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John 8:32 Then you will know the truth, and the truth will set you free."  複数ブログの過去記事を移管し、管理の委託を受けています 

安田峰俊「独裁者の教養」作者紹介がおもしろい。ネットウォッチ、いまだ市民権を得ず

ちょうど偶然、本日、「独裁者の教養」を書店で入手しました。

独裁者の教養 (星海社新書)

独裁者の教養 (星海社新書)

それが、上記エントリのK-1話とつながるとは、まったく予想外であった。
実は安田峰俊氏の名前、一回このブログに登場していたのである。
上と同じで、「中国の動向、民衆意識をもっとインターネットの書き込みから調査するべきだ!!」というエントリであった。
表題は福島香織氏だったが、その代表例、先駆者として、g2という雑誌に書かれた安田氏のルポを紹介していた。

http://d.hatena.ne.jp/gryphon/20110302/p2
講談社の「g2」にも「中国のインターネット事情」をルポというか、紹介する名ノンフィクションが最近載っていた。

http://g2.kodansha.co.jp/177/232/233/234.html
「迷路人」が現地取材敢行
中国「禁断のメディア」紀行 月間アクセス数40万の人気ブロガー
安田峰俊 (ノンフィクションライター)

g2 ( ジーツー ) vol.4 (講談社MOOK)

g2 ( ジーツー ) vol.4 (講談社MOOK)

申し訳ない、最初「独裁者の教養」という本がおもしろそうだ、と思ったときには、このルポのことは完全に失念していたのです(笑)

実際、今回の本では「はじめに」の中で、実際の現地調査や文献調査などを駆使し、これまでのルポと一線を画した方法論をとっていることを話している。
だから、わたしが過去の氏のルポを失念していたのも無理からぬことなのだが、そういうふうな新しい方法論に踏み込む中で、ちょっとポジティブならぬきっかけがあったようなのだ。
それはこの新書の裏面に書かれた作者のユニークな略歴に書かれている。

1982年滋賀県生まれ。(略)…一般企業に就職するも、会社員の「空気」に馴染めず半年で退職。仕事を転々としつつも、中国のネット掲示板2ちゃんねる風の日本語に翻訳・編集するブログを運営していたところ、これが『中国人の本音』なんじゃないかと講談社の編集者に声をかけられ28歳で処女作を刊行。

ここまでは、少なくとも物書きとしては順風満帆のサクセス・ストーリーである。だが、ここらが重要。

デビュー後、同業者各位から「ろくに取材もせずにネットの書き込みをパクっただけで本が書ける。中国ネットウォッチャー様(笑)って羨ましいよね」とイヤミを言われ続けるのが嫌になり、1年間の取材と文献渉猟をへて本書を書き下ろした。

あはははは、と乾いた笑いが。
もちろんちょっとした誇張や謙遜もあるんだと思うが、にしてもそんなイヤミ、陰口が飛び交うのがノンフィクションジャーナリズム(笑)の世界だとしたら、それも困ったものだ。
取材も現場も重要だが、ある意味ノンフィクションとかは狩猟と同じで、イノシシ一頭を仕留めるために山野をかけ廻り、弓と短刀で正々堂々、手負いの狂える暴れイノシシを仕留めようと、朝、落とし穴を見に行ったら「ああ、一頭おっこちてるわ」であろうと、獲れる肉は同じなのだというのに。
いや勿論現場取材でないとできないこと、分からないものはある。しかしその時間を駆使して500箇所のサイトと掲示板を読み続けないと分からないものもあるのだ。
ましてや編集(取捨選択)・翻訳においておや。
中国ネットウォッチは羨ましいというイヤミは「騎馬突撃こそ戦場の誉れ、機関銃など卑怯なり」のたぐいでしかない、と思うのだがね。
まあ、そういうふうに「簡単にできる」となめてかかることで間口が広まる、ということもあるかと思うのだがね。
どっちにしても、まだ「中国(語)ネットウォッチャー」は絶対数が足りないのだよ。で、今後たくさん生まれる中に、格闘技オタクの属性も備えた人が出現してくれるといいのだが(笑)

というところで、安田氏のいまだ「本拠地」でもあるブログを紹介しておきましょう。これも申し訳ないながら私は未読のままだったので、これからはてなアンテナに加えます。

大陸浪人のススメ 〜迷宮旅社別館〜
中国語の大規模掲示板の書き込みを2ch風に翻訳。。元ネタは百度が多し。 (將華語有人氣的BBS留言用2ch的風格來翻譯)
http://blog.goo.ne.jp/dongyingwenren

この本出版に当たっての、著者のロングインタビュー。
http://kinbricksnow.com/archives/51751258.html

ちなみに「独裁者の教養」本編の内容は

まだ50ページ(最初の「スターリン」冒頭部分)までしか読んでません(笑)。それで紹介を書き始めるほど裏表紙の作者紹介が衝撃的だったのでね。
ただ、「現場を歩かないネットウォッチ野郎」といった罵倒への反発もあって安田氏が選んだ「独裁の現場」は、中国とミャンマーの国境地帯で、アヘンと結びついた軍閥が支配し、実質的に「独裁国家」化している「ワ州国」だった。極端だなオイ!
冒頭の記述では、潜入ルートにしようとした隣接の中国の村で「怪しい日本人」として中国の当局にマークされ、失敗に終わりそう…なのだが、そこでの「密偵」的な人(氏は「現代の阿Q」と呼んでいる)、国境を警備する末端の軍人とのやりとりが、期せずして「独裁」の断面をあぶりだしている、ような気がした。
同書の全体的評価は、そういうわけでまた読み終えてから、です。