「ヴィンランド・サガ」が二期目を無事終えたそうで(一機も含めていわゆる2クールだから、実質四期目ともいえる)
題材も含めて「地味」な面も否めず、描写的にも残酷と言える場面が多い。一機はNHKという太い客のもとで作ったが、2期目はいきなりBS11……これで大丈夫かと思えば非常に多い「海外の客」がついてて、海外の配信が好調らしい(そういう話はどんどん聞こえていて、ほぼ間違いないんだろうが、はっきりと数字や記録でわかるところが個人的には見つからない。「ヴィンランド・サガが海外で人気がある」を証明するランキング的なもの、誰か教えてください…)
さて、遡って五月の末だったか、原作者の幸村誠がこんなツイートをしていた。
作劇論として面白かったので、記録しておきたい。
そうかぁこれが正解か…!こう、トルフィンエイナル決意のシーンとね、クヌート対談とね、二つのピークがあるんですよ。これをどう描くか、どういう順序で描くと正解なのかと
— 幸村誠 (@makotoyukimura) May 30, 2023
おはようございます。ヴィンランド・サガ第21話「勇気」ご視聴ありがとうございました!あいさつを忘れてました。
今からネタバレを!します!原作未読の方すみません。
— 幸村誠 (@makotoyukimura) 2023年5月30日
そうなんですよね…この章全体を締めるシーンはトルフィンとエイナルの握手シーンなんですよね。農場での経験を経てトルフィンエイナルが最終的にどういう心境に達したのか、ですよ。レッツゴーヴィンランド。クヌートとの事もここに内包される。
もう一つ、エイナルの感情の切り替えの速度です。原作は早すぎた。アルネイズが死んだんです。もう彼は一年くらい落ち込んでても不思議じゃないんですが、埋葬のすぐ後にクヌートとの対談が入ってまして、スケジュールが押してますので作者としてはエイナル氏にはすぐ切り替えていただかないと。ええ。
— 幸村誠 (@makotoyukimura) 2023年5月30日
アニメを拝観してますとこういう、主に間の取り方、時間の使い方や感情の流れの自然さなどの面でハッとさせられます。
— 幸村誠 (@makotoyukimura) 2023年5月30日
正解を教えていただいているというか…なんというか、血の通った人間ならこういう物語を作るのだな、と。ボクはアレですお母さんのお腹に人の心を置いてきてしまったんですね。
あのーゼルダの伝説の、ライフの、ハートの器。たぶんあんな感じの見た目だと思います「人の心」。
— 幸村誠 (@makotoyukimura) 2023年5月30日
みんな持ってるんでしょ!持ってないボクのこと残念な人みたいに思ってるんだみんなして!うわー!
でもこの、奴隷編を描いたのは10年前なんですが、10年前は多少の強制なら問題なく描けたんだなぁ。
いえね、今このアルネイズ埋葬のシーンをボクが描こうとすると、まず間違いなく、エイナルがお墓の前から立ち上がってくれないと思うんです。「今日はこのあとクヌート王との対談です。ハイハイ切り替えて!」ってボクマネージャーが手を叩いても「今そういう気分じゃないんで…」ってエイナルは言う。
— 幸村誠 (@makotoyukimura) 2023年5月30日
年々、時間とともに登場人物達がボクの言うことを聞かなくなっているのです。困ってます。
— 幸村誠 (@makotoyukimura) 2023年5月30日
漫画家さん達がよく「キャラが勝手に動く」っておっしゃるじゃないですか。その現象ボク全然ないんだぜ…「キャラが全然動かない」しかないぜ。彼らがしたくないことをさせようとしてもダメなんです。
作劇上、物語の進行上、この人にはこう動いてほしいという要望がボクマネージャーにはあるんですが、たいていアイツらは「すみませんオレそういうのNGなんで」とか言う!ハラ立つ!なんなんアイツら!言うこと聞きなさいよ!ボクはマネージャー兼神だぞ。
— 幸村誠 (@makotoyukimura) 2023年5月30日
しょうがないんです、だから今のボクの仕事はなんていうか、こう…
— 幸村誠 (@makotoyukimura) 2023年5月30日
ボク「今度の休日どこ行くー?」
キャラA「海じゃなきゃやだ」キャラB「キャンプしたい」キャラC「温泉がいい」
ボク「えーと、海のそば、キャンプ場、温泉…」
みたいな、全員の要望を聞いて旅行プランを立てる人、という感じ。
マッジでほんと、「そのプランならオレ旅行いかない、留守番してる」とかいうヤツがいるの!全員の最大公約数がそんな綺麗に見つかるわけないだろ!と言いたい。
— 幸村誠 (@makotoyukimura) 2023年5月30日
あれ愚痴だなこれ。アニメの感想じゃないね。
林勇さん、オルマルの成長を演じ切って下さってありがとうございます!
ヴァイキングの男に生まれますと、「戦うのが怖い」と正直に言うことができない。臆病な男に価値はないのです…。男達は臆病者と他人に思われることにひどく臆病です。
— 幸村誠 (@makotoyukimura) 2023年5月30日
ということは。オルマルのした臆病者の告白は、すごく勇気がある行為という事ですよね。ややこしいね。
漫画家さん達がよく「キャラが勝手に動く」っておっしゃるじゃないですか。
その現象ボク全然ないんだぜ…「キャラが全然動かない」しかないぜ。
彼らがしたくないことをさせようとしてもダメなんです。
いや、これ正反対のように見えて、要は同じこと言ってるじゃんねぇ。
創作で物語を描く人間じゃないと、この「キャラが勝手に動く」も「キャラを動かしたいのに、その通りに全然動いてくれない」も体験できない、稀有な特権だが…
なんなんアイツら!言うこと聞きなさいよ!ボクはマネージャー兼神だぞ。
(略)
しょうがないんです、だから今のボクの仕事はなんていうか、こう…
…(略)全員の要望を聞いて旅行プランを立てる人、という感じ
ああ、だから全員の要望を聞いて旅行プランを立てる時間が必要になり、連載の掲載を飛ばすわけか(笑)
…い、いや、だからこそぐっとこらえて「♪あんたのペースで全然いいんだよ 落ち着いて」とたたえあうべきなのかね
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「♪ヒストリエよりは 全然ましだよ それでもね」とも、言える。