いつまで公開されているんだろうか。
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この作品が傑作であることは言うまでもないんだけど、驚くべきはその反響だった。
Xのトレンドに2日間ほど表示され続けていたし、われらがホームはてな村のブクマコメントもこうだ。
昭和の作品の復活公開が700台を記録するなんて。
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この作品のすごさや背景などは、既に多くの人が描いているからちょっとだけ箇条書きで
・このページ内で伏線というか、いろんな情報を過不足なく…いや今の視点で言うと手早く処理しすぎるぐらいして、そしてこのページ数にまとめてる。いま現在だったら、これで週刊連載5話ぐらい費やすだろう。良い悪いではない(それぐらいページを費やすから生まれるものも絶対ある)が、ただ一般公開して全部マルっとよんでもらうにはこっちが有利ね。
・こういうタイプの作風っていうのは、いまでも探せば何人かの作者に存在してる。それを自分はFスピリットと呼んでいる。石黒正数、篠原健太、九井諒子、椎名高志といった面々だ。藤子好きであることを公言してる人も多いな、創作の系譜は血よりも濃い。
・そして、今度…いつからだっけ?来年1月からかな始まるFスピリットの篠原健太「ウィッチウォッチ」は,根拠もなく断言するが、間違いなく「エスパー魔美」の影響を受け、令和にエスパー魔美を再現しようとする試みだった。怪物くんも入ってるからF&A。
その話はまさに同作の連載が始まって第二話の時にかいたねん。
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そういう視点でもアニメ化を見守ってください。
1話のなかに起承転結、小ネタと大ネタを繋げて最後に綺麗なオチにするやり方は、篠原先生ほとんど執念のように工夫を凝らしていまでもやってて、そのへんは投げっぱなしも多いジャンプの中で逆に目立つ(笑)
・「サマードッグ」という事件や現象がほんとにあったの?という話で興味深い情報を。
夏に犬の話題が続きましたので、以前触れたネタを再度ご紹介。
— 河井質店 (@kawai_shichiten) September 1, 2024
『エスパー魔美』「サマー・ドッグ」は避暑地で飼われ、捨てられた犬たちの悲しみと怒りを描いた物語ですが、こちらは1977年10月9日の朝日新聞に掲載された桐島洋子氏のエッセイを藤本先生が読んで、描かれたものと思われます。 pic.twitter.com/h9OQCeBgPE
ちなみに「燃えよドラゴン」のロバート・クローズ監督が1977年(日本公開は1978年)に「怒りの群れ」という映画を制作しているのでこちらも影響されてるかもしれません。
— 開帳 ◆X9lAMMsI0I (@nekoyamaseven) September 25, 2024
魔美のいない「サマードッグ」です。 https://t.co/L4sTM5DjZx pic.twitter.com/D5HC96zhlF
この映画は初めて知りました。
— 河井質店 (@kawai_shichiten) September 25, 2024
ちょっと調べてみましたが、アメリカ公開が1977.11.18で日本公開が1978.10.20のよう。
「サマー・ドッグ」は1978.8発表ですから描かれたのは恐らく7月ということで、藤本先生が日本でこの映画をご覧になった可能性はかなり低いと思われます。… https://t.co/Z9uJOpCAPs
さて、それはそれとして本題だ。
まんがの「古典」継承は…「適宜、名作の期間限定無料公開をする。そのためのポータルを作る」が正解?
この「サマードッグ」は1978.8発表の作品だという。80年代じゃないや、70年代!!
それでも、これだけ注目され、高い評価を受ける。
だけれども(二重否定)、藤子・F・不二雄という存在はいまでもドラえもんが現役の超人気キャラクターであり、その知名度も権威も、戦後で3本の指に入ることも事実。
そのまま参考にはならない…けれども(三重否定)、ひとつのヒントになるのではないか?
何のヒント?
それはずっと個人的に追ってきた、この問題。
…と、言いますかですね、20世紀の少女漫画で、今の40代以下に広く知られている作品って、「ベルばら」「セーラームーン」「ちびまる子ちゃん」以外、何があるんだろ? 「ガラスの仮面」ですら怪しい。あれほどの傑作の山が連なっているのに。
— 丹治吉順 a.k.a.朝P, Tanji Yoshinobu (@tanji_y) February 3, 2018
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鬼太郎、いままたアニメ放送中なので現役なんだけど、水木しげるを持ってくると、説明が余計にややこしくなる恐れがあって……。ほかのマンガ家の人々と世代が違ってるし、貸本や劇画の代表として扱うわけにもいかないし。。。
— 伊藤 剛 (@GoITO) May 27, 2018
togetter.com
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漫画の”古典”。古典と言っても、自分たちの世代が普通に現役で楽しんでいたマンガですが、それが子供、孫?の世代に読まれるとは限らない……というか読まれてない。
私なんぞの感覚では
— Gryphon(INVISIBLE暫定的再起動 m-dojo) (@gryphonjapan) February 3, 2018
「機動警察パトレイバー」
「寄生獣」
「MASTERキートン」
「エリア88」
などが、いまの世代に読まれないんじゃないか、継承されないんじゃないかと思ってたりしたのですが、どれもそれなりに映像化やスピンオフ、続編などが出て今のところ延命中なんだよな…
それにどう対処すべきか、という点で、今回のサマードッグ人気を参考に、ラフスケッチする…あ、そうだ、この前の萩尾望都「半神」公開の反響も参考にしている。
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漫画の「古典継承」についての一試案
・今でも人気の作家、昔は人気だが今は出版部数が動かない作家など合わせて「隠れた傑作」を発掘、一定期間、定期的に無料公開をしていく。
・それを公開するサイトは一作品や、一出版社では広がりがなく、商業的な都合などにも左右されるので、できれば出版社横断的な中立のサイトが望ましい。
・できれば文化庁?など公的なお墨付きのあるところが、クールジャパンの予算とかも使って(笑)、関わるとよろしい。
・選者は漫画評論や実作などで実績ある具眼の士を中心としつつ、この人が紹介すればそれだけで1000冊売れる、という人気芸能人やインフルエンサーが混じってもいい。そこは兼ね合いだ。
・諸外国語の翻訳などをつけるというのもいい。そうすりゃ文化振興とか国家PRみたいな(予算の)名分も立つだろう。
・学校教育と連動して、そのサイトで公開された漫画を題材に授業、とか感想文募集なんてのもありそう。
その結果、若者の中には、そこで名を知った作品名、作者名から、自主的に他の作品を読み、購入する人もいるだろう。それで「古典」は継承される
もちろん、そんな古典の継承を人為的にやる必要はない。人気ある作品はずっと読み継がれ、人気の無い作品は消えていく。
発掘や継承の努力は利害関係のある作者や出版社やテレビ局が自助努力すればいい……という考え方もあろう。
SHOGUNのエミー賞で話題になった「だが時代劇の火は消えつつある!それでいいのか?」という議論にも通じる話なのだけど。
ともかく、エスパー魔美(及び「半神」)の意外なほどの熱い反響をきっかけに、考えたことを書き留めておいた。(了)