INVISIBLE Dojo. ーQUIET & COLORFUL PLACE-

John 8:32 Then you will know the truth, and the truth will set you free."  複数ブログの過去記事を移管し、管理の委託を受けています/※場合により、語る対象の「ネタバレ」も在ります。ご了承ください 

立川談志、逝く

すでに訃報記事はあちこちにあるから省略させてもらおう。
(この画像は下で紹介している漫画版「ファイティング寿限無」です)
70年代、まだ落語家がお笑いのメーンストリームにいて、ふつうに「テレビの人気者」、選挙で参院議員にまでなれた時代のことは直接は知らない。
笑点の企画者・初代司会者だったという記憶も無い(自分は三波伸介司会から記憶している)。
落語協会の分裂や立川流家元になるまでの、落語界の大騒動も知らない。


これらすべては、後からだいぶ虚実取り混ざった「伝説」として知ったものだ。その後も、名前を看板にした番組「ダダダ談志ダッ!!」なんてのも見ていたけど、立川志か吾の漫画「風とマンダラ」、高田文夫のエッセイ、立川談春の名著「赤めだか」(後述)などを通じて、かの人の「伝説」を間接的に聞くのが面白かったような気がする。


ただ、自分の中で強烈に覚えていることがある。
90年代に自身の持ち歌のメドレーソングがヒット、紅白出場もあって再ブレイクした植木等トーク番組「植木等デラックス」に出演した立川談志は「落語家は徹底的にシャレをやり続けなければいけない」といった文脈で、戦後期のある破天荒な落語家を紹介した。

伊勢丹デパートの入り口に九官鳥が飼われてたでしょ?あれに『三越三越』って教えたのあいつなんだ」
 
柳家金悟楼と歩いてたらチンピラに絡まれたんで、そいつだけパッと逃げちゃった。金悟楼はしょうがないからハッタリで諸肌脱いで『てめえらこの”爆弾の金公”をしらねえか!』ってやったらチンピラがビビッて逃げようとしたのね。そしたらそいつ、わざわざ戻ってきて『ウソウソウソ、こいつ落語家だ』って。…で、二人ともやられちゃった」

とまあ、文章にすると実にたわいもない話。
だが、本当に不思議なことに、驚くべきことに、これが談志があの語り口で語ると、本当に息ができないほどの爆笑トークになるんだ!!
youtubeに残ってることはないと思うけど、
ほんとに不思議。

さらにその後、「昭和お笑い芸人のギャグ100連発」みたいな番組で、談志師匠の30秒程度のマクラの部分が放送されていたのね。

ここで語られたのは、たしか筒井康隆も一番好きと言っていた江戸小噺で

「真冬に布団で寝ていて、小便がしたくなった男が雨戸をあけて外に出ようとしたら、雨戸が凍って開かない。仕方ないので雨戸に小便をかけて氷を溶かし、やっと外に出られたが…することがない」

という話。これだけ。たしかに面白いけど、俺はこの内容を100も200も承知だった。
だが・・・さっきの繰り返しだが、談志が喋るとなぜこんなに面白いのだ、という、息ができない爆笑に追い込まれた。落語家の魔法に触れた思いだった。
これは落語映像のマクラだから、だれかはどこかで今後も目にする機会があるでしょう。


今回の訃報で、ネットでも頻繁に出てきた「談志が、死んだ」という回文は、今回みんなが個人的に思いついたものもあるだろうが、元はライバル”星の王子様”こと三遊亭円楽がネタにしていたもの。



だが、実際の訃報に接してみると、これをひっくり返して…死んでも談志の魅力、すごさはずっと語られ続けるだろう、との意味を込めて
「死んだが、談志。」

だと言いたい。

訃報に際し、読んで欲しい本

談志本人の著作やCDなどは意識的に抜いた。

赤めだか

赤めだか

忠臣蔵は四十七士が敵討ちを果たした。でもな、赤穂藩には300人の家来がいたんだぞ。そいつらみんな逃げちゃったんだ・・・落語はね、この逃げちゃった奴らが主人公なんだ…それを認めてやるのが落語だ。」

■この本を連続ドラマ化してはいかがか。立川談春「赤めだか」
http://d.hatena.ne.jp/gryphon/20100129/p3

雨ン中の、らくだ

雨ン中の、らくだ

御乱心―落語協会分裂と、円生とその弟子たち

御乱心―落語協会分裂と、円生とその弟子たち

全身落語家読本 (新潮選書)

全身落語家読本 (新潮選書)

この本は、発売をしらなかった!今年刊行されたらしい

落語進化論 (新潮選書)

落語進化論 (新潮選書)

それぞれの噺の本質を捉え、落語を進化させ続けること。その上で「江戸の風」を吹かせること。これが、著者が自らにも課した「現代の名人」に求められる条件だ。声質、語りの速度、所作といった身体論から、「抜け雀」「品川心中」「死神」等の新たな落ちの創造に至るまでを、全身落語家が熱く語る。進化の具体例として、志らく版「鉄拐」一席を収録。


ファイティング寿限無 (ちくま文庫)

ファイティング寿限無 (ちくま文庫)

立川談四楼「ファイティング寿限無」がまさかの漫画化だ
http://d.hatena.ne.jp/gryphon/20110309/p3
■漫画化「ファイティング寿限無」が1巻発売
http://d.hatena.ne.jp/gryphon/20110829/p2


風とマンダラ 1 (モーニングワイドコミックス)

風とマンダラ 1 (モーニングワイドコミックス)

風とマンダラ 3 (モーニングワイドコミックス)

風とマンダラ 3 (モーニングワイドコミックス)

上司は読むな、部下は読め!
漫画界では一応先生。落語界では最下層。日々是天国と地獄を生きる男の、汗と涙のドキュメント。不景気を呪う前に読め!出世をあきらめる前に読め!リストラ世代必読の、これぞ究極のビジネスバイブル! 滅私奉公は死なず。落語界の伝統と厳しい掟の下に、ただひたすら耐える著者たち。それが前座である。年中無休にしてほとんど無給。今日も明日も保証のない、過酷で無情な現実だけが彼のすべてだ!

風とマンダラ 4 (モーニングワイドコミックス)

風とマンダラ 4 (モーニングワイドコミックス)

てれびのスキマ

(1)「てれびのスキマ」に行く
http://d.hatena.ne.jp/LittleBoy/
(2)同ブログでは左側に検索窓がある。そこに「談志」と入力、検索する。
その数例

甲本ヒロトによる立川談志
http://d.hatena.ne.jp/LittleBoy/20070902#p1
■談志の言葉
http://d.hatena.ne.jp/LittleBoy/20081007#p1
立川談志が明かす「笑点」誕生の裏側
http://d.hatena.ne.jp/LittleBoy/20081115#p1

本日午前、TBSラジオ毒蝮三太夫は、立川談志について何を語るか?(午前9時から)

彼の公式HP見て!!!「いろいろコメントを求められているけど、24日午前9時からのTBSラジオで語ります。」
http://www.mamuchan.com/