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John 8:32 Then you will know the truth, and the truth will set you free."  複数ブログの過去記事を移管し、管理の委託を受けています/※場合により、語る対象の「ネタバレ」も在ります。ご了承ください 

魚住昭「野中広務 差別と権力」は結局のところどこまで信頼できるのか

上の後藤組の記述から、ちょっとその話が載っている同書のことに話を進める。

野中広務 差別と権力 (講談社文庫)

野中広務 差別と権力 (講談社文庫)

この本は私「書評 十番勝負」のひとつとして取り上げ、その後も折に触れて紹介している。
http://d.hatena.ne.jp/gryphon/20050515#p1

そういえば、この前書き忘れちゃったんだが、週刊現代で魚住氏は複数筆者のリレー形式で書いている「新聞の通信簿」で、例の「麻生太郎の部落差別(野中広務)発言」に自己言及し、「私は(「差別と権力」の中で)この問題を取り上げた。だが他の新聞はどこも取り上げない。よって0点。東京新聞は社外執筆者だが、山口二郎氏がコラムで取り上げた。よって80点」という、極端な形で採点していた(笑)。

だが、この時期ふたたび魚住氏が自己言及し、取り上げたのは重要なことで、そのときに伝えたかったのだが、その前にネットに繋げない時期もあり、書くことが多くてつい忘れてしまったのは痛恨だ。

ただ、ほんの少し前に書いたが

■[時事][読書][政治]”麻生太郎の部落差別”説に「そんな事実はない」とするジャーナリストも(先週の週刊朝日など)
http://d.hatena.ne.jp/gryphon/20080923#p3
(ここからの、別資料ブログへのリンクも重要)

という話があって、ジャーナリスト藤本順一氏が

・・・麻生との後継者争いに敗れて河野グループを離脱したベテラン議員が、麻生憎しででっち上げたものだったことが、後に明らかになっている。

と断言している。藤本氏は麻生首相のブレーン、番記者的存在でもあるらしいが、それでも同じジャーナリストが否定論を週刊朝日週刊文春で堂々字にしているのだから「まずは魚住vs藤本で決着を」という状況だと当方は現在判断している。
この前の週刊現代記事、魚住氏はこの藤本氏にもパンチを繰り出すかと思ったらまったく無視している形だった。


ただ、よく考えてみると、
もともと魚住氏の「差別と権力」という本は、その内容が公に「書かれていることは事実である」と認定された場合には、麻生首相の差別発言も当然倒閣ものの大問題ではあるけれども、そもそも日本社会が上へ下への大騒ぎになるような内容であるんだよね。
ということを、今回、「後藤組」の名前をマスコミで目にして思い出したんだよ。

それが上の、わたしの書評でも引用したこれ。

「野中さんが会いたいというので久しぶりに会ったんだが、とんでもない話だった。『公明』代表の藤井富雄さんは暴力団後藤組の組長と会ったところをビデオに撮られたらしい。そのテープを自民党側に届けた者がいるということなんだが・・・」

藤井は創価学会名誉会長・池田大作の側近といわれる東京都議で、後に野中とともに自公連立の牽引車となる人物である。当時は新進党に合流していない旧公明党参院議員と地方議員を束ねる「公明」代表を務めていた。

その藤井が山口組きっての武闘派として知られる後藤組(本拠・静岡県富士宮市)の組長・後藤忠政と密会している場面を隠し撮りしたビデオテープがあるというのである。 (略)その存在が永田町の一部で密かに取りざたされるようになったのは、これより3カ月前・・・

あの本は話題になったのに、私も含めてよく考えたら「これは本当なのか?本当なら大問題じゃないか」と、実政治・実社会の文脈に即して問題視するムーブメントは無かった。与党のスキャンダルには偽メールでもきっこの日記でもとびつく野党ですらだ。

もともと、ネタ元は平野貞夫氏で、平野氏は自分の本にも書いているということだ(未読)
あほうの佐高信社長と、週刊金曜日で平野氏は対談している。
孫引くと
http://www3.point.ne.jp/www/diary/diary0512.htm

佐高 この本(『公明党創価学会の真実』講談社)で衝撃的なのは、例の密会ビデオの話がありますよね。住専問題で国会が混乱した1996年に、公明党の実力者である藤井富雄都議らが暴力団後藤組の組長と会っている現場を映したビデオを自民党に入手されてしまい、当時の野中広務幹事長代理に脅されたという。前に私が小沢一郎さんと対談したときに、「なぜこのビデオを使わないんだ」と聞いたら、「ほかにもあるから」というようなことを言ってたんですが。…


佐高 仮にビデオが無かったとしても、会談の事実はあったわけだ。なぜなら脅される側は怯えたわけですからね。


平野 そうですね。この問題は、『野中広務 差別と権力』という本を書いたジャーナリストの魚住昭さんがずっと追及していた。彼がビデオについて追及するきっかけというのは、私がつくったのです。情報を提供した。魚住さんの本に後藤組の内情に詳しい人の証言が出てきますが、ビデオの存在は事実で、自民党がそれをネタに創価学会に脅しをかけた結果、自公連立につながったと認めています。つまり今日の自公連立というものは、後藤組という暴力団がきっかけを作ったということです。実に、唖然とする話ですよ。

「ほかにもある?納得できないですね。これを正面切って議論できない理由が、それこそ『他にある』んじゃないんですか」と、ふつうなら小沢にもう少し突っ込むべき場面だろう、といいたくもなるが、まあ、佐高信だから(能力的に)しかたがない。



ただ、それはそれとして、よく考えると
「公明幹部、暴力団と密会 亀井氏らを非難、攻撃示唆?/野中氏らも把握 連立への材料に」
などと新聞記事になり、取材できなくても「講談社から出版された『野中広務 差別と権力』の記述によれば・・・」という書きかたで書ける話。そして、そのまま大政局に突入したっておかしくない。そのはずみで某イベントのひとつや二つはひっくり返るかもしれないが(笑)。

ついでにいうと、それを知っていて取引材料に使い、連立にまで持ち込んだということが事実なら、そもそも郵政解散まで自民党にいた”千手観音”(=誰とでも節操無く手を握る)亀井静香や、いまはハト派の評論家然としてTBSで憂国の熱弁を振るう野中氏も含めて、社会的に抹殺されるだろう。創価学会にも法難の嵐が吹く(笑)ことは想像にかたくない。

また、佐高がいう小沢のヘンな態度も
ひとつの追及対象だ。
この前の石井一議員の質問も、これを取りあげ無かったのかな。


この公明−後藤組をめぐる同書の記述は、実のところ麻生差別発言より何倍もディテール、証言者が多いし、信憑性は個人的には高いと感じるものだが(政治家は自分から疑惑に反論すべし論的に言うと、だれも抗議してないようだ)、主流メディアが黙殺しているのは、共同通信を辞めたフリージャーナリストに大スクープをされた?という気持ちか、それとも「新聞社の総力を挙げて取材したら、やれやれ枯れ尾花だったか」という話か?

だいたい、佐高信もだ。「サンデーモーニング」の中でこの本を引用してしゃべればいいじゃないか(笑)なんども本からの引用をそのまま喋っているんだから。あと、大学ゼミの同窓・岸井成格と対談本作ったときにその話題を取り上げればいいのに。


いずれにせよ、魚住昭野中広務 差別と権力」は、信憑性を検証することがそれ自体、ひとつの爆弾になっているということを指摘、再度ご紹介したというわけだ。

おまけ

あとひとつ、「この本が丸ごと真実なら・・・」という前提なら、もひとつ困る人、および会社がある。
島圭次・NHK会長が追い落とされる時、スクープ記事が配信される前日に、朝日新聞のデスクは野中に直接電話をかけて、その記事掲載について報告した・・・という記述があるのだ。
野中が一情報提供者だとか、そういうこの本の記述に無い話もあったのかもしれんが、とりあえずこれって問題とちゃうか。
あとでいま、手元に無いこの本が見つかったら紹介しよう。
まあそういう点でも、「魚住昭の、この本の内容は信頼できるのか?」の検証というのは爆弾なんデス。