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福満しげゆき先生は『シュート』か『UWF』か?各紙の編集者との交渉がそのまま漫画に…「観測者問題」も発生?

福満しげゆき先生がイブニングに連載してて、すでに5巻まで出ている「妻に恋する66の方法」が、打ち切りが決まった。なぜなら本人が、そう漫画に描いている


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福満しげゆき、いつも通り自分と編集部の交渉をネタに 「妻に恋する66の方法」


※打ち切りの話は、7月ごろに出てきたんだっけかな?


先生は、新しい仕事を探すべく、講談社も含めてるのか含めてないのか、いろんな社と交渉し、企画を出したり、ネームを作ったりしている。なぜなら本人が、そう漫画に描いている

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福満しげゆき、いつも通り自分と編集部の交渉をネタに 「妻に恋する66の方法」


しかし出版業界も今は変革期。紙の雑誌の編集長や編集幹部が、漫画アプリ立ち上げの事例を受けて異動したりしてる(今更感……)。作者側も編集側も「アプリのほうが気が楽だ」「問題があればサクッと削除できますもんねー」「でも大物をひとり確保してます」「その人と仲間と思われたいから連載したい!」と、駆け引きと計算が渦巻く。なぜなら本人が、そう漫画に描いて…。

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福満しげゆき、いつも通り自分と編集部の交渉をネタに 「妻に恋する66の方法」

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毎回繰り返してるが、イブニングは、店頭にある雑誌より、「コミックDAYS」のほうが遡って読めます。
comic-days.com




妻に恋する66の方法(5) (イブニングKC)

妻に恋する66の方法(5) (イブニングKC)


別に今回で初めて、こういう手法を目にして驚いたわけではない。「僕の小規模な生活」「うちの妻ってどうでしょう?」でも、ガンガンこういう話を描いていた。

自分の作品の連載打ち切りまでも、その作品内でネタにする手法は80年代末頃だったか?とり・みき先生が「てりぶる少年団」でやって、衝撃が走ったもんだったが(笑)、それを通常の技にやってる。昭和はトップロープからフライング・ボディアタックするだけで「空中殺法」だったが、いまは三回転半ひねりぐらいしないと観客がうんともすんとも言わない、みたいな(笑)

しかし、それを描くことで編集者との関係や連載の有無が「動く」んじゃないだろうか?というか、これは「シュート」? それとも編集部も度量のある「派手なバンプ」?

シュレディンガーの猫か、人間原理か…
当たり前だが「編集者とこんなやり取りした」という話を漫画に描いて雑誌に載せると、百数十万人??の読者が読む。関係者も読む。で「あー、あいつ、こんなことを考えてたのか!」とわかる。そしたら、それが、次の人間関係や、企画の打ち合わせ・やり取りに影響を与えないわけないでっしゃろ?

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福満しげゆき、いつも通り自分と編集部の交渉をネタに 「妻に恋する66の方法」


「小規模な生活」後半だったと思うが、ほんと、このへんの編集部とのやりとりがかなりギスギスしたものだったという気がする。
共感性羞恥」をお持ちの方とかなら、ちょっと気分が悪くなって読みたくなくなるかも…「仕事をやってくうちに、だんだん親しかった人間との関係が悪化していく」ことを描いた作品としては、かなり出色の出来かもしれない。そんなジャンルがほかにあるかはともかく。
当時、感想を書いたと思ったのだけど見つけられず…画像は保存している筈だが、どこにあるかは探せない。


せめても…で探したら、コミックスの惹句やサブタイトルなどに片鱗が残っている(笑)。

笑って、そして身につまされると、モーニング連載中から大評判!人間関係の軋轢こそがマンガの母だった! 「マンガ家志望の人は、読んでおいて損はないですよ!」――(福満しげゆき) 業界人がみんな読んでいる(らしい)「マンガを描くマンガ家のマンガ」いよいよ刊行!


単行本を出してお金持ちになるぞ!!の巻
年下に対して妬んだり憎んだりするの巻
バイトするならコンビニだ!!の巻
講談社の人に有能と思われたい!の巻
どんなことにも先駆者がいるの巻
「あんたそのあいだ何してた?」と言われるの巻
粉飾 連載詐欺の巻
載せてもらうために譲歩せよ!の巻
僕が思っていると担当さんは思っているに違いない……の巻


作者の現実を題材にしたマンガ家マンガ決定版! 売れないマンガ家「僕」に降ってわいたメジャー誌デビュー。初連載の苦労と苦悩。編集者との駆け引き。初めてのパーティ。マンガ家仲間とのあれこれ。


出掛けろ!! 最終決戦の場へ!!の巻
僕ーウォーズ 福満の逆襲とか復讐して帰還する話の巻
何かあっても編集者さんしか言う相手がいない……の巻
友よありがとう!! 「うぐう……」ってなったよ……の巻
あの3人のことかー!!の巻
打ち合わせ!!の巻

………おなかいっぱい…。


ただ!! ここまでシュートというより、むしろエクストリームな「編集部とのやりとり」を見ると、逆に「こんな対立は”八百長”でしょ?」「どういうふうに編集部との揉めごとや不信感を描くかは、打ち合わせしてるんでしょ?」と思ってしまったのですよ。

「ここで作者の僕が、編集部への不満をガツンと描くから、それに対して編集者は怒って、打ち切りを言い出すって感じで描くのはどうでしょう!」
「いや、むしろ…編集者の僕はここでスカして、曖昧であなたに理解のあるふりして、最後にヒールターンさせるほうが、マークな読者はヒートするでしょ!で、最後のフィニッシュは、ブロードウェイ(引き分け)でいきましょう」
「ああ、いいっすね!」
…みたいな?
(いろいろ業界用語(プロレス)が入ってますが、わからんひとはおいてきます。福満氏はプロレスはどうかわからんが、ガチ総合格闘技のほうは相当な通だったな……)

増補DX完全版 劇画 プロレス地獄変

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いや、そう考えるのは、「そう考えて安心したいから」でもある。あそこまで、自分の内心、周囲への妬みや不満や羨望や劣等感を表にしたら、それが芸風と言ったって、思われるほうはちょいとつらいんじゃないかなと。サトラレが隣にいたら、意識を悟られるのもつらいが、悟ってしまうほうもしんどいわな。だからこそ、そこにはちゃんとアングルがあって、編集者はUWF的に、真剣勝負に見えて、ちゃんとストーリーにそったムーブをしていると…あるいはスタイルは違えど、三沢光晴ばり、カクタス・ジャックばりのものすごい「バンプ(受け身)」を取っている、と思いたいわけです。



というか、編集の実務作業上、まちがいなく「打ち合わせ」はしてるはずで、当事者に向けられた作者のあれこれな思いや、いや当事者ならまだ許容範囲だ、ほかの「A社」「B社」や「大物漫画家」「後輩漫画家」などが次々出てくるさい、「これはちょっと…」「さすがにこれは…」案件も、表面に出た者以外にたくさんあったはずだ。このへんは木多康昭久米田康治参照……、あっ、みんな結局講談社に流れ着いてる。

こうなってくると、福満しげゆき氏の担当編集者は、シュートやエクストリームの当事者と言うより… いろんな意味で硬くて偏屈なカール・ゴッチを敢えて”飼って”いて、ときにはライバル潰し、ときには自分の趣味でシュート試合をさせていたというプロモーター、アル・ハフトになぞらえてもいいのかもしれないな。


しかし、なんだかんだ言って、こういう時の福満先生が一番面白いのも事実なわけで、なんとも言いようがない話であります。