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John 8:32 Then you will know the truth, and the truth will set you free."  複数ブログの過去記事を移管し、管理の委託を受けています 

バクマン。は「スクールポリティックス」(略称スクポリ)を描けるか

バクマン。」は二週連続表紙という破格の待遇で二回目を迎えた。世の中には新連載ということで一生懸命色を塗ったのに、諸般の事情で白黒で始まった某久米田康治もいるのに(笑)。

ところで、二回目のバクマンでは、まんが道サルまんという当初の見立てに収まるようなものではなく、「(漫画家だった)おじさんの死」「おじさんの人生」の謎をこれから解いていくという謎解きサスペンスも始まりそうだ。
そして、かてて加えて非常に驚き、期待が大きくなったのは、どうも中学生の中の人間関係、それもパワー、ステータスをめぐる闘争と葛藤、緊張状態というものも描くんじゃないだろうか?ということです。
あ、これは多分に私個人の好みではあります。

そいうのは、なんだっけあのヒロインの少女、声優目指している。
あの子の人物評を、原作者志望の奇人秀才君(名前覚えろよ俺)が、その娘にベタぼれの作画担当君に聞かせます。
「彼女は頭がすごくいい。
あんまり学校の成績が良くないのは『頭が良すぎるのは女の子らしくない』と無意識にセーブしているから。声優志望も『それが女の子らしい夢だよね』と無意識に思っているから。無意識の力で理想の女の子像を演じているんだ」。


これじゃまるで、すっげーいやらしい人間だ。
少なくとも、これまでのマンガの文脈では、こういう計算をしている女性、いや男性も「ぶりっ子」「偽善者」として悪役扱いになるはずだ。
だがこの作品、秀才原作者君は、それにほとほと感心し、完璧に褒め言葉としてこの人物評を語っている。これがゼロ年代決断主義か(意味不明)と感じ入ってしまうが、ほんのちょっとだけ、それに対比する感じでバリバリ秀才でそれを誇っているようなメガネの女性が出てくる。
んで、スクポリを描いてくれるのかなあ・・・と期待しているわけ。


その前にスクールポリティックス(略称スクポリ)について語らなければいけない。
なぜならこんな言葉はどこにも無い、俺の勝手な造語だからだ(笑)


・・・まずひとつ手始めに言うんだけど、よくギャグ漫画には「委員長(生徒会長)になりたがる秀才」つうキャラが出てくる。国民的漫画ちびまる子ちゃんの丸尾君のようにね。

しかし、リアルの世界にそんなヤツいたか?高校になると、内申書による推薦の大学合格というエサがあるから一部進学校なんかでは生徒会長のほうはなりたがる人もいなくはない。あとは生徒会がなぜか文系サロン風になってしまい、居心地がよかったり楽しいことをやれるのでやりたがる、というパターンもまあ無くは無いが、純粋に委員長や生徒会長を、漫画にあるような権力欲や名誉心で求める人は皆無に近いんじゃないかと思う。

それは、そもそも「委員長」に今、魅力が無いからだ。あっ、「魅力」といってもあれだぜ、別の意味で「僕は委員長に魅力を感じます!とくにメガネが云々」とかいう人は、言っている意味が違うので出てこないように(笑)。

魅力というか、学校内のステータス、ポリティックスの中でね。

よく「アメリカの学校は男子はアメフト、女子はチアリーダーが最上級。その後、ベースボールやら秀才やら金持ちが続き・・・最下級がナードだ云々」という話を耳にするが、(それが正しいかどうかも未確認)、日本の場合、そうはっきりと階級も分かれていないような気がする。野球部がトップ? 違うよなあ。
それに例えば「不良」だってひとつのステータスであったりする。委員長より不良のほうが地位が高いなんてことも無くは無い。
女の子だってさまざまなグループができ、その中でリーダーシップを取る子が誰かとか、それがAからBに交代する、とかいろいろある。
このへん、実はルールがあるようで無い・・・いや逆だ、「ルールが無いようで有る」んだ。そして、その一定のルールにしがたい、状況によって力関係がさまざまに変わっていく。


んで、ある意味そのへんが面白い。

こういう部分を描いたのが藤子不二雄Aの「少年時代」だが、この頃は家の核や級長などの肩書、成績などがまだ大きく非公式なステータスにもつながっていた時代だと思う。
で、この学校内政治−スクポリに勝ち抜くために、自分のキャラクターを作ってそれを演じる人も出てくる。
小説では例の

野ブタ。をプロデュース

野ブタ。をプロデュース

りはめより100倍恐ろしい (角川文庫)

りはめより100倍恐ろしい (角川文庫)

がそうだ。後者のタイトルはこれだけだと分からないが「いじ『り』」が「いじ『め』」より怖い、という意味で、教室内で「いじり」の対象にされたもの、したもののさまざまな心理のひだと計算を描く作品、というと分かるでしょうか。


実は最近の漫画では「げんしけん」のヒロインの一人、荻上さんが中学時代、自殺未遂になるほど苦しんだ、女性漫画好きグループ内での孤立と陰謀?のエピソードがそのへんを描いてくれるかと思ったが、非常にそれ自体はいい出来だったけどほんの少し触れるに留まっている。

むしろ、その学校内政治(生徒間)の力関係を、治者としてしたたかに利用する(時々失敗する)教師の立場から描いた

鈴木先生 (1) (ACTION COMICS)

鈴木先生 (1) (ACTION COMICS)

に、けっこうその種のエピソードがあるなあ。


最後にもう一回言っておくけど、バクマン。がそういう形での学校内の人間関係、生徒間の権力のあり方を描くかもというのはあくまでも予測であり、そこにいくという確信も、必然性も無い(笑)。マンガの話なら、今度出てくる「仕事場」が中心になって、学校なんてただの背景、またく描写しなくてもいいんだから。
ただ、今回の登場人物の、作中のヒロイン評を見る限り、その方向にすすんだら相当凄いものを見せてくれそうだ…という勝手な期待です。


余談。
同じような、学校内の生徒間の政治、に対して、ひとつの回答を与えたものに

慎治 (中公文庫)

慎治 (中公文庫)

があります。へえ、昨年中公文庫で新装再販されたのか。
実は浅羽通明絶賛の作品。「いじめ」と「ガンプラ」がテーマという・・・すまん、略しすぎだな。どこかで検索してあらすじを探してください。ひとつ紹介しておくと
http://www.asahi-net.or.jp/~wf9r-tngc/sinji.html
がいいかな。