな上のタグではそういう区分はできないけど、
「記録を残すもの、伝えるもの」シリーズとして今後過去の文章もふくめピックアップしていきたい。


この話、下の記事・・・今回の「エヴァンゲリヲン」映画のテレビ放送話に続きます
http://d.hatena.ne.jp/gryphon/20121116/p2