昨日のtwitterで「歴史用語で、例えば教科書上で変化しているものがあるよね」という話を読んだ。じぶんもいっちょかみさせてもらった。
nakkhtak なくたく
(略)そもそも「ラマ教」って歴史用語なんでしょうか。「ラマ教」を無批判に使うチベット研究者はいないと思いますが……。
jyonaha 與那覇潤(Yonaha Jun)
※この本の著者
- 作者: 與那覇潤
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 2011/11/19
- メディア: 単行本
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(略)「ラマ教」は言い方として、要は「マホメット教」的な古さがあるということですね。むん…ただ同書の想定読者はモンゴルとチベットが頭の中でつながりにくいと思うので、その点歴史用語としての「ラマ教」の方が、「パスパ文字」とか思い出すかな…と。
nakkhtak なくたく
@jyonaha 手元の『改訂版詳説世界史研究』(山川出版社,2008)では,「チベット仏教(ラマ教)」(120頁)とあり,索引では「ラマ教→チベット仏教」になってますね。高校レヴェルではまだこの言葉が使われているのかもしれません。あー,この本では,転生僧のことを未だに「活仏」(257頁)って書いてら。まあ,中国研究者でもそう表記するひとがあとをたたないから仕方ないのかもしれないけれど,チベット研究者が「チベット仏教にそんな概念ねえよ」って言ってるのに……
- 作者: 木下康彦,吉田寅,木村靖二
- 出版社/メーカー: 山川出版社
- 発売日: 2008/03/01
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jyonaha 與那覇潤(Yonaha Jun)
@nakkhtak ふむむ、ではたぶん教科書で刷り込まれて、ただ当時は「ラマ教(チベット仏教)」ぽかったのが、今は「チベット仏教(ラマ教)」になり、やがて「チベット仏教」のみになる過渡期、という感じですかね。ちなみに、自分の世代は「セポイの乱」が「インド大反乱」になる過渡期でした
ここでぼくがいっちょかみ
gryphonjapan
名称に関連して/呉智英の新著「つぎはぎ仏教論」(※つぎはぎ仏教入門、でした)では現在上座部仏教とよばれる事が多い小乗仏教を「そもそも小さい船(小乗)が大きな船(大乗)に劣るというのが大乗側の価値観だ。大乗・小乗のほうが対比的で分かりやすいので小乗仏教とこの本では呼ぶ」と。
- 作者: 呉智英
- 出版社/メーカー: 筑摩書房
- 発売日: 2011/07/23
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歴史用語で主要な呼び名が変わったのは「東学党の乱」→「甲午農民戦争」などか。「マフディーの乱」をアングロ・スーダン戦争とかと呼んでいる教科書はもうあるのだろうか。
自分が受験生だった頃の大物は「インド大反乱」と「アジア・太平洋戦争」。小島毅先生は「足利義満の勘合貿易」を「遣明使」と呼ぶべきとされてますが、これが通るかは歴史観の大きな分岐点ですね。
逆に、教科書から「消えたら」大きな歴史観の転換になるのが、「ウェストファリア体制」と「産業革命」。拙著は先物買いをして、それぞれ「いわゆる」「かの有名な」などと添えて so-called 感を出しておきましたがw、さてどうなるか…
gryphonjapan
ふむ面白アイデアなのでメモ。 QT @jyonaha 小島毅先生は「足利義満の勘合貿易」を「遣明使」と呼ぶべきとされてます
jyonaha 與那覇潤(Yonaha Jun)
一昨年まで基礎演習で講読していた、光文社新書の『足利義満 消された日本国王』に出てきます。もしよろしければ。
- 作者: 小島毅
- 出版社/メーカー: 光文社
- 発売日: 2008/02/15
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足利義満。
この男が日本史にいてくれたお陰で、日本で「王」を考えるときの、有効な補助線が何本も引けた。同時に「冊封体制」「宗主国・属国」「アジア的秩序」への補助線も引ける。
同時に、当時はそんな呼び方はまったく無かったであろう「足利義満の『遣明使』」という概念は、ちょっと今自分が興味をもって調べて、考えている「『見なし』の権利」「定義の自由」についても関係してきておもしろそうだ。
※『見なしの権利』についての参考リンク
宗教における「見なしの自由」を擁護する…彼の為でなく、我が為でもなく。
http://d.hatena.ne.jp/gryphon/20111109/p3