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John 8:32 Then you will know the truth, and the truth will set you free."  複数ブログの過去記事を移管し、管理の委託を受けています/※場合により、語る対象の「ネタバレ」も在ります。ご了承ください 報道、記録、文化のために

【新書メモ】日本のお笑いの『メタネタ(芸人が「笑いの取り方」自体に言及)』の特異さを語ってる本があった

数年前から気になり始めたテーマ。再紹介したい

m-dojo.hatenadiary.com

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できれば、リンク先に飛んで全部読んでもらえばいいんだけど、そういう人は少ないので重要点を再掲載。

お笑いが「お笑い」そのものをネタにすること自体が、やっぱり面白いというか……
マンガの楽屋オチ、メタ的なギャグがやっぱり読者を一瞬「ギョッ」とさせる感覚があるように、お笑いのその種のメタな笑いも、業界事情なども含めてやっぱり視聴者、観客はぎょっとしつつ、大きく笑う。

深夜の「さんまのお笑い向上委員会」を偶然見た時だったんだよね。
この番組はタイトル通り、そもそもそういうテーマ自体が番組の柱だから特殊なのかもだけど、「そもそも、それがテーマの番組がある」こと自体がすごい話だし、この記事の傍証になる。

その回では麒麟・川島氏が俎上にあがり、たしか「川嶋さんは司会が優しくて、若手の我々が甘やかされる」的な話だったかなあ。

天才、お笑い怪獣の明石家さんまがそこでものすごい貢献をしたのは間違いないところだと思う。
そして、どうかするとさんまが60分や90分スタジオや客席を笑いっぱなしにさせるような番組の中でも、ひときわ笑い声が大きいのが、その時の番組テーマそのものより「君のボケ、いまいち通じんわ!」「お前、いま流れ断ち切ったなー--」的な、ゲストやアシスタント芸人のお笑い自体を批評する箇所である……ということ結構あると思う。
というか、さんまが未だに第一人者として君臨してるのは、この「お笑いの芸、テクニックそのものをネタにするメタな楽屋落ち的笑い」に関して圧倒的に強いから…だと思う。延髄斬りや卍固めは綺麗に決まらなくても、チョークスリーパーが決め手になって延命できたアントニオ猪木的な(笑)

このことを再度語りたくなったのは、むしろ「ゴゴスマ」だな。特に古館伊知郎がゲストの回。

いや、たしかにおもしろいんだけどね、古館氏はかなりこの「トークそのものの構造をネタにする」というかバックステージの視点で語ることが多い。「いま、滑りましたね」とか「まずこちらに常識的な内容を語ってもらって、最後に私で落とそうという魂胆なんでしょうが……」と、この番組内での会話が、完全なフリートークでなく、ある種の意図や方向性をもって語られてますよね、というようなことを言うんだよ。

繰り返すが文句をいってるわけではない。
お笑いをさらに面白くしている(と俺は思う)、お笑いの構造、楽屋落ち的なことに言及し、それをテーマにするような話で、日本のお笑い界の中ではどんな風に生まれて定着したんだろう?
こういう笑いは…笑い、喜劇自体は世界中にあるが、こういうお笑いをメタ的に言及するような、そんなトークアメリカの、韓国の、イギリスの、中国の、ドイツの……コメディアン、喜劇役者はしているんだろうか?

こんな問いを投げかけたんだが、いつものことながら特に反響とか無かった(笑)

だが、
読んでみたこの新書で、このことが言及されていたのだった。

松本人志は、なぜ30年近くにわたってトップに立ち続けていたのか。そして「ポスト松本」時代のお笑いとテレビは、どう変わるのか。

ここに、胃kのような記述がある……

芸人が裏側を語る時代

芸人が裏側を語る時代

最近では、お笑いを楽しむ人々が、表向きに提供される芸の部分だけではなく、芸人の裏側の部分に興味を持つようになっている。それを象徴する現象が3つある。
1つ目は、芸人が自分の笑いの技術や生き残るための戦略などを赤裸々に語るような番組や企画が増えていること。

(※2つ目と3つ目は直接関係ないので(略))…なぜそういう現象が起こっているのかを考えたい。


…一昔前までのテレビの世界は、一般庶民が憧れの眼差しを向ける夢の舞台だった。
そこで放送されるバラエティ番組は一種の「ショー」として視聴者を魅了していた。当然、視聴者が目にするのはその舞台の華やかな表の部分だけであり、楽屋裏を覗くようなことはできなかった。その時代には、芸人もテレビの中で裏側の部分を語るようなことはほとんどなかった。
だが、2000年代に入ったあたりから徐々にその不文律が破られ、芸人たちがトーク番組で笑いのテクニックなどを語るようになった。
そのきっかけの1つが『アメトーーク!』(テレビ朝日系)で品川庄司品川祐がプレゼンして実現した「ひな壇芸人」という企画である。
この回では、ひな壇に座ってトークをすることを生業としている芸人たちが集まり、
そこで必要とされる能力や自分が目立つためのテクニックについて事細かに語った。


それは本来ならばテレビを見る側には関係のない話である。
だが、この番組ではそれをあえて表舞台で見せた。こういう企画によって、視聴者はテレビの向こう側に知られざる「職人の世界」があるということを学んでしまった。これ以降、テレビでは芸人が裏の部分を見せるようなトーク番組がたびたび放送されるようになった。
現在、このジャンルで最も注目を集めている番組が、2019年に始まった「あちこちオードリー』(テレビ東京系)である。この番組のプロデューサーの佐久間宣行がMCに起用したのがオードリーの2人だった。
オードリーの若林正恭は、相手に寄り添って話を聞く能力が高く、自分の興味に従って質問を投げかけて、相手の本音を引き出すことができる。一方、相方の春日俊彰は明るく微笑み、ゲストが何でも話しやすい雰囲気を作っている。


この番組では台本もなく、現場でディレクターから「こういう質問をしてください」といった指示が出ることもない。若林自身が知りたいことや疑問に思うことをゲストにぶつけていく。
後は単に聞き上手であるだけでなく、自分の中の純粋な興味や関心からゲストに向き合っている。若林自身がテレビの仕事で悩んだり考えたりした経験があり、その実体験に基づいて話を聞いているのでピントを外すことがない。


ほかの番組では聞けないゲストの本音が聞けたり、ディープなテレビ論・お笑い論・仕事論が展開されたりすることもある。照準を絞ってどこまでも話を掘り下げていくところにスリリングな面白さがある。
若林はラジオ番組の「オードリーのオールナイトニッポン」(ニッポン放送)でも、仕事での悩みや不満を赤裸々に語るスタイルで人気を博している。芸人が単に裏側を話すだけでは業界人向けの内輪ネタになってしまうおそれもある。だが、若林の巧みなリードによって、それが多くの人にとって興味深いものになるし、そこからお笑い以外のビジネスや人付き合いにも応用できるような教訓を学べたりもする。
聞き手としても語り手としても唯一無二の能力を持つ若林は「芸人裏側語りブーム」のキーパーソンなのだ。