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John 8:32 Then you will know the truth, and the truth will set you free."  複数ブログの過去記事を移管し、管理の委託を受けています/※場合により、語る対象の「ネタバレ」も在ります。ご了承ください 

どうやって「別人」になりきるか?行政・警察はどう「本人」を確認するか?オウム事件は示唆に富む

自分は以前から、この「どうやったら他人に(書類上)なり済ませるか」については、いろいろと興味を持っていた。それは「ITビッグブラザー論」への興味とかなり表裏一体であって…巨大な行政権力が、民間企業が、膨大な情報を整理記録することで個人を把握するのになんとなく、こっちも対抗したいなーというかね。こちらも一泡吹かせたら面白かろうと思いましてね。
また推理小説ずきやスパイ小説好きなら・・・つまり男子の87%ぐらいが・・・「自分が官憲から追われ、逃亡生活に入ったら?」というときの手段は想像していると思う。「自分が試合に出るときの入場テーマを既に選んでいる男子」とだいたい確率は同じだ(俺調べ)。
そういう点でも、「いかに身分を偽るか?」は重要なテーマになってくるのである。


昨日、2012年6月9日の朝日新聞には社会面トップ記事でオウムの高橋克也菊地直子容疑者の潜伏を解説する
「ニセ夫婦 こう化けた」という記事が載っている。朝日は記事デジタル化によって、記事のネット掲載が非常に少なくなっているのでそのまま紹介できないが、要約しよう。

【逃亡オウム信者はこうやって他人に成りすました】
・1999年6月、2人はラブホテルなどを転々としながら、東京やさいたまの区役所、市役所に通い詰めた。
 
・窓口近くの記入台に立ち、隣で記入する人の書類を盗み見しては、使命や住所、生年月日を次々書き取っていた。
 
・それぞれ自分と同世代の人を選び、この情報を持ち帰った。
  
・二人の情報の中に同じ「櫻井」姓があった。再び2人で役所に行き、それぞれの櫻井に成りすまし住民票を入手した。
 
・住民票を入手後はアパートに入居、信用金庫の口座を開設。
 
・この手口は林泰男も使った。

幸か不幸か、この手はもう使えない?

これも朝日新聞より。
・「総務省によると2008年に改正があり、住民票申請には運転免許証などによる本人確認が求められるようになった。ただし、顔写真つきの証明書が必要か、などは自治体ごとの違いがある」。


まあ、そういうことでしょうなあ。結局は「顔写真つきの公的証明書」を手続きごとに求められれば、それではい、おしまい。7割、8割のニセ身分は、この手続きの前に立ち止まり、「逃亡者」の住む世界はせばまっていくのであった。

これは何度か書いた「よきビッグブラザー」というやつでもある。お上が下々の庶民の行動、そして常に「お前はXXXに住む○○○というものであるカ?」ということを…これまたお上の言葉で言えば”吟味”することで、逃亡オウム犯の活動は狭められる。庶民の生活は守られる(?)。
名も無き個々人の「秘密」は広く薄く削ることで、公共の安全は高まる・・・
ゆえに、2008年に住民基本台帳法が改正され、住民票申請に顔写真つき証明書、運転免許証が必要になったことは<進歩>なのかもしれない・・・

ということに納得する人はいますか?
自分は正直、感情的には納得いきません。東京都が導入した「マンガ喫茶の会員になるのも身分証明書が必要」なんてのもイヤーな気分になります。でも総務省の官僚や東京都職員から「これによって社会の安全度は高まったでしょ?」と議論をふっかけられたら、たぶんその議論には必ず負けると思う。
だからこそ重っくるしいんですわ。

この項、http://d.hatena.ne.jp/gryphon/20120610/p3につづく。