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John 8:32 Then you will know the truth, and the truth will set you free."  複数ブログの過去記事を移管し、管理の委託を受けています/※場合により、語る対象の「ネタバレ」も在ります。ご了承ください 

ある一流IT企業に「常にデータベースに載らない」謎の男がいた。凄腕の諜報員?実は…

1990年代半ば、アメリカ、カリフォルニア州のIT企業、サン・マイクロシステムズでは、ある一人の社員のデータがデータベースから消えるという不可解な事件が繰り返し起きた。社員に関するデータに限って、何度入力しても、システムから跡形もなく消えてしまうのだ。

なんか、スパイ小説、ミステリーのような出だし。



だが、出オチ。

しかし、人事部にはなぜその社員、ティーブ・ナル (Steve Null)のデータだけが消えてしまうのか、理由がわからなかった。 実は、彼の姓「ナル(Null)」は、データベースでは「データがない」を意味する。「何も入カするデータはないよ」という意味だ。人事部ではそれに気付かずに毎回「ナル(Null)」と入力してしまいそのたびにデータが消えるはめになったのだ。(略)…人事部では毎度データが消えていたにもかかわらず繰り返し「NULL」と入力し、なぜそうなってしまうか誰も理由を考えようとしなかった。

その後、データベースは進歩したが、この問題は残り続けた。相変わらず「ナル(Null) 」 姓は存在していたし、コンピュータ・コードではデータが存在しないことを「Null」と表現し 続けたからだ。「ナル (Null)」姓の社員のデータが消えなくても、その社員のデータの検索ができないという問題もあった。「ナル (Null)」という社員を検索しようとすると、「そんな社 員はいない」という結果が返ってきてしまうのだ。


こういう名称のバグは色々あるもので、意図的に発現させてやろうという人もいる。
中野翠のエッセイ集の三作目は「最新刊」という表題で、書店が少なからず混乱したとも聞くし、ながいけんが最初の単行本を出すときは、「書店で注文しやすいよう」に、書名タイトルを「じょじょの三巻」や「レジを開けて、中身を全部渡せ」にしようともくろんでいたとかとかとか。




本題の名前にもどると
ま、それだけなのだが、本人にとってはいささか深刻ではある。

だが、このほかにも「データベースが困る名前三銃士」を連れてくることは可能で、紹介記事では

ブライアン・テストさん
エイヴリー・ブランクさん
ジェフ・サンプルさん

を紹介している。

データベースが壊れる名前三銃士

例によって「屈辱の数学史」より。

私たち現代人の生活は数学に依存している。コンピュータのプログラム、金融、工学、すべての基礎は数学だ。
普段、数学は舞台裏で静かに仕事をしていて表に出ることはない。
表に出るのは、まともに仕事をしなくなったときである。

インターネット、ビッグデータ、選挙、道路標識、宝くじ、オリンピック、古代ローマの暦……他。
本書では数学のミスによる喜劇的、ときに悲劇的な事例を多く取り上げている。
謎解きを楽しむように本書を読めば、ミスを防ぎ危険を回避できるようになるだけでなく、数学に親しみを感じるようにもなるだろう。
スタンダップ数学者である著者自身の失敗談やジョークも多く盛り込まれた本書は、「屈辱」をとことん楽しめる一冊だ。
英国「サンデー・タイムズ」紙 数学本初のベスト・セラー作。


■内容
【第0章 はじめに】

【第1章 時間を見失う】
四三億ミリ秒では十分とは言えない/カレンダー/暴挙に出たローマ教皇/時が行き詰まる日/時をかける戦闘機

【第2章 工学的なミス】
物騒な数に架ける橋/共振が鳴り響くとき/揺れるのは飛行機だけじゃない/浮き沈みにもご注意を/曲線美の落とし穴/お足元には気をつけて

【第3章 小さすぎるデータ】
善良なデータが悪と化すとき/Excelが遺伝子操作?/スプレッドシートの限界/エンロン事件

【第4章 幾何学的な問題】 
三角測量/月の幾何学/死のドア/Oリングのせいだけじゃない/歯車の噛み合わせ

【第5章 数を数える】
組み合わせを数える/その組み合わせ、十分ですか?

【第6章 人間は確率が苦手】
死のコード/コンピュータが苦手なこと/わずかなズレの危険性/0で割らないで

【第7章 確率のご用心】 
重大な統計学的誤り/コインの表裏/宝くじ必勝法/通説の噓/確率についての私的意見

【第8章 お金にまつわるミス】
コンピュータ時代のお金のミスコンピュータの時代にお金のミスはどう変わったか/アルゴリズムが生んだ高額本/物理法則の制約/数学への無理解が生んだ高額報酬

【第9章 丸めの問題】 
どこまでも下がるインデックス/遅いのに新記録?/スケールの違う数字/サマータイムの危険性

【第9.49章 あまりにも小さな差】
ボルトが合ってさえいれば

【第10章 単位の問題】 
摂氏と華氏/重(・)大問題/値札もお忘れなく/グレーンの問題

【第11章 統計は、お気に召すまま?】 
平均的な制服/平均が同じでも違う/バイアスはどこにでも/相関関係と因果関係

【第12章 ランダムさの問題】 
ロボットはランダムを作れるか/擬似乱数/擬似乱数発生のアルゴリズム/「ランダム」を誤解してませんか?/ランダムか否かの見分け方/現実の物体に勝るものなし

【第13章 計算をしないという対策】
「スペース」インベーダー/五〇〇マイル先までしか届かないeメール/コンピュータと交流しよう

【エピローグ】過ちから学ぶこと


■著者について
マット・パーカー Matt Parker
オーストラリア出身の元数学教師。イギリスのゴダルマイニングという歴史ある(古過ぎるのではと思うこともある)街に暮らす。
他の著書に『四次元で作れるもの、できること(Thingsto Make and Do in the Fourth Dimension)』がある。
数学とスタンダップ・コメディを愛し、両者を同時にこなすことも多い。
テレビやラジオに出演して数学について話す他、ユーチューバーとしても活躍。
オリジナル動画の再生回数は数千万回以上、ライブのコメディー・ショーを行えば、毎回、満員御礼という人気者だ。

■訳者について
夏目 大(なつめ・だい)
大阪府生まれ。翻訳家。大学卒業後、SEとして勤務したのちに翻訳家になる。
主な訳書に『6時27分発の電車に乗って、僕は本を読む』、ジャン=ポール・ディディエローラン(共にハーパーコリンズ・ ジャパン)、『エルヴィス・コステロ自伝』エルヴィス・コステロ(亜紀書房)、『タコの心身問題』ピーター・ゴドフリー=スミス(みすず書房)、『「男らしさ」はつらいよ』ロバート・ウェッブ(双葉社)、『南極探検とペンギン』ロイド・スペンサー・デイヴィス(青土社)、『ThinkCIVILITY』クリスティーン・ ポラス(東洋経済新報社)など訳書多数。