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John 8:32 Then you will know the truth, and the truth will set you free."  複数ブログの過去記事を移管し、管理の委託を受けています/※場合により、語る対象の「ネタバレ」も在ります。ご了承ください 

「皇帝陛下の敗残兵」フランスをまかり通る!~「ナポレオン覇道進撃」エルバ島への”追放”の話が面白い。

小さなコルシカ島の、何者でもなかった若者ナポレオン・ボナパルトが、数々の戦争を勝ち抜いてフランス皇帝となり、ヨーロッパ全体を風雲に巻き込む、その生き様を描いた「ナポレオン 獅子の時代/ナポレオン 覇道進撃」のシリーズも、いよいよ大詰めを迎えようとしています。



ロシア遠征が失敗し、欧州連合軍に要所要所では出撃して勝利を重ねたものの、敵の同盟を切りくずせず最終的にはその物量・包囲網に追い詰められていくナポレオンは、タレーランらの裏切りもあってついに降伏し、フランス皇帝の地位も退く。

実は自分も知らなかったんだけどエルバ島には「島流し・流刑」というわけではなく、「エルバ島の領主として赴く」という形式だったんだそうだ。

それはあの天才ナポレオンが最後まで軍事的に抵抗したら、損害は膨大なものになると戦った連合軍が痛感したこと、そしてやはり同じ”皇帝”同士をそこまで追い詰めるのは忍びない、という欧州の王族の連帯感…そしてやはり敵対したとはいえ、傑出した同時代の偉人・英雄への敬意…などが入り混じっていたようだ。

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ナポレオンと、近衛軍がエルバ島へ向かう時の挿話(ナポレオン覇道進撃)

ナポレオンも一時は退位降伏の屈辱に耐えられず自殺なども試みるが、ついには観念してエルバ島に向かう……この旅程において、ナポレオンが敗れた皇帝として、戦火で荒れ放題となり、愛する家族を失ったフランス国民の暮らす土地を、かなりの軽武装で突っ切ることになった。
その挿話は、第二次大戦直後の昭和天皇の全国巡行との類似や、まったくの違いを思い浮かべると非常に興味深い。

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ナポレオンと、近衛軍がエルバ島へ向かう時の挿話(ナポレオン覇道進撃)

ただそれ以上に面白い挿話が残っている。

エルバ島領主としてのナポレオンは、最低限の軍を連れて行くことが許可された。そしてその役割には、数々の奇跡をもたらした軍神に絶対の忠誠を誓い、数々の激戦を勝ち抜いてきた「皇帝近衛兵」が熱狂的に志願し、ナポレオンはそこから更に選りすぐった連中を自分の部下とした。

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ナポレオンと、近衛軍がエルバ島へ向かう時の挿話(ナポレオン覇道進撃)

彼らは、馬車を使う皇帝本人とは別ルートでエルバ島に向かうのだが……ひっそりと地味な場所で国土を突っ切り、途中では変装などもしてトラブルも避けた皇帝陛下ご本人と違い、彼らは戦場に向かう時と同じように整然と隊列を組み、小銃を構え、そして……その時代はブルボンの白の紋章に戻っていたから、どこの誰も象徴しなくなったはずの「三色旗」を掲げ、堂々と国土を闊歩し始めたのだ。いわば自国なのに「敵中横断三百里」である(笑)。


そういうことをするとだ、ナポレオン本人がだからこそそれを避けて通ったように、
「皇帝によって家族を奪われたと憤慨する敗戦の民」
「熱烈なブルボン王党派の残党(いやこの時は完全に復権しているので残党どころか与党であるのだが)」
そして「フランスにまだ駐留しているプロイセンやロシアなどの欧州連合軍」、
こういうところとトラブルを起こす可能性が非常に高い。どうやってそれを回避したのか…というと、ただ単に、回避しなかったのである(笑)。

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ナポレオンと、近衛軍がエルバ島へ向かう時の挿話(ナポレオン覇道進撃)

というかむしろ、そういうトラブルがあると、得たりや応とばかり「貴様らは皇帝の近衛兵を侮辱した!」と、方陣を組んで武力衝突しようとするのである。

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ナポレオンと、近衛軍がエルバ島へ向かう時の挿話(ナポレオン覇道進撃)

あいつらは死に場所を探してる、関わらない方がいい……となりまして、結果恐ろしい「敗残兵」たちが、そのまんまフランスを堂々と渡り歩いてエルバ島に到着したそうな。

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ナポレオンと、近衛軍がエルバ島へ向かう時の挿話(ナポレオン覇道進撃)

そんな、死を恐れない精兵中の精兵が手元に着た時、島で封印を誓ったはずの、ナポレオンの野心が再び燃え上がり…ますわな、そりゃあ。
そしてパリでは、王政復古のブルボン朝政府がさっそくの無能ぶりを見せ、庶民は早くも手のひらを返して「皇帝陛下は、すみれ(ヴァイオレット)の花咲くころにお戻りになられる」という噂が広がっていく…



思い起こせば、今大河ドラマ「青天を衝け」でやっている幕末戊辰戦争は、ご存知の通り徳川慶喜が、元の徳川の本拠地の一つである静岡に退去することでひとつの決着をつけるのだが……旧幕臣の中でもよりすぐりの強兵、伊庭八郎のような講武所の剣客や、フランス式で武装したいわゆる「農兵」たちが、独立武装集団…徳川慶喜の直轄の護衛部隊として存続、そして江戸から静岡まで三つ葉葵と「厭離穢土欣求浄土」の旗を掲げ「富士の白雪ゃノーエ 富士の白雪ゃノーエ」と”農兵節”を高らかに歌って行軍していったら…そりゃ怖いがな。慶喜もナポレオンのように逆襲し、日本もどこかでワーテルローを戦ったかもしれない……

ただその逆に、数百規模の武装集団が堂々と闊歩し、その異様な結束と殺気に、周りが気をされて手を出せない…という光景は、むしろ攘夷側の「水戸天狗党」の行軍を連想させるところもありました。

そして、当時の歴史の理非善悪や、戦争反対平和愛好の建前を越えて、この近衛兵たちの「忠臣」ぶりには、なにかこう、琴線にふれるものがあることも事実だ。

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