個人的には賛成・反対ともすべて聞いたことのある論点だったなあ。それはたぶん、一般的な感想ではないだろうけど。
逆に、「この話が出てこないのは不満だ」という部分が無く、過不足なく論点が出ていたともいえる。
ひとつだけ、テレビでは出なかった論点をいうとしたら、例のサンフランシスコ条約11条受諾論。
裁判を条約で認めたから、その歴史的見解を変えるのは条約違反だというのは、一見右派への武器になるように見えるが、例えば「韓国も臨時政府が正統政権として、日本と「交戦状態」にあった」とか「天皇も責任がある」という、要は左の側からの、別の視点の歴史観も制限されるのではないか?
あと、山本七平の日本社会論が、姜尚中をはじめとして戦時を分析するツールとして登場していた。
実は姜尚中は、先月だか先々月の論座の中でも「今の保守はバランスを失っているが、かつてはバランスがあった」という例として山本を出している。
これは、本多勝一らとあまりしがらみがない90年代に登場した左派の特権だろう。山本自身のスタンスは変わっていないし、例の「洪思翔中将の処刑」という本もあるのだけれどね。
(いま調べたら絶版みたいだ)
ただ、そこで「無責任体制」「アメーバのような権力の分散」というふうに姜尚中は論じて、田原総一朗から「それを防ぐにはどうすればいい?」と問われた姜尚中は「中間組織(地域やアメリカの教会的な存在など)の拡大」と言っていた。
山本七平は逆に「実情の世界」から「法と権利の世界」に切り替えることを提唱していて、具体的には「派閥のボス」が権力を持つのではなく「首相や党の幹事長が、規約に基づいて権力を持つ」システムに可能性を見出していたはずだ(「派閥の研究」)。

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小泉政権で官邸に権力が集中するさまを見るに付け、この山本の予言を思い出していたのだが。