山本七平「『空気』の研究」の中で取り上げられたミュンツァーは、ドイツの農民反乱を主導し、法王庁の権威に反抗した一方で、同じく宗教改革者であるルターとも敵対していた。
この本の中で、ミュンツァーが書いた
「きわめてやむを得ざる弁護論、および、よこしまに聖書を盗みとって、いたましきキリスト教界をかくもみじめに汚した、聖霊を持たずしてぬくぬくと生きているヴィッテンベルグの肉塊(ルター)に対する回答。−−アルシュテットの人、トーマス・ミュンツァー」
という著書が紹介されているのだが、どうですか、題名だけでお腹いっぱいでしょう(笑)。16世紀に、聖教新聞の先輩あり(笑)。
一応、権力者と宗教者の距離というまじめな議論が根底にある・・・はずなのだが、この後も
「虚言博士」
「聖書盗人」
「背信者」
「狡知にたけたカラス」
「哀れなおへつらい屋」
「狡猾な狐」
「大卑劣漢」
「靴屋を真似て靴を作ろうとして、革をだいなしにしてしまう猿」
・・・と罵倒が続き、あまりにも呼び名が変わるので山本氏はいちいち後ろに(ルター)と注釈をつけざるを得なかった(笑)。
「『空気』の研究」には批判もあるし、またミュンツァーの狂信ぶりも評価が分かれているが、とりあえずこの大罵倒ぶりはすごく読んでいて楽しい。