つけびして 煙り喜ぶ 田舎者
この句を残して、凶悪犯罪に及んだ男がいた…ということ自体は、つよく覚えているんだけど、詳しい話とかはよく知らない。そして、自分は凶悪犯罪関連のノンフィクションは、好きでもなければ嫌いでもないが、優先順位は…真ん中より下、という感じかなあ。少なくとも政治や歴史ノンフィクションのほうが圧倒的に興味深い。
けれども。
「この事件、ぜったい無理だから、もうやめろよ。どこも取り上げてくれないぞ。誰も読まねえ。取材続けてどうするの?」
夫やママ友、ファミサポさんに子どもの世話をお願いして、金峰へ出かける私に、夫はそう何度も言いましたが、これは愚痴ではなく、プロとしてのイラつきだったのだと思います。夫は、私よりも長く、ずっと週刊誌に携わっているため、私の仕事に関してはむちゃくちゃ厳しく、同時にいつも心配してくれます。
雑誌ジャーナリズムのプロである彼の目には、「つけびの村」の取材は「空振り」に終わる可能性が高いように映っ…(後略)
‥‥もう、長編ノンフィクションを書くのはやめよう、と。私は紙からウェブに軸足を置くことにして、さまざまな媒体でストレートニュース的な裁判記事を書くスタイルに切り替え、日々裁判傍聴に邁進していたのでした。
ところが2019年3月、note版『ルポ つけびの村』の購入者数が突然増えたのです。
そうすると、いつも企画書を送っては無視されたり、冷たい返事をもらっていた私のもとに、逆に出版社の方々から書籍化の依頼メールが次々に届きはじめました…
なんか、こういう、「ノンフィクションを完成させるまでの苦労話」が逆に琴線に触れる。
実際に自分が読みたいと思うかはともかく、応援の意味を込めて紹介させてもらおう。
この村では誰もが、誰かの秘密を知っている。
- 作者: 高橋ユキ(タカハシユキ)
- 出版社/メーカー: 晶文社
- 発売日: 2019/09/25
- メディア: 単行本
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2013年の夏、わずか12人が暮らす山口県の集落で、一夜にして5人の村人が殺害された。
犯人の家に貼られた川柳は〈戦慄の犯行予告〉として世間を騒がせたが……
それらはすべて〈うわさ話〉に過ぎなかった。
気鋭のノンフィクションライターが、ネットとマスコミによって拡散された〈うわさ話〉を一歩ずつ、
ひとつずつ地道に足でつぶし、閉ざされた村をゆく。
〈山口連続殺人放火事件〉の真相解明に挑んだ新世代〈調査ノンフィクション〉に、震えが止まらない!つけびして 煙り喜ぶ 田舎者
目次
1:発生
2:夜這い
3:郷
4:ワタル
5:その父、保見友一
6:疑惑は静かに潜む
7:コープの寄り合い
8:保見家
9:うわさ
10:ワタルの現在
11:くねくね
12:書籍化の経緯
13:古老の巻
14:ふたたび郷へ
15:ことの真相
16:山の神様
17:春祭り
18:判決
著者について
高橋ユキ
1974年生まれ、福岡県出身。
2005年、女性4人で構成された裁判傍聴グループ「霞っ子クラブ」を結成。
殺人等の刑事事件を中心に裁判傍聴記を雑誌、書籍等に発表。現在はフリー
ライターとして、裁判傍聴のほか、様々なメディアで活躍中。