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John 8:32 Then you will know the truth, and the truth will set you free."  複数ブログの過去記事を移管し、管理の委託を受けています/※場合により、語る対象の「ネタバレ」も在ります。ご了承ください 

「名前が判明している世界最古の人物」は、シュメールの『クシムとニサ』。職業はビール原料の倉庫管理。

メソポタミアから出土する、楔形文字の粘土板の解析に当たっているベルリン自由大学の研究だという。…

ウルクというシュメールの都市(現在のイラク南部)で発見されたその粘土板は、紀元前3400年から3000年にかけてのものだった。つまり、いまから5000年以上も前のものということになる。
シュメール人が文字を使うようになったのは、もともとは文章を書くためではなく、商品の在庫量を記録するためだったらしい。文字を使うと、人間は脳本来の能力を超えることをできるようになる。この粘土板はその最初期の例だろう。
集団が小さく、取引も単純だった頃は、自分の頭ですべてを記憶することができた。しかし、都市が誕生すると、税金もかかるようになり、複数の人間の共有資産も多くなった。そうなると、すべてを頭に入れるのが困難なので、頭の外に記録するようになったのだろう。
文字で記録しておけば誰でも見られるので、見知らぬ人を信用して取引をすることも可能になる(皮肉なことに、文字がオンラインになってからは、この信用が失われ始めている。ただ、その話はここには関係がないので、いったん脇に置いておこう)。
シュメール人の粘土板の中に、「クシム(Kushim)」という名前が記されたものがある。それに加えて監督者らしき「ニサ(Nisa)」という名前が記された粘土板もある。クシムは、いま、名前を確認できる最も古い時代の人物だという歴史家もいる。
何千年もの時を超えて残ったのは、統治者でも戦士でも宗教指導者でもなく、一人の目立たぬ経理担当者の名前だったというわけだ。クシムの名前が記された粘土板は全部で一八枚残っており、それによると、クシムの仕事は、ビール醸造の原材料を保管する倉庫の在庫管理だったようだ。

「名前がわかる世界最古の人物」は、クメールでビール原料の倉庫管理をしてたひと

この前も一部を紹介した「屈辱の数学史」より。



この話だけだと、あんまし数学に関係ないが…

クシムとニサは私にとっても特別な人である。それは…少なくとも記録に残っている中でも最古の数学的ミスをした人たちだからだ。東京でコンピュータに誤った数字を打ち込んでしまった現代のトレイダーと同様、クシムも粘土板に誤った楔形文字を刻んでいたのである。

との、こった。
著者はそのミスのほか、シュメール人は3年に1月の閏月があったとか「倍」を意味する記号を使っている、などと紹介した結果、こう結論付けている。

帳簿とビールは、ともに人間の文明の発展にとってこの上もなく重要だったと言えるだろう。

そうかもしれませんが、わたくしは片方は好きですが片方はきらいです(笑)

【追記】ブクマでこんな情報を頂く

「名前が判明している世界最古の人物」は、シュメールの『クシムとニサ』。職業はビール原料の倉庫管理。 - INVISIBLE D. ーQUIET & COLORFUL PLACE-

その本の著者のマットパーカー氏が、まさにそのエピソードを紹介している動画がありますよ→ <a href="https://www.youtube.com/watch?v=MZVs6wF7nC4" target="_blank" rel="noopener nofollow">https://www.youtube.com/watch?v=MZVs6wF7nC4</a> (なお彼の動画は自動字幕が生成されないらしい <a href="https://twitter.com/standupmaths/status/1467520689917739009" target="_blank" rel="noopener nofollow">https://twitter.com/standupmaths/status/1467520689917739009</a>)

2022/09/03 15:52
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私たち現代人の生活は数学に依存している。コンピュータのプログラム、金融、工学、すべての基礎は数学だ。
普段、数学は舞台裏で静かに仕事をしていて表に出ることはない。
表に出るのは、まともに仕事をしなくなったときである。

インターネット、ビッグデータ、選挙、道路標識、宝くじ、オリンピック、古代ローマの暦……他。
本書では数学のミスによる喜劇的、ときに悲劇的な事例を多く取り上げている。
謎解きを楽しむように本書を読めば、ミスを防ぎ危険を回避できるようになるだけでなく、数学に親しみを感じるようにもなるだろう。
スタンダップ数学者である著者自身の失敗談やジョークも多く盛り込まれた本書は、「屈辱」をとことん楽しめる一冊だ。
英国「サンデー・タイムズ」紙 数学本初のベスト・セラー作。


■内容
【第0章 はじめに】

【第1章 時間を見失う】
四三億ミリ秒では十分とは言えない/カレンダー/暴挙に出たローマ教皇/時が行き詰まる日/時をかける戦闘機

【第2章 工学的なミス】
物騒な数に架ける橋/共振が鳴り響くとき/揺れるのは飛行機だけじゃない/浮き沈みにもご注意を/曲線美の落とし穴/お足元には気をつけて

【第3章 小さすぎるデータ】
善良なデータが悪と化すとき/Excelが遺伝子操作?/スプレッドシートの限界/エンロン事件

【第4章 幾何学的な問題】 
三角測量/月の幾何学/死のドア/Oリングのせいだけじゃない/歯車の噛み合わせ

【第5章 数を数える】
組み合わせを数える/その組み合わせ、十分ですか?

【第6章 人間は確率が苦手】
死のコード/コンピュータが苦手なこと/わずかなズレの危険性/0で割らないで

【第7章 確率のご用心】 
重大な統計学的誤り/コインの表裏/宝くじ必勝法/通説の噓/確率についての私的意見

【第8章 お金にまつわるミス】
コンピュータ時代のお金のミスコンピュータの時代にお金のミスはどう変わったか/アルゴリズムが生んだ高額本/物理法則の制約/数学への無理解が生んだ高額報酬

【第9章 丸めの問題】 
どこまでも下がるインデックス/遅いのに新記録?/スケールの違う数字/サマータイムの危険性

【第9.49章 あまりにも小さな差】
ボルトが合ってさえいれば

【第10章 単位の問題】 
摂氏と華氏/重(・)大問題/値札もお忘れなく/グレーンの問題

【第11章 統計は、お気に召すまま?】 
平均的な制服/平均が同じでも違う/バイアスはどこにでも/相関関係と因果関係

【第12章 ランダムさの問題】 
ロボットはランダムを作れるか/擬似乱数/擬似乱数発生のアルゴリズム/「ランダム」を誤解してませんか?/ランダムか否かの見分け方/現実の物体に勝るものなし

【第13章 計算をしないという対策】
「スペース」インベーダー/五〇〇マイル先までしか届かないeメール/コンピュータと交流しよう

【エピローグ】過ちから学ぶこと


■著者について
マット・パーカー Matt Parker
オーストラリア出身の元数学教師。イギリスのゴダルマイニングという歴史ある(古過ぎるのではと思うこともある)街に暮らす。
他の著書に『四次元で作れるもの、できること(Thingsto Make and Do in the Fourth Dimension)』がある。
数学とスタンダップ・コメディを愛し、両者を同時にこなすことも多い。
テレビやラジオに出演して数学について話す他、ユーチューバーとしても活躍。
オリジナル動画の再生回数は数千万回以上、ライブのコメディー・ショーを行えば、毎回、満員御礼という人気者だ。

■訳者について
夏目 大(なつめ・だい)
大阪府生まれ。翻訳家。大学卒業後、SEとして勤務したのちに翻訳家になる。
主な訳書に『6時27分発の電車に乗って、僕は本を読む』、ジャン=ポール・ディディエローラン(共にハーパーコリンズ・ ジャパン)、『エルヴィス・コステロ自伝』エルヴィス・コステロ(亜紀書房)、『タコの心身問題』ピーター・ゴドフリー=スミス(みすず書房)、『「男らしさ」はつらいよ』ロバート・ウェッブ(双葉社)、『南極探検とペンギン』ロイド・スペンサー・デイヴィス(青土社)、『ThinkCIVILITY』クリスティーン・ ポラス(東洋経済新報社)など訳書多数。