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John 8:32 Then you will know the truth, and the truth will set you free."  複数ブログの過去記事を移管し、管理の委託を受けています/※場合により、語る対象の「ネタバレ」も在ります。ご了承ください 

前田日明とリングスは今だに格闘技の"難問"であり続ける(ゴン格・格通より)

ゴン格で熊久保英幸氏がロング・インタビューをしており、格闘技通信では連載コラム(コラム形式のインタビュー?)が始まった。
格通のほうはだれも止められないのか(笑)、半分ぐらいは歴史や漫画を語る内容でしたが、後半で少しHERO'Sや宇野薫を語っています。

前田日明はやっぱりヘビー級最重視論者だったんですね。

格闘技系のスポーツの裾野を広げようと思ったら、まずヘビー級を成功させなきゃけない。そうしないと中量級に目が向かない。ヘビー級が、家の基礎になるんだよ。HERO'Sも頑張っていたけど、もしももっとヘビー級に本腰を入れていたら、HERO's人気はあんなものじゃなかったと思う。へビー級人気に力を入れていたら、もっとHRO'Sはブレイクしていたはず。
格通448号13,14P)

そうすると、戦極のほうが長期的に見るとやっぱりDREAMより優位に立っていると見るべきなのかしら?
前田はヘビー重視論者なのか中軽量級論者なのか、読者には分かりかねる・・・というか時々言うことが違う(笑)ような気がしていたのだが、やはり自分も巨体だったこともあり、ヘビー級というものに大きな価値を置いていたのだな。
もしHERO'Sがそういう路線をとっていたらどうなっていたのだろう。第一回はけっこうそういう感が、たしかにあったよね。何しろ若翔洋だってHERO'S戦士だったのだ(笑)


クマクマンボ記事とインタビューで、あらためて”タブー”の存在を確認。

今回のゴン格は前回に続き22周年特集。「時代を超えた男たち」として、前田日明をはじめとする有名格闘家の過去記事の特集をしている。
前田日明の特集記事と、インタビューを書いているのはおなじみGBRの熊久保英幸氏だ。

極真フリークである前田と極真空手のお歴々が意気投合した対談はどれも懐かしいし、そういう人間的な交流は微笑ましく、いいことであるのですが、やはり「この部分」をどう表現するかというと、難しいものがあると再確認したところがある。


1993年4月号を振り返ったクマクマンボのコメント。

今をときめくスポーツジャーナリストの二宮清純氏は、元々ゴン格や週ゴンで連載コラムを持っていた。これは「今こそアキラを語ろう」という企画の中で、二宮氏が久しぶりに前田とリングスのことを書いたのだが、叱咤激励が辛口すぎて前田の怒りを買ってしまい、前田が編集部に乗り込んでくるという事件にまで発展。と言っても前田は大人の態度で和解してくれた
(P108)


こんな要約で意味が分かるであろうか、いや分からない(反語調)。
なぜ「辛口すぎた叱咤激励」というような奥歯どころか前歯にもものがはさまったような書き方なのかというと、それは大人の態度をとってくれた前田に対し、「大人の事情」で返したという(笑)・・・いやまあ、アレがアレでアレなんだよう、と長州語になってしまう。

えーいこっちまで分かりにくくなってどうする。ごく簡単に言えば
「リングス(初期)、ことに前田の試合はルールはともかく、あらかじめ勝敗を決めずに両者が勝利に向かい全力で競い合うものだったんですか=リアルファイトでしたか」という部分はいまだにタブーなんだよ、ということだ。90年代末から2000年代初頭を彩った伝説の掲示板「リングス女子便所掲示板」(今、名前の由来を知らない人には意味を誤解されるなァ)の時代から進展はあまり無いのですよ、少なくとも当人と、またごく近い部分にいる人にとっては。


実際、ここで二宮清純がどういうことを言ったかを知っている人にとっては(・∀・)ニヤニヤ ものでせう。


うっかり誤解している人も多少いるのだが、今前田日明自身がカミングアウトし、実質的に認めているのは「第二次UWFはプロレスだった」(5年待てと、たしかに船木たちには言いましたよ、など)ということで初期リングスについて、そういう文脈で語ったらふたたび女子便所が発動となるわけですよ。


前田インタビューにいわく(113P)。

−−嫌いなマスコミのタイプは?
「噂話だけで取材もしないで、ヘタしたら試合さえも見ずに勝手なことを書くヤツだね。
あと最近、リングスの元社員とか出たことのある選手から話を聞いて、あることないこと書いて得意気になっているヤツら。」
―ー前田さんは格闘技雑誌はどうあるべきだと思っていますか?
「一方的でなく、両方の話を聞くことだね(後略)」


というわけで、いずれも反響を呼んだ、若林太郎氏の「ガチ!MAGAZINE」インタビューや、つい最近掲載されたばかりのkamiproインタビューも非常にダメなものだということです。もちろんクリス・ドールマンに聞いた、柳澤健氏の「1976年のアントニオ猪木」も最低の本…ということになってしまいます。

kamiproの若林インタビューはたしか119号、120号でしたから今でも購入可能でしょうな。


ガチマガジンはどうかな?池袋ジュンク堂にまだ有った気もするが。
無駄に長いキャリアを誇る当ブログは、いやなことに発売時その記事を紹介している(笑)

http://d.hatena.ne.jp/gryphon/20041211#p1
■「裏方スーパースター列伝」修斗の大番頭! 若林太郎ガチマガより2)

まあ、たしかにここまで喋ったらな(笑)


その他、当事者インタビューということではkamipro
ドン・中矢・ニールセン、
ディック・フライ、
木村浩一郎
などにインタビューしている。前田日明との対立は当然あるんだろうが、これがジャーナリズムの逆説的なよさと言うもので、朝日新聞が保守派の悪いところを探して書き立て、産経新聞が進歩派の問題を書きたてることで結果的に全体に益するのです。格闘技ジャーナリズムに党派性があるなら、その党派性が結果的に生きるし、実際に各選手へのインタビューは資料性の高いものだった。
きちんと最後のところでは寸止めしていたし(いや、木村選手はフルコンタクトだったか?)


逆に言うと、熊久保氏がこれらの問題に対して聞けないのは聞けないで、全体の中のひとつの役回りなのかもしれない・・・と思う。
そういう点ではここで現状を、分かる人にはわかるかたちで示したのはいいことかもしれない。

再確認
UWFのことではなく、初期リングスがリアルファイトかい中は、少なくとも本人周辺についてはタブーである。
なぜなら、前田は引退しても190センチ、130キロの巨漢であり怖いからだ(笑)」



ただ、熊久保氏・・・うふふふ、実はたしかゴングを一度病気退社しフリーになったころ、もうリングスも終わっていた時に、あるムックで、たしか中村カタブツ氏が聞き手のインタビューで、ちょっとうっかりというか、もういいだろうと一度思ったらしく、少しタブー破りをしてたんだよねえ(笑)

中村氏が、「リングスの実況解説は真剣勝負を前提にやってたんですか」という趣旨のことを聞いて
それにクマクマンボは「俺は、『あのキックは技術的にすごいですよ』というような言い方しかしなかったから」
と暗に認めていたのです!
しかし好漢安心せよ、このムックの書名、出版社などは残念ながらワタクシ覚えておらんのです(笑)。たしか「美濃輪がキン肉マンの素顔を確かめようと、キン消しの顔を削った」というエピソードが初出だったムックだと思うのだが・・・


まあそんなこんなで、なかなか「歴史問題」は大変だということでした。

その他の格闘技エントリはお休み。

なにしろ4誌分。「あと10年は闘える」ぐらいのネタがあるのだが、ひとつで上の分量かいちゃあ、さすがに体力的にもう(笑)
当分、団体に新しい動きやズンドコがないことを祈ります。

パール判事論争(小林よしのりvs中島岳志)に新展開。両者が単行本を発売

中島岳志が月刊現代に昨年末(今年正月だっけ?)「小林よしのりにガチンコ討論を申し込む」という論文を載せ、その後小林が今年5月ぐらいまで断続的にこの「パール判事論」を描き続けていた(その中で公開討論・対談の申し込みには「史料批判を含めた論争なんだから、論文で返して来い。パールの判決書や著書を持ち込んで、読み上げて対談をするのか?」と拒否している)が、小林よしのりは「パール真論」と題してこのシリーズを単行本にまとめた(まとめる?)はずだ。ちょっと雑誌購入後、書店によってないのだよ。
もう出ているのかな?

ゴーマニズム宣言SPECIAL パール真論

ゴーマニズム宣言SPECIAL パール真論

はまぞうにはあるね。


そして中島はこの問題に関しては実質的に沈黙を続けていたが、今回、ようやく満を持して?反論本(?)を世に問うらしい。

http://shop.kodansha.jp/bc/books/kpb/index.html

BOOK倶楽部TOP > 書籍・雑誌 >文庫・新書・文芸書発売予定
文庫・新書 発売予定 ※書名・定価(税込)・発売日などは、変更になる場合があります。
※発売日は、発送事情等により、地域によって多少異なる場合があります。
※★は価格です。

現代新書
書  名 著者名 定価(税込) 発売日
「昭和」を点検する 半藤一利保阪正康 777 7/17
変わる中国 変わるメディア 渡辺浩平 756 7/17
大和三山の古代 上野誠 756 7/17
金正日の正体 重村智計 756 7/17
パール判事「日本無罪論」の真相 中島岳志西部邁 735 7/17

半藤・保坂の対談本ってこの前文春新書で出なかったっけ?ああ、あれは半藤・秦郁彦だったかしら。
中国のメディア変貌はちょっと興味がある。前「中国政府が世論を気にして反日、というのは大チャンスだ」って書いたことあったっけ・・・

って本題本題、
中島はなんと西部邁との対談本で反論をする。そういえば小林よしのりは、まとめて西部も批判してたし「中島と西部が組んで、反論しようとたくらんでいるらしい」と欄外で書いていたこともあったな。そういう出版業界の噂は正しかったということか。
ただ、西部は論文の中で、フィクサー的な才能?を発揮し「事実関係の分析では小林のほうに分がある、中島氏は誤りを認めるべきだ」というようなくだりがあり、それでこう関係修復をもくろんでいたような部分があった。
そのへんに関してはどういうふうに決着するのか。
まあ、ほぼ同時期の出版で、相手の本によって内容を変えるわけにはいかない(新書の締め切りってどれぐらいなんだろう?)だろうから、そういう意味ではフェアでよかった。
広く飛び火した、周辺の歴史学者社会学者にもいろいろ話が広がっていけばいいな。
扱うとしたら「創」や「サイゾー」かしら。それこそ「m9」やなんかのような「ライトオピニオン」誌が扱うのに格好のネタなきがするが。

地域社会を学校を軸に再編できるか?例の名物民間校長について(副題:オタク的情熱やつながりは教育現場に生かせるか?)

今、上のエントリの話題って散々既出かも?と心配になって、中島岳志のキーワードで前後を見てみた。
結局そうでもなかったのだが、それに関して
http://d.hatena.ne.jp/alphanet/20080624/1214319688
経由で

http://mainichi.jp/enta/art/news/20080623dde018070021000c.html
という記事を読んだ。
加藤紘一が、なんか新・リベラル保守の結集軸として「地域社会(共同体)の再生」ということをうたっているのだが

強いリベラル

強いリベラル

「具体的にはどうやって?」
「地域共同体が、みんな厭だから壊した部分もあるのに、(そのまま)復活させていいの?」
という疑問が常に付きまとっていた。
いつか機会があったら詳論したい。浅羽通明「昭和三十年代主義」おおやにき先生の「自由とは何か」も参考になる。

昭和三十年代主義―もう成長しない日本

昭和三十年代主義―もう成長しない日本

自由とは何か―監視社会と「個人」の消滅 (ちくま新書)

自由とは何か―監視社会と「個人」の消滅 (ちくま新書)

だが、この民間校長氏の考え方、というか具体策は非常に興味深く示唆に富むものだと思う。
非常に興味深すぎるので、申し訳無いがごっそり引用させてもらおう。

藤原 元々、家庭や地域社会での教育がうまくいっていないのなら、学校に子供たちを囲い込もうと考えたんです。最初はビジネスマン感覚で、先生が授業に集中できるよう、余計なことは外部に発注すべきだと思った。部活も、たとえばサッカーなら校外のクラブチームの方がいいだろうと。ところが、赴任して2カ月で、その考えが間違いだと分かりました。

 なぜなら、今の生徒の3割は、家庭で学習をフォローできない。1割は完全に家庭が破たんしている。3割の子は、サッカー部があるからこそサッカーができる。ビジネスマンは強いもの同士の世界だから、どうしても世の中のそういう面が見えていなかった。そこで、むしろ生徒をできるだけ長く学校にいさせるべきだと考えて、ドテラ(土曜寺子屋)を始めたんです。土曜の午前にその週に出た宿題を学校でやり、分からなければボランティアの大学生に聞く。午後は部活です。

 次に部活をしていない子の放課後。まず、図書室にカーペットを敷いて、漫画も入れました。7コマ授業の日もあるから、勉強の後は、横たわって漫画を読んだっていい。改装後は、PTAのOG、地域のおばちゃんたちが運営してくれています。本が好きで、中学生の女の子と語るのも楽しいからと。

 中学生って、反抗期だから自分の母親には「てめえ」とか「ばばあ」とか言うけれど、人の母親には絶対そう言わない。よそのおじちゃんやおばちゃんには、ある意味で心を割って話す。そういう、「ナナメの関係」ができるんです。

 次は夜や土曜に、もっと勉強をしたい子向けに英語を教え始めた。後の夜スペ(夜スペシャル)へつながるものです。これは中野区にある私塾の塾頭が来てくれた。この成果で、今の3年生は、昨年度末時点で英検3級以上が過半数。しかもその子たちが、ほかの子に英語を教え始めた。それで、以前は区で23校中16〜21位だった英語の平均点が、断トツ1位になった。夜スペは「上の子だけを持ち上げておかしい」と言われましたが、それは学校のダイナミズムを分かっていない人の批判。上の子が伸びれば、中下位層も引き上げられます。
校庭の緑の手入れも、地域に適した人たちがいた。マンションに住むガーデニング好きなお父さんたちです。狭いベランダしかなかった彼らが、10畳、20畳の広さを任せられると、喜んで芝を刈り、ブルーベリー園やハーブ園を作るんです。

 地域全部が同じ形で学校に協力するのではなく、それぞれが一番いい形で学校と結びついた。その総体が地域本部です。単に地域の世話好きに学校を任せた、ではないんです。

 中島 つまり、地域の新たな文脈作りをした。

 藤原 古い形の地域社会ではなく、新しく編集された地域社会が学校内にできました。

うーむ。
たとえばここで「げんしけん」を思い出してみよう。
あの若い方の女性ヒロイン、今名前がちょっと出てこないが、彼女は中学の時に「オタク友達」と一緒に同人誌を作っていた。
ま、あれやこれやのトラブルがあって彼女は結果的に心に大きな傷を負うのだが、それはこっちにおいといてえ(笑)、学校管理者側、治者たる教師の側から見ればだ、例えば「オタク友達」「オタクサークル」的な集団であっても(それこそ漫画以外のゲームでも、プロレス・格闘技マニアでもよろしい)、そういう形でクラスや学校内に仲間・友人の集団ができ、コミュニケーションが取れていたほうが、そういう趣味の子なんかが孤立するよりよっぽどいいんじゃないだろうか。それが例えば、ボーイズラブ愛好の集団であってもだ(笑)


そこで「げんしけん」のようなトラブルがなければ一生の友達も生まれようし、いいほうに行くと、「究極超人あ〜る」で理想化されたように、運動部顔負けの活発にしてお騒がせで、学校全体を引っ張り活性化させるような集団となるのかもしれない。これはまだ自分の中で煮詰まっていない議論なのだが、今人気の「涼宮ハルヒ」シリーズの一部は「あ〜る」の後継者だろうから(たぶんすでに指摘多数だろうな。というかハルヒを読まずに決め付けてしまってすまぬ)。


上でいう「ナナメの関係」でいうと、その漫画も含めて寝っころがって読めるようになった図書館の運営に、地域の主婦が参加。
「あなたねえ、『風と木の詩』も知らずにBLを語っちゃだめよ」
「何もいわず、『キャプつば』と『聖闘士星矢』を読みなさい!これは命令!!」
と、いう形で理想的な「ナナメの関係」が・・・・・・・・・・・・・・

だめじゃん(笑)


まあ、いくら宮崎勤事件のあった20年前から比べると市民権を得たとはいえ、「オタク」を教育界に公式に持ち込むのはちょっとまだ無理だろうね。どこかで飛躍、跳躍でも無い限り。
「ルーキーズ」みたいに新任の理想主義をもった若い教師が「君らの夢はなんだ?」と聞いて「同人誌をつくりたいです・・・」「鈍行列車で日本一周をしたいです・・・」。
こんなんテレビドラマにならん(笑)。いや、案外うまくいくかな?
鈍行列車日本一周なんてのには、それこそ「ナナメの関係」で、PTAの山田さん田中さん鈴木さんがそろって参加しかねない。
「私、隠しておりましたが、実は30年来の鉄男!」
これもだめじゃん(笑)



この校長先生、猪瀬直樹のメルマガ「日本国の研究」にも以前登場し、もっと詳しく語っています(記事の分量が違うからね)
その一部抜粋は
http://d.hatena.ne.jp/gryphon/20070922#p5
で書いているんですが、たぶん今は猪瀬直樹公式サイトへいくと全文読めると思います。