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John 8:32 Then you will know the truth, and the truth will set you free."  複数ブログの過去記事を移管し、管理の委託を受けています/※場合により、語る対象の「ネタバレ」も在ります。ご了承ください 

ビクター・ヘンリーUFCで勝利。ジョシュ・バーネットの愛弟子がオクタゴン侵攻

ビッグマッチに臨むヘンリーは、日本のファンに向けて、「僕も日本でタフなファイターたちと戦ってきた。僕は“ただの無名ファイター”じゃない。いつでも僕にとって日本がホームだ。日本のみんなを愛してる。今度こそ、みんなと一緒にケージまで歩いてる気持ちで入場するよ。僕とともにオクタゴンで戦ってほしい」と、日本時間23日、日曜日の試合に注目してほしいと語った。
gonkaku.jp

今回、試合をライブで見られたのは偶然の幸運だった。
UFCもこれだけ試合が多くなると、なかなか全試合は見られないし、かつてのように毎号出ていた格通やゴン格で予備知識を得たり、来日経験あり……パンクラス修斗で名前を知ってるファイターをUFCで応援する…というムーブが稀になってきた。
いきおい、選手の名前も「ナンバーシリーズのメインカードに出たり、タイトルマッチに出場したら名前を憶えてもいいよ」ぐらいになっている。

ただ、今回は偶然、時間があったので「ただ待つぐらいなら、プレリムも一応見ておくか……」ぐらいでアクセスしたら、プレリム最後の試合として見慣れた顔と名前の選手が入場してたのだった。それがビクター・ヘンリー。

なんでも昨年12月に急な代役での参戦が決まったが、
コロナに感染して延期。同じ相手と約1か月後に対戦したのが今回の試合。(アメリカでは1カ月で再度参戦できるぐらい、コロナの扱いが一般化してるようだね…)

その、幻に終わった最初の参戦直前のインタビューがある。
mmaplanet.jp


この時に気づいて、チェックし続けてればよかったんだが…






さはさりながら、
ビクター・ヘンリーの名前を過去にブログに書いたという点では、このブログは日本有数、はてなだと「格闘技徒然草」と競っているだろう。

なにしろまだ日本に来る前からの紹介だ。ゴン格記事の一節を紹介している、2013年に。

ジョシュはいま、弟子を取っているそうで、

バンタム級でいま、目を掛けている面白い教え子がいるんだ。ビクター・ヘンリーっていうんだけど、6勝0敗でONE FCに出してアジアンルールを体験させたい…どんな局面でも戦える術を与えたい。

テコンドー、カリ、アクスリマ、キャッチアズキャッチキャン、極真、柔道(指導者は石井慧)を学んでいるそうだ。なんだカリって。エスクリマって。
MMA総合格闘技を見せることができるようになる」選手にさせることを目指しているそうで、写真説明によるとジョシュは
がぶりからの腕十字―ーと見せかけてアンクルロックのとり方」を指導していたという(笑)。「青い目のミノワマン」が生まれたりしないだろうな(笑)
m-dojo.hatenadiary.com

そして初来日し、所英男に勝利した日のコメントも記録に残しているぜい

2014年07月14日
【国内総合】 ビクトー・ヘンリー、所英男に勝利し喜びのコメント < gryphon
https://www.facebook.com/VictorHenryMMA
Facebookより)
日本は今や、僕の名を知ることになった、
グランドスラム所英男さんには、この機会を与えてくれたことを感謝したい。友人、応援してくれる皆さん、コーチやトレーニングパートナー、さらにはアンチの皆も含めて…それらがみな、自分をリングに向かわせてくれる力になっている。

これは自分にとって本当に大きなファイトであり、また大きな勝利だった。だけど、これはスタート地点にすぎない。

Japan now knows my name!

Thank you to GRANDSLAM and Hideo Tokoro for the opportunity and to all my friends, supporters, coaches, training partners, and even haters for driving me to get better with every time I step into the ring.

This was a big fight and a big win for me but it's only the starting point.


その次が、上田将勝戦だ。
この試合はそのフィニッシュの驚きのあまり、長文でがーッと感想書いてるわ。

m-dojo.hatenadiary.com

おっどろいたねえ。
ビクトル投げからの膝十字……それがリアルな技であることはサンボの時代から十分証明済みではあるんだ。だけど、近代MMAが20年の歴史を積み重ねた結果、いわゆる確率、統計的に、選択肢…ジャクソンズMMA的にいうなら「ツリーの樹」から真っ先に外れるような、リスクが大きく成功率があまり高くない、そういう性質の技であることも、もはや説明する必要が無い。
この技は、見た目の華麗さから、むしろUWF的な流れの中で見られる技であった。
そんな技が―あるいはそうであるがゆえに、日本でもっとも確実性や信頼性の高い、難攻不落性をもった上田将勝に奇襲技として極まってしまうという、この意外性……

そしてその大波乱は、「UWF的な動き」を実践性というより、美学的に愛するジョシュ・バーネットがビクター・ヘンリーの師匠であったことから生まれたという歴史の奇蹟……だってこの師匠じゃなかったらおそらく今のMMAファイター、ビクトル投げからの膝十字なんておそらく指導も練習もしてないよ(笑)。


そう、以前「MMAジャーマンクラブ」という概念を提案したことがあった。ことMMAの試合でジャーマンスープレックスを実際に使用した、という選手は非常に希少であり、そいつらが一種のクラブ、サークルを作ってると見立てるといろいろ面白い、というね。(ヘンリーの師匠ジョシュも、このジャーマンクラブのひとりだ)。


で、それと同様……と言っていいのかな?
ちょっと違うけど、MMAにおける「足関節」。決して見せ技でもパフォーマンスでもないのに、どんどん決まり手になる確率は下がっていってる。
ぶっちゃけ、たとえばUFCでもRIZINでも、「足関節での一本勝ちが公式記録に残っている」選手って2割に到達してるかな…してないと思う。それをやってる段階で、すでに特殊な何かなのだ。

しかもそれを、あの修斗上田将勝から。それもビクトル投げから。いかにジョシュの下で、普通の北米MMAとは違う「ソウゴウカクトウギ」を学んでいたか分かろうというもの。
所属チームの名は、師匠の趣味に付き合って(笑)「UWF USA」。商標とか大丈夫か……


ウィキペディアの格闘家項目は、それを熱心にやっていた属人名が減って、めっきりさみしくなっているが、それでもビクターはリアルタイムで更新されている。


ja.wikipedia.org
そして日本での試合は、かなりのビッグネームを食ってはいるが、それでも今22勝5敗で、パンクラスでのタイトル戦で石渡伸太郎に判定負けするなど(かなりの接戦だったと思う)、5,6試合に1回は敗戦してきた。
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シュウ・ヒラタ氏がどこかの電話トークで言ってたけど、このへんの肝心なところでの敗北したレコードの関係が、UFC参戦にネックだったんじゃないか、という。
ジョシュ・バーネットUFCオフィスの関係が、「極めてフレンドリー」とは言いがたいことも関係してると思うのだが、どうなんだろうな。


ただ結果として、だから日本で実績ある選手と次々試合をすることができた訳で……RIZINでも金原正徳をKOし、本来だったらバンタム級トーナメント参戦資格に二重丸がついていたはず。
コロナ禍の入国制限がなかったら、トーナメントの結果はどうなっていただろうか(ちなみに彼は井上直樹の優勝を予想してた)。
しかし参戦していなかったからこそ、今回UFCに参戦できたのでね…ほんとに運命は測りがたい。


しかし、試合後インタビューで「34歳だけど頑張る…」と言ったのはエッとなった。日本でいうと扇久保博正と同い年だったんだ…大塚隆史より1歳下、堀口恭司より3歳上となる。正直、確かにもう少し早くチャンスが有ったら…とも思わないでもないが、デビューが2010年だったのだからこれは仕方ない。

今回の勝ち方が良かったから、あとはUFCの試合プログラムにうまく乗っていければと思う。
ただ今回も基本的にはほぼ打撃戦のみだった。ビクターにはまさに、ジョシュゆずりの、オールラウンドでしかも北米セオリーとは別の形での「打投極」があるのだから、それがオクタゴンで披露される場面が見たいと思う。
そういえば、自分はビクターとあって会話できたことがあるのだ。パンクラスで福島秀和と対戦し、ギロチンチョークで一本勝ちしたときだな。




そんなクリエイティブなファイトをするビクター・ヘンリーの、はてもなく険しいであろうUFCロードに幸あれ。(了)

ビクター・ヘンリー激闘動画集


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UFCで勝利したビクター・ヘンリー