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John 8:32 Then you will know the truth, and the truth will set you free."  複数ブログの過去記事を移管し、管理の委託を受けています/※場合により、語る対象の「ネタバレ」も在ります。ご了承ください 

ゆうきまさみは「SF的状況の中での国家(軍隊・官僚組織)」を描くのがうまいなぁ(鉄腕バーディー)

鉄腕バーディー、連載誌が変わったりとかなんかに対応し、ストーリーを無理やり区切ってそこからの独立性を持たせたこともあって、はっきり言って最初からのストーリー展開忘れている(笑)
だから傑作・失敗作の評価すらできないのだが、最近宇宙人と、宇宙人の残した、人間をモンスター化させる特殊薬品(それを地上の企業・宗教団体が再生産している)に対応するために自衛体内の特殊部隊が立ち上がった。
これはゼロ年代のSFヒーローものではどうしても避けて通れないところで、「怪人が大暴れでビルを、ダムを破壊!そこにやってきた正義のヒーロー!」を、それなりにリアリティ込みで描こうとすると「・・・その事件に警察はどうしたの?軍隊はどうしたの?報道はされないの?」というツッコミは当然入る。かつての東映TVならそのへんは描かないのがお約束だが、やっぱりまじめにやるとそこを逃げるわけにはいかなんだ。
それが、ヒーローが公務員なんて悲しい、とかいう別種のツッコミを産むのはさておいて。


ゆうきまさみは、なにげにそういう扱いがうまいなあと、機動警察パトレイバー「廃棄物13号」篇から思っていたけど、今回の「鉄腕バーディ」に登場した組織を見てますますその思いを深くした。
「司令」に当たる人は、防衛の実務とは別の官僚だが、独自の使命感と憂国思想をもち、その部隊に日本の未来が掛かっていると悲壮な決意をしている。
組織はそれぞれ「二階級特進」をしているが、部内だけで通用するような特殊な階級だったりする。
「君たちの存在を公に出来ないのは残念だが、それでも誇りをもってほしい!」とかアジる司令。
だが内部の隊員は、それぞれけっこう能天気と言うか、自分のプロフェッショナルさへの誇りが、かすかに独立性を生んでいる・・・といった微妙な関係性が、ありそうでもありSF的でもあり、とにかく凝っているんだよね。(上の描写は記憶によるのでちょっとずれているかもしれない)

最新号も面白くて、モンスター化した人間たちを追うため、その特殊部隊が初の実戦に赴こうとすると、釣り人に扮した情報収集担当?が声をかける。「包囲網、ゆるゆるだったぞ。俺たちの情報があれば。ここまでやつらが来ることは無いはずだがな…」と、「特殊部隊のデビューを飾るために、わざとモンスターを市街地で暴れさせた」という可能性を示唆します。


SF的なシチュエーションの中で、それに対峙した国家(軍隊や警察)の組織やリアクションを描き、リアリティーとかっこよさを併せ持った描写をできるのはだれか?という視点で見ると、漫画家のランキングは面白そうですね。
最高傑作は岩明均の「寄生獣」の後半部分でしょうけど。

寄生獣(完全版)(7) (KCデラックス)

寄生獣(完全版)(7) (KCデラックス)