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John 8:32 Then you will know the truth, and the truth will set you free."  複数ブログの過去記事を移管し、管理の委託を受けています/※場合により、語る対象の「ネタバレ」も在ります。ご了承ください 

ジャンプ作品の掲載順調査(1982~97)、「日本一つまらない漫画」の選定…コミックGON!というすごい雑誌があった

あまり一般性のない話題だが、だからこそ記録しておかねばならないと思ってこれから書き始める。事の起こりは…よくあることだが、色々本棚の古い本を探したり整理したりしてたら、余計な別の本を見つけた、ということである。

その雑誌は、コミックゴン、という。


GON!という雑誌を覚えている人はそういないと思うが90年代初頭にでも始まったのかな…ものすごく小さな活字を組んで、様々な ルポ や雑文、コラムなどをぎゅうぎゅうに載せると言う形状の薄手の雑誌で、この形式は一つのスタンダードとなった。内容はいわゆる”悪趣味”寄り。…寄りと言うかど真ん中、悪趣味のスタンダードか(笑)

だから自分は肌が合わず正直本誌の方はほとんど知らん。

今知ったけど、現在も刊行されている「実話ナックルズ」は、このGON!の後継雑誌なんだそうな。


だが!
その形式を利用して平成9年になぜか刊行された「コミックゴン」は、これまた理由はしんないけれど異様に内容の詰まった、とてもマニアックな漫画研究ムックだったのである。

だからこうやって今でも倉庫の奥から、捨てずにとっておいた現物が出てくるのだろう。


振り返ってみると名前のあるライターが若い頃に手がけたものかもしれん…スタッフの名鑑が冒頭ページにあったけど、新保信長 、唐沢よしこと言った人々もこの制作に関わっていたようだ。

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コミックゴン

この雑誌の白眉というか、今でも貴重な資料として使用されそうなものが、…1981年から1997年にかけての少年ジャンプを、作品の掲載順を数値化し、その変化を折れ線グラフにすると言う、何ともとんでもない研究だ。 そもそも 少年ジャンプの作品の人気と掲載順の間には緩やかな因果関係があるが、どうもはっきりと連動しているというわけでもないらしい。
この辺のことはジャンプのバックステージへの興味が高まり、作る側の情報開示が進んだ結果なのだが……
ただ、最初からめちゃくちゃ小さい活字に、数字がぎっしりの表やグラフを挿入したから、ぶっちゃけ非常に小さすぎて分かりづらい(笑)。

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コミックゴン、ジャンプの連載の掲載順を調査
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コミックゴン、ジャンプの連載の掲載順を調査

あ、あと毎年その年の10週打ち切り作品を列挙する「10週さんいらっしゃい」というミニコーナー。

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コミックゴン「10週さんいらっしゃい」

それでもなんと言うのか、「これを作ってる人たちはめちゃくちゃやる気あって、そして好きなことを思うままぶっこんだんだろうなー」というのが伝わってきたんだよな、この密集した活字のなかから…。


いかにもこの手の雑誌らしくページとページの隙間に小さな脈絡のない形でのコラムとかミニ研究みたいなものが挟まっていたりもするが、それも面白い・下手は別にして「やる気」だけは十分なことの証だろう。

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コミックゴンのコラム

勢いあまって「日本一つまらない漫画はこれだ!」という特集をやったのは、言い訳のしようもないけど(笑)

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コミックゴン 日本一つまらない漫画

他にも、多くの読者が潜在的にはいたのに、作品の性質上あまり語られない「学習雑誌の科学漫画」を特集したり、そういうところで連載されていた80年代の「懐かしの漫画」の、続編を書いてもらうなど、今にもつながっている興味深い企画がたくさんありました。

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学習雑誌の漫画を特集したコミックゴン

【追記】id:cats_tails_go さんのブクマで思い出した。

ジャンプ作品の掲載順調査、「日本一つまらない漫画」の選定…コミックGON!というすごい雑誌があった - INVISIBLE D. ーQUIET & COLORFUL PLACE-

Vol5まで全号持ってる。2号に掲載された故・内山安二先生の書き下ろし「ひみつシリーズのひみつ」は本当に貴重な宝物。

2021/04/08 10:48
b.hatena.ne.jp

そう、第二号では貴重な、知の巨人・内山安二が自身の仕事を回想した漫画が掲載されていたのだ。
人類は、内山安二に追いつくために、彼のあとを追いかけている。
m-dojo.hatenadiary.com


これが出たのは、2年前に Windows 95が発売され、インターネット時代の幕が上がった時代でした。

当時もその環境で漫画について想いを語ったり2次創作の小説発表したりする方はたくさんいたと思うんだが、これによって「雑誌」の地位が脅かされるのはもう数年、十数年後のこととなる。だからこそこの雑誌は「この場を借りて、活字の形で俺たちが感じた思ったことを残さないと、それは消えていく…!!」という切羽詰まった思いも溢れているのだ。


ちょっと雑誌の魅力や、研究の成果を紹介するにはあまりにとりとめがなかったが、こんな不思議な漫画研究の雑誌が突発的に生まれ、消えていったという記録として残しておきたい。