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John 8:32 Then you will know the truth, and the truth will set you free."  複数ブログの過去記事を移管し、管理の委託を受けています/※場合により、語る対象の「ネタバレ」も在ります。ご了承ください 

偉大なアジア主義者・宮崎滔天は地元での評価が低い。その理由は…

現在の大河ドラマは不評と低視聴率にあえいでいるようだが、そうするとひところの阪神タイガースファンが5月ごろから来季構想を語っていたように(笑)「今後の大河ドラマ」への夢や希望もよく語られる。
自分的に希望するもののひとつが、宮崎滔天アジア主義者たちの物語だ。
ウィキペディアの「宮崎滔天」

宮崎 滔天(みやざき とうてん、明治3年12月3日(1871年1月23日) - 大正11年(1922年)12月6日)は、日本で孫文達を支援して、辛亥革命を支えた革命家、および浪曲家である。浪曲家としての名前は桃中軒 牛右衛門(とうちゅうけん うしえもん)。

ウィキペディアは意外なほどよくまとまっているが、惜しむべし彼の人柄を語るようなわき道、枝葉のエピソードが無い(あると煩いだけだ、という主張も分かるが)。機会があれば微力ながら、継ぎ足していきたい。
大河ドラマにもしなったら、孫文金玉均ラス・ビハリ・ボース、康有為など、とんでもなく国際色豊かなものになるなあ。
ただ、宮崎滔天アジア主義者として最も誠実、真摯だったからこそ、逆にそのアジア主義の限界と矛盾を映し出す存在でもあった。
もし大河ドラマになったら、その部分を・・・って、大河になる確率は限りなく低いのでもういいや(笑) 

 
さて、これは・・・いつだったかな。
あるテーマを挙げて、この人の師匠がこれ、その人の息子がこれ・・・と友達の輪方式で話題をつなげていく「ニッポン人・脈・記」という企画記事があり、辛亥革命中華民国建国の100年がひところ話題になった時「孫文がいた」というテーマがあった。
そこで宮崎滔天が紹介されていたのだが、
そこでは・・・
「故郷の荒尾では最近までそれほど知られてはいなかった」「『郷土の偉人』としてたたえられてきたわけではなかった」という事実が紹介されている。

えっ?この痛快無比の快男児が、なぜに???
やはりアジア主義の二面性や、民権論と国権論の相克などが影響しているのか・・・と思って記事を読んでみると。

「借金の証文を持った人がいて、わだかまりが残っているのです」と荒尾市長の前畑淳治(66)は話す。

ごもっともすぎて、泣けてくるわ(笑)!!!


国内外の革命運動に奔走し、ずっと貧乏ぐらしの滔天、当然借金しないわけがないわな。今となってはその証文を、「開運!なんでも鑑定団」に出品するぐらいしか使い道もなさそうだし。

孫文は・・・滔天が住む荒尾まで足を延ばした。
 滔天の妻、槌子は刺し身や煮魚、すしで歓待した。
 滔天は槌子に言った。
 「革命のための金はできるが、妻子を養う金はできない。お前はお前でどうにかしておけ」。槌子と11年間暮らした孫の蕗苳(ふき、86)は、その言葉から「革命家の生活」の厳しさを知った。
 実際、滔天は槌子や龍介ら3人の子供の暮らしを顧みなかった。「祖母が偉かったのは、革命家の妻として、自らも革命を担う気だったのです」と蕗苳は言う

ブラック企業ならぬブラック革命党。・・・あれ、なんかかっこいい名前になった。

上の「ニッポン人脈記」

朝日新聞は有料記事化しているが、たいへんありがたいことに「蓬莱徐福協会」というところが、貴重な資料だとして許可を得てシリーズを転載している。
レイアウトが若干読みにくいが、ご一読ありたい。
http://www.jofuku.jp/ニッポン人脈記孫文がいた/

宮崎滔天の漫画

バロン吉元の「柔侠伝」にちょっとだけ出てくる。

柔侠伝 上巻

柔侠伝 上巻

柔侠伝 下巻

柔侠伝 下巻

また安彦良和の「王道の狗」でも最後のほうに登場するのだが、何しろ天才アニメーターである一方で、天下に隠れも無き「尻すぼみ漫画家」である安彦氏。その尻すぼみ長編漫画の最後に出てきたわけだから、実に扱われ方がテキトーでありました(笑)。
王道の狗 (1) (JETS COMICS (4221))

王道の狗 (1) (JETS COMICS (4221))

今は文庫にもなっている。


逆に言うと、まだ宮崎滔天を本格的に扱った漫画は・・・いやフィクション全体でも・・・ないのかもしれない(あったら教えてください)。
むしろ、宮崎滔天の叔父だったか、兄だったか・・・たしか年の離れた兄かな?
宮崎八郎のほうが、司馬遼太郎西郷隆盛大久保利通西南戦争を描いた「翔ぶが如く」に準主役級でいい場面をいろいろもらって登場しているわ。

新装版 翔ぶが如く (1) (文春文庫)

新装版 翔ぶが如く (1) (文春文庫)

天下朦朧として皆(ことごと)く夢魂
危言ひとり乾坤を貫かんとす
誰が知らん凄月悲風の底
泣いて読む盧騒(ルソー)の民約論

へー・・・大河ドラマでは宮崎の遺族が登場に反対し、それに配慮して「矢崎八郎太」という架空の人物になったらしい(ソース:ニコ動書き込み)。
D

宮崎滔天は自伝「三十三年之夢」を書いている

三十三年の夢 (岩波文庫)

三十三年の夢 (岩波文庫)

途中まで読んで、えらくおもしろかった記憶あり。現在紛失中。
その途中までのところで一番印象に残っている【※といいつつ、後で見ても発見できなかったので、北一輝支那革命外史」の記述かもしれない!注意】のは、若き滔天がさいしょに尋ねた主義者の団体には、拠点の看板に大きく
「聞誅一夫紂矣,未聞弒君也」(一夫紂を誅するを聞けるも、未だ君を弑せるを聞かざるなり)
と書かれていたというくだり。どういう意味かは
http://www.araki-labo.jp/nont07.htm
http://www5f.biglobe.ne.jp/~mind/knowledge/classic/moushi002.html
にあるとおり。
実にこの言葉は、アメリカ独立やフランス大革命に先立つ、アジア3000年の革命原理であった。

浪曲の歌詞もあったはずだが見つからない。後日の課題だ。

松岡正剛氏のこの本の書評も、非常に興味深い。
http://www.isis.ne.jp/mnn/senya/senya1168.html

コメント欄より(2017)

紅天 2017/04/04 13:56
「聞誅一夫紂矣,未聞弒君也」と書いた額を掲げたのは、滔天自身がつくった「革命評論社」の床の間ですね。途中から北一輝も参加しました。社会主義者・吉川守圀の「荊逆星霜史 : 日本社会主義運動側面史」に出てくるエピソードです。こちらで読めますね。164P。http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1440683



gryphon 2017/04/05 01:54
ありがとうございます 書いてから5年、まさかわかるとは思っていませんでした。
コメント欄をそのまま記事に入れています(このほうが検索しやすくなるので)
ただこれで、事実としては確定できましたが、私はその本を読んでおらず、(解説書などで読んでいたのでなければ)、この本はこの本として別に「三十三年之夢」か「支那革命外史」のどちらか「にも」記述があるかもしれない、という点は可能性だけは残しておきます。