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John 8:32 Then you will know the truth, and the truth will set you free."  複数ブログの過去記事を移管し、管理の委託を受けています/※場合により、語る対象の「ネタバレ」も在ります。ご了承ください 

陰謀?野心?いや当事者はむしろ「不安」と「恐怖」~『大乱関ヶ原』は等身大の戦国人描く、宮下英樹新連載

そういうわけで、太陰暦太陽暦の差はともかく、きのう9月15日が関ヶ原合戦
翌16日は石田三成も、島津義弘も、…その他もろもろの敗将が必死に山中を逃走、東軍も落ち武者狩りの真っ最中ってことでしょうか。


そんな中で紹介するのが…7月末に新連載が始まるよーっと紹介した…

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そう、宮下英樹氏の「コミック乱」新連載、「大乱関ヶ原」第一回目のレビューであります。

宮下英樹「大乱関ヶ原

●不変の輝きを放つ巻頭カラー!!
鬼平犯科帳さいとう・たかを/[原案]池波正太郎/[脚色]金成陽三郎

●「センゴク」の作者が放つ超大型新連載
『大乱 関ヶ原宮下英樹

池波正太郎原作 不朽の名作
剣客商売大島やすいち/[原案]池波正太郎/[脚色]島田悠子

●多彩な連載陣
『ぶらり 釣り侍』田中つかさ
『羆撃ちのサムライ』本庄敬/[原作・シナリオ]井原忠政
『巨乳純情剣 紗希』八月薫/[シナリオ]鈴木涼生
『龍馬のグルメ』荒木俊明
『再動~幸村になる日~』一丿屋友里
『ハナシノブ』高橋功一郎
『お江戸八百人間模様』じゃんぐる堂


たぶん、シリーズを通して貫かれるであろうコンセプトは、この第一回でもびんびんに伝わる。

実に、シンプルなコンセプトだ。


関ヶ原で、当時の世界でも最大級の会戦が行われるまでの過程において、だ~~~れも『俺がまさに計算した通りに、こんな状況ができた!!』って人間はいなかった」ということであります。


つまり、「神君家康公の、全てをお見通しのご慧眼」…山岡荘八のような史観も、
「タヌキ親父家康の、胸くそが悪くなる陰謀と計略」…司馬遼太郎の(多少は隠しつつ、やはり大阪人の信条としては隠しきれない)そんな史観も、
結局は、
「家康があれこれと計算し(それに石田三成が負けじと計略を練って)、そういう天下分け目の大戦争を導いた」というのも、彼や彼らが、パリピ孔明のごとき未来への見通しを持っていた、というふうに逆算で考えてしまいがちだ、ということなのです。

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しかし、実際に見れば、結局誰もが未来をロクに見通せてなんかいない。むしろ野望の前に不安や恐怖が先立ち、警戒を相互にしていくうちに不信と敵意が増幅されていく、そんなスパイラルの結果として「関ヶ原」はうまれたのではないか?

大乱関ヶ原 宮下英樹 先々のことなぞ考えられるわけがない

実はこれ、前後して読んだ最近の本「論争関ヶ原合戦」も、そんな通低音が響いているのです。

通説・俗説・珍説を徹底論破! 「天下分け目の戦い」の真相を解明する。「淀殿や三奉行は三成派」「直江状偽書」「小山の評定は後世の創作」「戦は一瞬で終わった」「関ヶ原は戦場ではない」「問い鉄砲はなかった」……。四百年を経た今も日本史上最大の野戦について激しい論戦が繰り広げられている。そのうち、注目を集めた新知見を、第一人者である著者が吟味し、総合的な歴史像を構築する。

たとえばの話、太閤死して7日後の五大老五奉行(この名称も諸説ございます)の会議はまず第一議題が「朝鮮出兵中の軍の撤退」である。
しかし、これも歴史の逆算史観で見ると、滞りなく大陸侵攻軍は撤退し、明も朝鮮もまずはホッとしていただけ…とわかるが、現在進行中の日本側から見れば「総司令官・太閤殿下の急逝で撤退するってわかったら、そりゃ明も朝鮮も追撃してくるだろ常考。というか日本まで逆侵攻してきたらどうする?」なんて”不安”でいっぱいの中の政策決定だった。

宮下英樹新連載 大乱関ヶ原

企業で譬えれば、ワンマン会長の無駄な世界進出事業を、どう無事に「切り捨て」て縮小するか、って議題である。それも失敗したら大型倒産、みたいな大規模な赤字で・・・・・・いかに権力欲旺盛な人間と言えども、ここで責任者になりたいと思うかね?、と。
いや「だからみんな嫌々なんだよ、責任感のみで引き受けた」というには、みな百戦錬磨のつわものに過ぎる。

不安も恐怖もいっぱいで、だからこそ”戦場の霧”が立ち込める、その風雲の中に彼らは一歩も二歩も踏み出していく・・・・・・・・・

のだが…、再び企業で譬えると
「いくら会長亡きあとはわしらに任せた、と言われても、海外事業の詳細を知ってるのは会長直轄の秘書室グループだけか…なんかいけ好かないが、まずは奴らに任せるしかないか」
「もー、こっちは忙しいんだよ!やること山積みなんだよ!会長は分かってらっしゃったが、今後は役員全員に説明して、全員のハンコ貰うわけ??大丈夫かなオイ……」
なんてところから、既に齟齬が始まってる(笑)



と、いうのが、この「大乱関ヶ原」のコンセプトであろう、と第一話を読んで、勝手に決めてしまったのですが、いかがでしょうかな。

まあ、この第一話だけでも読んでみそ。