やや旧聞に属するが、格闘技界でも大きな動きが無いので暖めていたネタを。
CS放送「MOND21」局の対談トークショー「岡田斗司夫のプチクリ学園」に1カ月ほど前(第10回)に、夏目房之介氏が登場した。
ここで、夏目房之介氏が「格闘技を実際に学んで分かる格闘マンガ、格闘映画の面白さ」について熱く語っている。
岡田斗司夫はもともと格闘技に全然興味が無いのだが、何しろマンガ夜話の他のゲストが夏目氏以外に、「いしかわじゅん、大槻ケンヂ、夢枕獏」なんてラインナップになることがありまして(爆笑)、格闘技に興味が無いと、控え室でどこかの核実験国なみに「外交的孤立」を余儀なくされるという(笑)。
ただ、夏目氏もアントニオ猪木や大山倍達の時代から好きで好きでたまらなかったという、他の人たちとは違い、スポーツマンガを主に論じた新潮文庫「消えた魔球」でも、格闘技の面白さは分からない、と公言している。
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それが後天的に、K-1やPRIDEの話題をいつもブログ( http://blogs.itmedia.co.jp/natsume/ )で語る格闘技好きになったのはなぜか?どういう視点で楽しんでいるのか?それが分かる貴重な資料なので、文字おこししてみました。
携帯サイトだと分からないかな?斜線のOが岡田斗司夫、Nが夏目氏です。
O:(資料に目を通して)「ハッケショウ」・・・なんて読むんですか?
N:馬貴派八掛掌。バキさんという人が中国で伝えたはっけしょうというちょっとマイナーな中国武術。
O:ハッケショウ。
N:たまーに、ちょろっと出てくる名前なんです。太極拳とか少林寺拳とか出てくるじゃないですか、メジャーなのが。それにくっついて・・・くっついてっていうわけじゃないけど(笑)、一応、なんというのかな。マイナーだけどわりとこう、武術の世界では有名な名前なんですね。
ひたすら歩いてばっかりですね練習ってのはね。、円を描いてずっと歩いているのが練習。もちろん技みたいなものももやりますけど、本当は伝統でやりますと最初の3年はただ歩いているだけ。
O:健康のためなんですか、それとも格闘に強くなりたい・・・・・
N:いやいやいや、もともと僕は 格闘とかは全然興味が無くてただ太極拳を始めてからいろんなの見て、、カラダがわかるようになってから面白くなったんですよ。
・・・それで格闘技も好きになったんだけど、それであれやこれややって・・・ボクササイズとかいろいろあったんですが、最終的に 馬貴派に偶然会って、始めたら面白くて、しかもむちゃくちゃこれが健康になる。僕の場合は完全に健康(志向)。
O:こういうのやると、格闘漫画って面白くなりますか?
N:ああおもしろい面白い。全然違うから。もうホーリーランドなんか面白くってしょうがないんだ。
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O:ああいうのって(僕が)ページ飛ばして読んじゃうのは、分からないからなんですよ、要するに何が面白いのか。
N:ああ、あの、それはおもしろいです。
O:格闘マンガ描いてる人って分かる人が描いてますよね、動きが。
N:うん、今は昔と違って、やってる人が描いてんだよ
O:それが僕、分からなくなってたんですよ。タイガーマスクとか どう考えたって格闘技やってない辻なおきが(笑)、見よう見まねで16文キックかいてたときは面白く読めたんだけど、いまのやつって動きとか見なきゃいけないんですけど「何が面白いんや?」って思っちゃう。
N:それはまったく、だからテレビで見てても同じなんですよ。
K-1でもPRIDEでもいいんだけど、普通の人が面白いと思ってるとこと、やってる人が面白いってのは全然違うので。
おなじ試合見ても、すんごい退屈でだと普通の人が思っても、こうやってる人が見てると面白かったりするんです。
O:サッカーやってる人がサッカー見るとすごく面白いって言いますもんね。
N:そういうのは全然・・・カラダ使っているものは、見方変わっちゃううんですよね。
相撲で「差す」っていうんですよ、わきの下に手をこう入れるのをね。あれさ、なんだか分からないじゃん。「なんであんなことするんだろう」って。
あれで理屈がわかるんですよ。
アレで重心をずらして、相手が動くたびに動きを感じ取りながら、かたっぽをたとえば止めて・・・かたっぽ止められると人間ってのはこう、支えにしちゃうんですね。こっちを(身振りを加える)。
それをいやがって動いたときに、その動きをずらすんですよ そうすると相手の重心がね、自分の思ってた場所よりもちょっと角度をつけてずれるんです。そのときに自分の重心をその下に入れる(身振り)と、コントロールができるんです。
それをやっていくと相手の重心がどんどん上に上がって自分がどんどん下がるんですよ。完全にコントロールができるんです。それが「差す」ということなんです。それが実際にできるんですよ。自分でやっても。
O:おもしろいですねえ。
N:面白い!!それをやってごらんなさい、あんなに面白いもん無いですから。
O:じゃあこの馬貴派八掛掌は夏目さんのマンガ修行のようなもんで。漫画描いてるからマンガ評論とかもわかるってようなもんで、格闘技2年半やってるから、ありとあらゆる格闘技が急にわかるようになって急に語れるようになっちゃう。
N:ああ、そうそう!たとえば「下妻物語」って映画あるでしょ。あれ、僕大好きなのよ。
O:はい、僕も好きです
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N:いいでしょ。あれはいろんな「いい」があるかど、僕なんかはあの中で乱闘シーンがあるでしょ。あれ手を抜いてないんです。アクションシーンに手を抜いていないってことがわかる。
O:あと最後の巨大な仏像でやってるやつですね。
N:ああいう映画だからアクションシーンは手を抜いてる可能性が非常にあるわけですよね。
O:アイドル出てるしね。
N:アイドル出てるし、そのー、別にほかで頑張る必要も無い映画。ところがね、あれはたぶん監督の趣味だと思うんだけど、しっかりアクションシーン作ってる。それに感動しちゃうわけよ。
O:(カット割りせず)動きつながってますもんね。
N:もうね、エライ!!そこに手を抜かないところがえらいな、何というか、娯楽を作る人の魂があるとかって思う。。そういうのが(分かるってことが、武道を習うと)あるんですよね。
お断りしておくが、発言者はフルコンの山田英司氏でもなければ格通の朝岡秀樹元編集長でもない(笑)。
でも面白いね。「差す」の解説なんかTK高阪剛が乗り移っているかのようで。
ただ、文章と写真だけで見たら、相撲の解説を「している」のが岡田氏で、「聞いている」のが夏目氏だと思うだろうなあ(笑)