豪華客船に乗り込んだセレブや富豪ら"持ってる"人々の表層的で愚かしくて無自覚に傲慢な生態をさんざん見せつけられて(船沈まないかな…)と思ってたら船沈む映画を上映します。で、一行は無人島に漂着。すると無能連中の頂点に君臨するのが"持たざる者"だったトイレ清掃員で…面白くなってきました。 pic.twitter.com/jkgd9UD4cc
— サールナートホール/静岡シネ・ギャラリー (@Sarnathhall) January 12, 2023
ヒエラルヒーが転覆して、持つ者が持たざる者に、持たざる者が持つ者に。『フレンチアルプスで起きたこと』や『ザ・スクエア 思いやりの聖域』でも現代社会の規範や基盤がちょっとしたことで壊れたり反転したりする様をシニカルに描写してきた、カンヌ常連の鬼才リューベン・オストルンドの新作です。 pic.twitter.com/6OMTd9GeH0
— サールナートホール/静岡シネ・ギャラリー (@Sarnathhall) 2023年1月12日
『逆転のトライアングル』今春上映予定。本作もまたカンヌ映画祭で最高賞パルムドールを受賞しています。"転覆後"が楽しみかもしれませんが、予告の通り、この監督の苦くてブラックで意地の悪いテイストはストーリー前半から存分または存分以上に味わえるはずです。pic.twitter.com/4I1imXKHKi
— サールナートホール/静岡シネ・ギャラリー (@Sarnathhall) 2023年1月12日
こちらも遭難する映画ですが、ご覧の通りテイストも展開もぜんっぜん違います。https://t.co/pUofwg9Ekm
— サールナートホール/静岡シネ・ギャラリー (@Sarnathhall) 2023年1月12日
こちらも異なる価値観/世界観に生きる者同士が乗り物に乗り込む映画ですが、テイストや展開はやっぱり違います。https://t.co/HXMXXOSNwf
— サールナートホール/静岡シネ・ギャラリー (@Sarnathhall) 2023年1月12日
これも人間の価値が何によって決まるのかという映画ですが、やはりそう、テイストは異なるし、実話です。https://t.co/zB5tjMqXkZ
— サールナートホール/静岡シネ・ギャラリー (@Sarnathhall) 2023年1月12日
これで思うのは、この『サールナートホール/静岡シネ・ギャラリー (@Sarnathhall) 』アカウント氏の紹介する映画は、実際にその施設に行って鑑賞できるかどうかに関係なく、面白い小規模映画を知る情報源としてフォローしておくといいんじゃないか、ということです。
というか、この前「ホロコースト会議映画」「911テロの遺族に、どう補償金を分配すれば一番”公正”か悩む弁護士の映画」
紹介したでしょ?それも両方こちらのアカウントですし。
m-dojo.hatenadiary.com
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さて、それはそれとして。
この『逆転のトライアングル』という映画、新機軸はたぶん色々盛り込んでいるのだろうけど、基本設定が、正直「なんか、ベタやな!」と思わないではない。
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じゃあ、どんな過去作があるんだ、
どこで聞いたんだ?となると、いまいち分かんないのだけど……
という時に、偶然べつの連ツイを見た。元はイギリス階級社会の風刺小説?(なのかもしれない。元の書き手も、最古の作品などと断言してるわけではない)
連ツイするほど落とし込めてないけど、19世紀のイギリスの貴族達はどうも然程知識や教養に秀でてる訳ではなく、酷いのになると外国の教養どころかシェイクスピアも観た事がないのもいたみたいね。
— エリザ (@elizabeth_munh) January 26, 2023
むかし、イギリス自身が自らを辺境の二等国だと認めていた頃は遣唐使のごとく良家の子女は大陸に赴いたんだけど、イギリスが世界一の大国となるとそう言う習慣もなくなる。
— エリザ (@elizabeth_munh) 2023年1月26日
アッパークラスは自分のカントリーハウスに飾ってる絵画の来歴も分からなくなった。と言う。 https://t.co/vI025fxZLc
二等国である自らを恥じて外国に学ぶ、と言う姿勢からも明らかなように、教養を積む、と言うのは這い上がるための行為であって、貴族のやる事じゃないと言う思想があったみたい。寧ろガリ勉格好悪い、みたいな。
— エリザ (@elizabeth_munh) 2023年1月26日
本読む暇があったら社交したり、狩りしたり、領地を見て回れ。と言うのがこの頃の貴族。
そんな訳でこの頃のアッパークラスは実力主義で成り上がってきた使用人に圧倒される事もしばしばあったみたい。
— エリザ (@elizabeth_munh) 2023年1月26日
上級の使用人である執事とか、家令ともなると、のほほんと遺産を継承しただけの主人とは、もうどっちが主人か分からない。主人は執事に万事委ねて依存する。
じゃあ執事にとって主人はアホな無能者に見えるかと言うと然にあらず、執事の方も主人に依存してたりしたみたい。
— エリザ (@elizabeth_munh) 2023年1月26日
実力主義で成り上がったと言っても、それは使用人のヒエラルキーの中でのこと。主人なしでは執事と言う地位そのものも無に帰す
寧ろ主人が無能者であればあるほど自己承認が満たされる
ワーキングクラスから這い上がって執事まで上り詰めるような人はとびきりの切れ者だけど、仕える家の看板あってこその自己の地位だと骨身に染みてる。労働者は労働者でも伯爵家の執事と、工場労働者とでは格が違う、と彼らは主人の家を自らと一体化させてアイデンティティにしてたみたいね。
— エリザ (@elizabeth_munh) 2023年1月26日
そんな訳で、主人より頭が切れるし、体力も上回り、何ならフットマン出身だから容姿すら上回る執事がボンクラな主人の外付け式知識教養装置として常日頃から付き従い、主人はそれに依存する、と言う形態になってたみたい。
— エリザ (@elizabeth_munh) 2023年1月26日
まぁ雇用をもたらす側が1人で何でも出来るなら執事も要らんもんね。
この辺を面白おかしく描いたのがピーターパンで知られるバリーの『あっぱれクライトン』で、平等思想に被れたローム伯爵は月一で使用人と主人が対等となるパーティーを催すも、使用人達、特にお屋敷の完璧な執事クライトンは凄まじい嫌悪感を露わにする。
— エリザ (@elizabeth_munh) 2023年1月26日
使用人達は使用人のヒエラルキーを厳格に守り、それ故にこそその中での栄達に価値を見出している。
— エリザ (@elizabeth_munh) 2023年1月26日
それを主人自ら壊されては土台が揺らぐ。月一でも主人とベルボーイが対等なら、執事の権威って何だ。
さてクライトン一家はある日ヨットで旅行に出るけど、遭難して無人島に流れ着く。
ローム伯爵は無能であり、お嬢さん方はスプーンより重いものを持った事がない。
— エリザ (@elizabeth_munh) 2023年1月26日
無人島におけるヒエラルキーの頂点はクライトン執事となり、一家は無人島でクライトンに指図される生活を満足して過ごす。しかし2年後、救助船が。
クライトンは迷わずSOSを送ろうとする。止めたのはお嬢さんだった。
お嬢さんは頼り甲斐あるクライトンに結婚を申し込み、クライトンもそれを容れていた。お嬢さんとしてはイギリスに帰ると許されない結婚なのが明らか。しかしクライトンは断固としてSOSを打ち、一家は救出され、ヒエラルキーは元通りに。
— エリザ (@elizabeth_munh) 2023年1月26日
クライトンにとって身分秩序の崩壊した生活は耐えられない。
「あなたのように優秀な方が上に立てないイングランドは何か間違ってると思いませんか」
— エリザ (@elizabeth_munh) 2023年1月26日
「お嬢様、たとえお嬢様の口からでもイングランドの悪口は聞きたくありません」
で、幕。
ワーキングクラスがアッパークラスの面倒を見てやってるのさ、と言う自負が伺える。
一方でワーキングクラスはアッパークラスを皮肉りはするけど、打倒して上に立とうとか、そう言うことは考えてないのね。イギリス人の階級意識は面白い。
— エリザ (@elizabeth_munh) 2023年1月26日
あっぱれクライトン
J.M.バリー 著,福田恒存, 鳴海四郎 共訳
詳細情報
タイトル あっぱれクライトン
著者 J.M.バリー 著
著者 福田恒存, 鳴海四郎 共訳
シリーズ名 市民文庫 ; 第1905
出版地 東京
出版社 河出書房
iss.ndl.go.jp
福田恆存訳か!!
そのへんのラノベのコミカライズでやっぱり似た設定のマンガがあった(筈だ)。
雑誌サブスク「ブックウォーカー」で読める、どこかの雑誌のどこかの連載で、やっぱり異世界だか無人島だっかに、高校のクラス?(だったかなあ)が丸ごと飛ばされる?か遭難する。
その中で、むかしからサバイバルだか野外キャンプだか忍術だったかを趣味・道楽(特技)にしてて、クラスの中では浮いた変人扱いだった主人公が複数生まれたグループの、リーダーの一人となり、ほかの通常のクラスヒエラルキーをそのまま持ち込んだ…すなわちそこでは”無能”のグループと対立する、みたいな話があったような無かったような!
なんでこんなにぼんやりしてるかというと、ブックウォーカーのサブスク雑誌を流し読みしてると、異世界っぽい作品と雑誌が脳内で融合されて、マジでどの作品でどんな内容だったか、ほどよく分かんなくなってくるんだよ!!!(お疑いの向きはやってみろ!!!)
「バーナード嬢曰く」でも、はじめ面白がって「なろう小説」を読んでいたド嬢が、この奔流にのみ込まれ……
ちなみに今月のRexに掲載の『バーナード嬢曰く。』は、なろう小説にハマるド嬢の話です。 pic.twitter.com/EIHNURLNqO
— 施川ユウキ(ハジメ) (@ramuniikun) July 30, 2019
これの意味は、ブックウォーカーのサブスクに真面目に付き合ってる人間だけが初めてわかる……はず。
あ、文章にしてみると、ちょっと森恒二先生の「自殺島」「無法島」シリーズに似てるっちゃ似てるな。
「ソウナンですか?」では平時のスクールカーストと非日常のそれの対比、みたいな構図は出てきたかな?
あまり覚えてないや
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