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John 8:32 Then you will know the truth, and the truth will set you free."  複数ブログの過去記事を移管し、管理の委託を受けています/※場合により、語る対象の「ネタバレ」も在ります。ご了承ください 

書評家「狐」氏が逝去。ショックだ・・・・・

日刊ゲンダイ」に「狐」の署名で長年にわたり書評を執筆した山村修氏(やまむら・おさむ=元青山学院本部広報室長)が14日午後2時35分、肺がんのため東京都内の病院で死去した。56歳。葬儀は近親者で済ませた。

 主な著書にエッセー「禁煙の愉しみ」「気晴らしの発見」など。7月に「<狐>が選んだ入門書」を出したばかりだった。

[2006年8月19日1時37分]

この・・・ショックは大きいなあ。向井敏さん亡き後、書評家ランキングでは常に1,2を狙う位置にあり、またいまどき珍しい、徹底した覆面で正体不明の時期が長かった人であった。日刊ゲンダイがどういう経緯で彼に書評を任せるようになったかしらないけど、単に団塊世代のうっぷんばらしでしかない、日々の彼らの記事やコメンテーターのワイドショー出演ではなく、この「『狐』の書評」こそ、同紙が唯一日本に貢献した文化活動だっただろう。


最後に

“狐”が選んだ入門書 (ちくま新書)

“狐”が選んだ入門書 (ちくま新書)

を発表できたのは、せめてものなぐさめだと言いたいが、逆にこれを読んだら、失われた今後の可能性を思い、さらにうちひしがれるかも。

http://www.sankei.co.jp/news/column.htm

平成18(2006)年8月21日[月]
 きのうの社会面に死亡記事が出ていた山村修さんのことは、近刊の『〈狐〉が選んだ入門書』(ちくま新書)で知った。その見事な文章と選書眼の確かさは、すでに小紙を含めた各紙で好意的に取り上げられている。
 ▼たとえば、『世界史の誕生−モンゴルの発展と伝統』という本を扱った章では、著者について、こんなふうに書き出される。「岡田英弘は歴史家のなかの剣客です。史的想像力の剣さばきがするどい」。続きを読まずにはいられない。

 ▼あとがきも話題になった。平成15年7月まで22年間の長きにわたって、夕刊紙『日刊ゲンダイ』に毎週コラムを連載、根強い人気を誇っていた書評家〈狐〉の正体が、山村さんだったことを明らかにしたからだ。

 ▼ただ経歴でわかっているのは、慶応大学文学部を卒業して、今年3月病気で退職するまで、都内私立大学図書館に勤めていたことぐらい。本名で書いたいくつかの随筆のページをめくっても、情報は多くない。

 ▼27年間吸い続けたたばこを平成9年にやめた。職場のストレスから、強度の不眠症に苦しんだ経験がある。本を読むペースは意外にゆっくりしていて、1週間に1冊。朝夕は通勤電車のなかで、夜は畳の上に正座して読む等々。これで十分という気もする。もともと、本の魅力を語るのに、伝える者の素性など明かす必要はないと考えていた人なのだから。

 ▼享年56歳。確かに〈狐〉の死は早すぎる。いく冊かの本になっている書評も今では入手が難しい。だが抄子は夢想する。〈狐〉の書評が読みたいという声が高まれば、増刷、復刻も実現するだろう。すると読者が、また〈狐〉の紹介した本を読み始める。そうなれば、もって瞑(めい)すべし、といえるのではないか。

たしかちくま文庫で何冊か、そのまま「狐」の名前で書評集が出ているはずだ。