◇『黒いアテナ 古典文明のアフロ・アジア的ルーツ2上巻』 (藤原書店・5040円)◇ギリシア文明の起源偽った白人優位
・・・古代ギリシアは古代エジプトの植民地だったという仮説が提唱されていたのである。驚きはしなかった。出るべくして出る本が出たと思ったからだ。・・・・・・ 著者は神話や言語、たとえばテーベといった都市名の類似などから、じつに説得力ある筆致でその仮説を裏づけてゆくのだが、しかし、重点は・・・
これ、わがブログ近辺とかを見てる人は「ん?どこかで聞いた様な?」と思うだろう。
そう、はてな界の重鎮ウェイン町山氏の6/18付だ。
http://d.hatena.ne.jp/TomoMachi/20040618
「トロイ」のブラピが金髪なのは少女漫画的美学か
「ギリシャ彫刻のような」
そう形容されることが多いブラッド・ピットに映画『トロイ』のアキレウス役をやらせたのは商売としては正しい選択だ。でも、学術的、政治的にはどうか?
・・・・
もともと、地中海をヨーロッパとアフリカ大陸に分けて考えるのが違っていそうだ。
ここをむしろ、全体として把握してみるべきなのではないか。
むしろ、中世日本を東日本王国vs西日本王国と見た網野善彦氏や、古代中国を「都市国家の系譜」に見たてた宮崎市定氏、あるいは明治時代をひとつの「明治国家」と仮定した司馬遼太郎氏のように、歴史の想念の中ではむしろ意識的に国境線を増やしたり減らしたり、折り曲げたりするほうがいい。
古人いわく
「国境線は歴史の中では、たんなる補助線にすぎない」。
・・・すいません今、この諺をでっちあげました(笑)。もちろんこの話題は、「高句麗問題」にも後日絡んでくるわけで。
で、エジプトなんだが我々はどうも「ツタンカーメンののろい」や「ミイラの恐怖」や吉村作治(笑)のせいでこの栄光の文明の本質を実感しにくいような。
アシモフさんが言ってたと思うけど、「われわれがギリシャ、ローマの遺跡を見て「古いなー」と思うのと、その遺跡時代の人がエジプトのピラミッドを見て『古いなー』と思うのは、同じくらいの感覚だ」というのだ。うむ、古いよね。
ただし、そのへんの埋もれた歴史を指摘しエジプトからギリシャにつながる文明を読むのはいいんだけど、これが例によって急進的になりすぎて、「全ての文明はみなアフリカに起源を発する、はっする!」といい、反対意見はすべて人種偏見と決めつけるトンデモと化した一派も一部にはいるようだ(何年か前のニューズウィーク、または「人はなぜニセ科学を信じるのか」に記述があったような・・・うろ覚え)。
この本はそんなことはないと思うけど。
そういえば、「1421」だったか、明の鄭和が、コロンブス以前にアメリカ大陸に到着していたという本がこの前話題になったけど、読もうかなと思う前に「トンデモ本じゃん」という評価がどこからか聞こえてきて、結局まだ読んでいない。
読んだだけじゃ、たぶん見破れないだろうから、両側の立場の本を読むことが必要なんだよな。