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John 8:32 Then you will know the truth, and the truth will set you free."  複数ブログの過去記事を移管し、管理の委託を受けています 

宗教をめぐる最近の騒動・・・別の問題に見えて、実はひとつ(かな?)。

どっから行くかね。古いやつから。

チュニジア へそ出し銀メダル女性の“国籍剥奪を”

http://www.sponichi.co.jp/society/news/2012/08/16/kiji/K20120816003913760.html

ロンドン五輪の陸上女子3000メートル障害で6日に銀メダルを獲得したチュニジアのグリビに対し、ユニホームが反イスラム的だったとして国内のイスラム保守派が国籍剥奪を主張している。AP通信が14日伝えた。
 五輪では女子選手に一般的な、へそが見えるセパレートのユニホームで出場。チュニジア女性初の五輪メダリストとなったが、共同電によると、保守派はインターネットの交流サイトなどで「肌を露出しすぎだ」と非難。また、オープンウオーター男子10キロで金メダル、1500メートル自由形で銅メダルに輝いたメルーリについても、ラマダン(断食月)なのに競技前にジュースを飲んだことも批判している。チュニジアはアラブで最も西洋的な国の一つだが、昨年の革命後、イスラム保守派が台頭している

以前、サウジの女性選手が五輪の柔道に出場したことが批判を浴びたり、ラマダンを選手が守るべきかどうかが議論になったりしたこともあった。
http://d.hatena.ne.jp/gryphon/20120811/p3
そのときも書いたことだから、少し改変して繰り返そう。

厄介なのは「イスラム女性はへそを出すコスチュームは着ない」「貞淑イスラム教徒女性はあんなスポーツには出場しない」というのは、ひとつの宗教的信念に基づく世界観からの評価かもしれない、ということなのだ

上の話は、まだ「国籍剥奪とは乱暴だ」という統一見解が見出せるからまだ単純だ。そこにならコンセンサスを見い出せよう。
だが・・・
あ、アドリブで思いついた、なつかしのゲームブック風にしよう

【質問】上の問題であなたは、以下の二つの選択肢のどちらに共感しますか?選んでください

(A)イスラム教(の一部宗派)が「信者の女性は髪の毛を出すべきではない」「女性はへそを出す服を着るべきではない」と考えるのも、ひとつの宗教的見解。そういう主張や思想・信仰自体は存在していい。そういう考え自体をけしからんというのが、むしろ宗教差別。
 

(B)宗教の教義自体を批判するのもひとつの言論の自由。そしてイスラム教(の一部宗派)が「女性のへそだし服装禁止」「髪の露出禁止」などとするのは明白に女性差別。つよく批判すべきだし、法的規制もありえる


(A)の方・・・あなたは、「チックフィルA」の経営者タイプです!!
http://diamond.jp/articles/-/23855
http://biglizards.net/strawberryblog/archives/2012/07/post_1428.html
http://biglizards.net/strawberryblog/archives/2012/08/chick_fil_a_appreciation_day.html


(B)の方・・・あなたは「オランダ自由党」の党首タイプです!!
http://www.47news.jp/CN/201106/CN2011062301001203.html
http://d.hatena.ne.jp/gryphon/20110627/p2
http://synodos.livedoor.biz/archives/1915429.html
http://d.hatena.ne.jp/gryphon/20120130/p3

(もうひとつの選択肢もありますが・・・最後に)


ですな。特にオチはない。しかし続ける。

「チックフィルA」の店主は、抗議者たちに・・・

上のリンクでも紹介している

オバマの「同性婚支持」発言で大統領選はどうなる?論争の渦中にあるチキンサンド店“チック・フィレ”で賛成派と反対派が交わす熱いディベートの中身
――ジャーナリスト・長野美穂
http://diamond.jp/articles/-/23855

アメリカの文化的論争というのは日本にはなじみがなく、長文のルポ的な文章はなかなか読めない。そういう点で今回のルポは個人的にもたいへん興味深いものだった。


【その1】

「Tastes like hate」 (憎しみの味がする)。店の壁には、そう大きく黒字で落書きされていた。文字の横には、チック・フィレのキャラクターで、「もっとチキンを食べよう」と呼びかけるテレビCMに使われている「牛」のイラストまでご丁寧に描かれていた。

皆さんに質問
(1)これは「テロ」でしょうか「レジスタンス」(正当な抗議)でしょうか?
(2)日本で数年前に起きた「ザ・コーヴ」の上映反対運動と、店の壁に「Tastes like hate」と落書きする行為は、類似点・相違点どちらが大きいと思いますか(※もっとも「コーヴ」反対運動はさまざまに幅があったといわれりゃそれまでだが http://d.hatena.ne.jp/gryphon/20100612#p2 )
 
【その2】

「ボストンやシカゴの市長が、チック・フィレの価値観は受け入れられないと明言したよね。政治家がそんな風に、街から勝手にビジネスを締め出しちゃって、いいわけ? どう考えても差別だろ。合衆国憲法で保証された言論の自由はどうなってるわけよ?」

 確かに、ボストン市長のトーマス・メニーノは、チック・フィレに対し「ボストン進出を諦めるべきだ」と手紙を書いている。

いち早く日本語でこの問題を報じたブログ「苺畑より」では、この反響をもっと詳しく書いている。

http://biglizards.net/strawberryblog/archives/2012/07/post_1428.html
ボストン市長のトーマス・メニノ氏は今月中旬、同性結婚に反対する意見を述べたChick-fil-A (チックフィルエー)というファーストフードチェーン店の社長の言葉に激怒し、ボストン市内において反同性愛者を社長に持つ同チェーン店の開店は禁止すると発表した
これに便乗して、オバマ王の元側近で現シカゴ市長のラマー・エマニュエルもシカゴ市にチックフィルエーを開店させないと発表。・・・(略)
これに関してハーバード大学のアラン・ドーシュイッツ法学教授は、ボストン・シカゴ両市長のやり方は明らかな言論弾圧であり憲法違反であると語っている。(略)・・・教授個人の意見として同社長の意見には全く賛成できないとしながらも、社長が反同性結婚の意見を持つ権利は守られなければならないと主張する。教授は反同性結婚思想のビジネスを差別する行為は、一昔前にどっかの地方政府が同性愛者経営のビジネスを差別した行為と全く変わらないという。

※ここで引用されているドーシュイッツ氏の議論は
http://www.newsmax.com/Headline/Dershowitz-chick-intolerance-mayors/2012/07/28/id/446872
です。英語です。
 
みなさんに質問ふたたび。
(A)ボストン市長、シカゴ市長を支持
(B)ハーバード大教授を支持
どちらですか?



【その3】

・・・そんな頃、チック・フィレの店で食事をしていた女性客と同性婚支持者の間で、口論が始まった。

「聖書の言葉に従わないのは罪」と女性が言うと、「ジーザスは同性愛者を差別しない」という声が飛び、緊迫した空気になった。それを見ている警官とセキュリティ。そんなとき、チック・フィレの店の中からマネージャーらしき男性と女性社員が、水の入ったピッチャーを持って外に出て来た。
同性婚を合法に!』というプラカードを持った1人1人に、マネジャーが笑顔でコップを差し出す。汗だくになった多くの人々は、笑顔で「ありがとう」とコップを受け取り、水を飲み干した。マネジャーと社員は終止、笑顔のまま水を配り、そして店内に戻った

うわー・・・自分が想像で書いた話、そのまんまじゃん。

http://d.hatena.ne.jp/gryphon/20110918/p2
・・・差別というのは平等に「扱わない」ことに問題がある、というかそれ以上を追求すると「内心の自由」と抵触する。
だから、たとえばアメリカの片田舎にこういう店主がいたとする。

(誰かと雑談しながら)
「おれはイスラム教が大っ嫌いだね!あんな教えは鼻持ちならんよ、笑っちゃうぜ」
 
(・・・一見して中東系で、イスラム教徒と分かるいでたちや物をもった人が来店)
「いらっしゃいませ…それで話の続きだが、あの阿呆なイスラム教は…」
 
(客、かごをレジに)
「ありがとうございます。全部で14ドル82セント…はい18セントのおつりね。このリンゴはサービス!お持ちください」
 
(雑談の相手「おまえ、イスラム嫌いじゃなかったか?」)
「その通り、大っ嫌いだよ?ただそれは単なる俺の好き嫌いであって、商売はフェアにやるのが俺の信念だ」

・・・これは真っ当な態度……なのかな…??という話、である。

ルポというものの限界で、「長野氏が偶然見た範囲」のことだけでしかない、という留保はつくのだが、少なくともこのルポを信用するなら、チックフィルAは『平等(というか親切)な”扱い”をしている』というしかない。壁に「憎しみの味がする」とおそらく許可を得ないで(笑)落書きされてるにもかかわらず。


どーでもいいが、俺がこのルポでもっとも気になったのは
「チック・フィレは『もっとチキンを食べよう』と牛のキャラクターが呼びかけるテレビCMをしている」ということだ。
すごく、へんだよ!!!


いまごろ『「聖☆おにいさん」にムハンマドが出てこない』と森達也氏が話題に

日本の読者が気づかない
聖☆おにいさん』の謎
http://diamond.jp/articles/-/23714

いや、「気づかない」んじゃなくてそのネタはいまさらで・・・・・・「貴様らの居る場所は既に、我々が連載当初に通過した場所だッッッ!!」なんじゃないか、と思ったりもするのだが(笑)
ただ森カントクのおっしゃる指摘にも一理あるなーと思うのは、「日本の読者が気づかない」というタイトルは大仰で間違いだろうが、むしろ「日本の読者はとっくに気づいた上で、しかも問題はまったく解決していない」ことにあったりするんだな、これが(笑)

この記事へのはてブはけっこうたくさん・・・8月30日現在で500近いか
http://b.hatena.ne.jp/entry/diamond.jp/articles/-/23714

だいたいにおいて「イスラム教の教義上、神と預言者の似姿(とくに顔)を描いてはならない」から、という説明が多いのだが・・・

実はおそらく、はてな内で分量的にはこれ周辺の話題を取り上げていると思うけど、この問題は2005年以降「ムハンマド風刺画問題」として、各地で血を呼んでいた。
その時などに小説仕立てで、映画監督「巨匠白沢明」の発言としてこう言わせている。

ムハンマド風刺漫画問題。あるフィクション
http://d.hatena.ne.jp/gryphon/20060209/p2
「・・・ムハンマドには、もちろん大物俳優を起用する。妻との愛や性、苦脳、悩みや傲慢さも描ききってみせるさ・・・俺はムハンマドを、一人の偉大な精神を持った男だと尊敬し、愛しているが、ムスリムじゃあない。おれは彼を、一人の人間として描きたいんだ。だから、ムスリムにはこれを見てくれ、見ろ、制作費を出せとは言わない。その代わり、俺に対してやめろとか描くなとかも言ってほしくない。」

 
また「あの人、いわば歴史上の英雄、征服王じゃん!ならわれわれが、織田信長アレクサンダー大王を扱うように扱っていいんじゃね?」という視点からこうも書きました。

http://d.hatena.ne.jp/gryphon/20100918/p2(の中盤の文章)
・・・ムハンマド本人について。あの人、歴史の教科書を素直に読めば分かりますけど、基本的にツワモノ。・・・アラビア半島を統一、そこに君臨したまま栄光の生涯を終えたのです・・・国を動かし天下を揺るがした歴史上の英雄豪傑も、その1億分の1も歴史を動かせないサラリーマンの酒場の席や、ブロガーのキーボードによって批判批評揶揄、あげくのはてには美男化・女性化されても文句はいえない、というかスタンダード・・・

この認識、どこか間違っているでしょうか?
 
上の「白沢明」監督が取り組む映画について、再びアンケート。

(A)たしかに非イスラム信者が「肖像や似顔絵は偶像崇拝」というイスラム教内の教義に従う必要はない。ムハンマドの(顔出し)映画を取るのは彼の自由だ。解釈が批判的であってもいい
 
(B)イスラム教に「配慮」(?)し、非信者でも似姿の執筆や役者を立てての映画撮影はやめるべきだ。周辺もやめさせるべきだ。


ただ、はてぶの中の「偶像崇拝禁止」という説明とともにあるのが・・・単純化していえば
「テロの危険がある」
からだと。つまり、みな、テロリズムの恐怖、脅威によって表現の自粛をしている、ということではある。「放送禁止歌」の著作・番組制作経験もある森氏だから、そういうことを感じたのかもしれないな。

そういう実例はありますか、
といわれれば「あります」と答えざるを得ない状況・・・
悪魔の詩」日本語訳者殺害事件は犯人は今だ不明だからおくとしても
大使館爆破テロ、作者の暗殺未遂、繁華街爆破テロなどが発生している。

自分は
「正しくても、危険」

「正しくなくても、安全」
を天秤にかけ、後者を選択するというのは、確かに必ずしも一概に批判されるべきものではないと思う。
そういえば、拙記事「神社とイスラーム」への反響でこれを「地雷原に踏み込むことはない」と表現した人もいたな。
http://d.hatena.ne.jp/gryphon/20120517/p4

「映画『ザ・コーヴ』上映中止」「映画『靖国」上映中止」「日教組集会へのホテル会場貸し中止」「NHKスペシャルの一部カット( http://d.hatena.ne.jp/gryphon/20101228/p9 )」なども、担当者は同様に「わざわざ地雷原に踏み込むことはない」と判断した、といえる。(だがホテルの場合はたしか「一度契約を交わした」ことと「旅館法上拒否できない」というふたつの理由で法が貸すことを命じた)


ふたたび二択。
(A)「本当は非ムスリムムハンマドの絵や風刺を描くことは悪ではないと思っているけど、テロの脅威があるのでそれは実行に移せない」
のか
(B)「本当に、非ムスリムムハンマドの絵や風刺を描くことは悪だと思っているので実行しない」
さてどっち?
はてブをざっと見た限りでは、前者のほうが多いっぽい。

もっとも関連したリンク

■「神聖」なものを全部(法的に)保護すれば平和は来るが、その方向性でいいすか?
http://d.hatena.ne.jp/gryphon/20100922/p3

みんなでムハンマドを描く日

なんども書くけど風刺アニメ「サウスパークムハンマド登場問題に端を発したこの運動は、評論家の町山智浩氏も賛同している。(ラジオ「キラキラ!」より)

最初の「へそだし論争」「同性婚論争」その他に、もうひとつの選択肢を付け加えるなら

「解決せざるをもって、解決したとみなす」
というのがある。どこかの島のはなしではない。
でも、法的・制度的な「禁止」「存廃」は”ある、なし”のやはり二択を迫るから限界はアル