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John 8:32 Then you will know the truth, and the truth will set you free."  複数ブログの過去記事を移管し、管理の委託を受けています/※場合により、語る対象の「ネタバレ」も在ります。ご了承ください 

厚生省元幹部・家族連続殺害事件。いつ犯罪を「テロ」と見なすのが正しい態度なのか。

http://mainichi.jp/select/seiji/news/20081120ddm002040107000c.html

元厚生次官宅・連続襲撃:首相の言葉、危機感薄く
 ◇「単なる傷害か何とかって決まってない」


 麻生太郎首相は19日、「連続テロ」の可能性がある元厚生事務次官宅連続襲撃事件を強く非難するメッセージを出さなかった。閣僚や野党幹部が犯行を非難するなかで、二度の取材に応じた首相は「今の段階では単なる傷害か何とかって決まっていない」などと述べるにとどめた。野党などからは首相の「危機意識の欠如」を指摘する声も出ている。

 首相への記者団の取材は通常、平日の昼と夕方に行われる。事件の報告を受けた首相は19日午前1時過ぎ、秘書官を通じて「19日朝に取材に応じる」と報道各社に伝えた。異例の時間設定に、官邸関係者は「早い段階で犯行を非難するつもりだろう」と推測した。

 だが首相は同日朝、「いずれにしても痛ましい事件」などと述べるにとどまった。同日夕も「二つの関係が明確になった段階において、これはテロとみなして断固たる処置をとる。ただ、今の段階では単なる傷害か何とかって決まっていないんだろ。よく知らねえけど」などと語っただけだった。

 政府高官は「もっと強いメッセージを出したいが、それなら挑戦しようという輩(やから)も出てくる」と首相の対応を擁護するが、別の高官は「こういう時は、トップが明確に暴力を否定した方がいい」と首相の対応を疑問視する。社民党福島瑞穂党首も記者会見で「断固許さないという憤りが(首相の)コメントから感じられない」と批判した。

 小泉純一郎首相(当時)の靖国神社参拝を批判した自民党加藤紘一元幹事長の自宅が06年8月、右翼関係者に放火された際は、小泉氏が2週間にわたって事件に関し沈黙した例がある。【白戸圭一】

毎日新聞 2008年11月20日 東京朝刊


この「本舗」読者ならおなじみの、前書いたテーマに直結しているよね。

創価学会施設で爆発・・・卑劣な反宗教・政治テロ(だったとしたら)許されない
http://d.hatena.ne.jp/gryphon/20081014#p9
創価学会日中友好協会へのテロを許さない!と、いち早くテロと決め付けて言っておく
http://d.hatena.ne.jp/gryphon/20081015#p7
■テロ事件に口をつぐみ、沈黙続ける政治家、新聞、知識人、ブロガーたち
http://d.hatena.ne.jp/gryphon/20081107#p4

と、いうリンクを見ていただけば議論の筋は分かるだろう。上の事件一つとっても「いち早くテロと断定するのが正しく、慎重だと感受性が鈍い」という話だったら、創価学会日中友好協会テロ事件に関しては、本当に俺一人が全メディアと全ブログに説教できる(笑)


ちなみに、毎日新聞が最後に取り上げた「小泉首相は2週間にわたって沈黙した」という話について、もうみんな記憶が薄れているので一つ補足しておきます。
この時、犯人は放火と共に割腹自殺をはかり、事件直後は入院していて取り調べのスピードが普通より遅かった。
逮捕時点でも動機が政治的・思想的なものかについては「取調べ中」だった。

http://www.yomiuri.co.jp/feature/fe6700/news/20060829i409.htm

山形県鶴岡市加藤紘一・元自民党幹事長(67)の実家と事務所が今月15日、全焼した火災で、鶴岡署は(※2006年8月)29日、現場で腹を切って倒れていた右翼団体大日本同胞社」の構成員堀米正広容疑者(65)(東京都新宿区歌舞伎町)を現住建造物等放火と住居侵入の容疑で逮捕した。

 調べに対し、堀米容疑者は「家の中に誰もいないことを確認し、玄関から入った。自分一人でやった」と供述し、容疑を大筋で認めている。腹と手首の傷についても「自分で切った」と話しているという。

 同署は、加藤氏が小泉首相靖国神社参拝を批判していたことから、思想的、政治的背景が動機の可能性もあるとみて追及している。県警は18日、大日本同胞社の事務所などを捜索している。

もともと事件発生は8月15日、逮捕が同29日。丸々半月近く、逮捕と発生にはずれがあったのだ。

小泉首相が発言をしたのは、逮捕1日前の28日だった。
この事件発生と逮捕、取調べの関係を覚えてないとちょっとミスリードかも。


今回、麻生首相は、「テロかどうかは(まだ)はっきりしない」と明言しているから、まあ論点は明確だな。
けっして毎日新聞のような考えが間違いというわけではなくて、少しでも疑わしい場合は「テロだったら」という仮定に立って批判するのが正しいあり方、というのも一貫させるなら、ひとつの考え方だ。
あと、殺された、「結果」によって動機は関係なくテロになる、という見方。伊藤一長市長に関してそういう主張が一部あった。

推理合戦が過熱ぎみ

ちなみに昨日見てたワイドショーでは
元警察官と佐々淳行らが「何度も刺すような殺し方を見ると、個人的怨恨の線もあるのでは?」「政治的信念・ゆがんだ正義感ならそろそろ犯行声明が出ると思うんだが、まだ出ていないのはちょっと変だ」と話していた。
今日のワイドショーでは「元次官を2人殺したのだからそれが政治宣言となるので声明は不要なのだ」と。
別の人は「怨恨殺人を、捜査かく乱のためにもう一人の元次官を殺した」・・・わー、黒木昭雄の推理だよ!!
マニアックな単独犯 が大谷昭宏推理。


あとひとつ言うべきこと。「厚生省批判が事件を生んだ」との声が出たり、警戒したり。

私が読んだのは昨日20日付の東京新聞こちら特報部」だった。
要旨は「厚生省は批判すべきことがあったから批判したのであって、それがテロ(※の疑いのある事件)を生んだという批判は筋違い。批判を緩めることは無い」

当たり前の正論だ。そのとおりだ。

だから俺は言ってたんだよ。
鈴木邦男らが「映画『靖国』の上映中止騒動は、それを報じて批判した週刊新潮に責任がある」という話をしはじめた時、『そんな論法は間違いだ』とね。
http://d.hatena.ne.jp/gryphon/20061228#p3
http://d.hatena.ne.jp/gryphon/20080403#p4

のちに鈴木氏は、公式にこの意見を撤回した。
http://d.hatena.ne.jp/gryphon/20080417#p4

加藤紘一氏も、直接の被害者だから多少の極論を言うのは感情面で仕方ないにしても「テロルの犯人は小林よしのり系が作り出した”風潮”」とかの議論が通じるなら、(もし今回の連続殺人が政治的テロなら)「厚生省批判の風潮が、テロルの真犯人」とかいう話になってしまう。
それでいいのか、だ。