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John 8:32 Then you will know the truth, and the truth will set you free."  複数ブログの過去記事を移管し、管理の委託を受けています/※場合により、語る対象の「ネタバレ」も在ります。ご了承ください 

ヴィンランド・サガがアニメ化、Amazonで世界配信も。/「クヌート王と『波よ止まれ』」の逸話について

少しばかり、仕事のような義務感を感じつつ、まとめてる。

幸村誠ヴィンランド・サガ」アニメ化〜作者含む感想と反響 - Togetter https://togetter.com/li/1210384



Amazonで世界配信というのがすごいことで…
実はこの作品、単行本の何巻だったかは忘れたが 折り返しカバーに書く作者のコメントの中で「北欧のテレビ局がこの作品の取材に来た」と報告されてるのを読んだことがある。
それは、日本人が「〇〇国でサムライや忍者を主人公にしたドラマ(漫画)が人気作品になっている」と紹介されれば興味を持つに決まっているので、それと同様だろう。
そして…細部の描写はたぶん当事者の国々の国民から見れば違和感も多々あると思うが(笑)、それでも日本国が漫画を海外に送り出すとすればヴィンランドサガはイチローダルビッシュが 行くようなもんでね、こちらとしても自信を持って送り出すことができる。
まあメジャーリーグで例えると、満を持して送り込んだがうまくいかなかった例も多々あるんだけど(笑)


ところで…、その話とはまったく関係なく『撤退するアメリカと「無秩序」の世紀』という本を読んでいたのですがね。
本の内容としては、アメリカでしばしば左右が奇妙な一致を果たす「アメリカが世界の警察官になる必要はない」と言う議論に反駁し、アメリカは絶対に「世界の警察官」の 役目から降りてはならないと熱く論じる本である…ので、オバマ時代に書かれたこの本は当時の政権を強く批判している 。

そこで「クヌート王と波」の逸話がオバマ批判に絡め紹介されてました。


著者の文脈としては「クヌート王が波に止まれと言っても止まらないように、世界情勢はアメリカが何かを言うだけでその通りになったりはしない」という例えとして使ってるんだけれども、 その主張の当否はさておき、こういう例えに使われるぐらい有名な逸話はではあるらしい。漫画でも印象的なあの場面、創作じゃなく有名なエピソードなんだ・・。だが!!!

ヴィンランド・サガ」でのクヌート王と波の話の扱われ方は、神への態度一つとっても大きく異なっている(そも、王のキャラクター造形自体がかなりオリジナル感つよい)。

もとは敬虔なキリスト教信者だったが、むしろ、神を信じるがゆえに現実の不幸、醜さに絶望し、神を疑う。
そして「神ではなく人間の力によって楽土を作らねばならない」と決心し、その結果として歴史に名を遺す英雄王になるが、その一方で気弱な王子時代には思いもよらなかったであろう残酷な謀略、暗殺、戦争を平気で行いえるようになる…


だいたいキリスト教圏ではこれは「ステップ1」で、ここからさらに会心し、ヨブのように「神から幸福をいただいたのだから、不幸もいただこうではないか」となるのがゴールなのだが…なんだかんだと非キリスト教国の漫画家にて、プラネテスで哲学的思考を漫画になしえた幸村氏は、王と神への問いにどんな回答を与えるか。

まったくもって、
元ネタを知ることで作者・幸村誠氏の才能が逆に引き立つのでした。


前に一度、「印象的な悪役」を列挙するお遊びをしたことあるけど、その時ヴィンランド・サガはそういうのが多すぎて選ぶのに難儀した(笑)
だが、一人となるとクヌート王(覚醒後)だろう、と。