時間がないので、ちょっと少し前の雑誌記事の紹介を。
特集【出版社の徹底研究】創(つくる) 2018年2月号 (2018-01-06) [雑誌]
- 出版社/メーカー: 創出版
- 発売日: 2018/01/06
- メディア: Kindle版
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◆〈座談会〉清田義昭×松田哲夫×篠田博之
不況の出版界めぐる様々な動き◆総合出版社であることを生かした取り組みとは
講談社が進める紙と電子の試み◆大ヒットの背景にはきめ細かな施策が…
『九十歳。何がめでたい』小学館の戦略◆「マンガ王国」集英社の現状は…
『少年ジャンプ』50周年と集英社の行方◆書籍のほか『二コラ』やコミックが健闘
新潮社、書籍のヒットと文庫の課題◆『週刊文春』デジタル班新設の影響は…
文藝春秋、『週刊文春』とデジタルの今後◆『君たちはどう生きるか』がミリオンセラーに
マガジンハウスの大ヒットと雑誌群
この特集号の中から新潮社のところ、しかも漫画部門に関する記述だけを、箇条書きみたいな感じで紹介します。
・新潮社のコミック部門は・月刊コミックバンチ、ゴーゴーバンチ、 Web 漫画のくらげバンチ‥の3本柱だが、そのいずれも好調。
・コツコツ積み上げてきたコミックをアプリで展開し始めると思いもかけない反響が出ている。
・アプリには15年の頭から配信を始め15年秋に本格化したら売上がとんでもなく伸びています。全くのゼロが億単位になった。
・特に驚く売れ行きがあったのは、 2014年に完結した今井大輔の「ヒル」。紙のコミックスは全5巻で5万部程度。しかし各種の漫画サイト漫画アプリ2無料配信したら、電子書籍は月15000部もの売れ行きになった。ヒル コミック 1-5巻セット (BUNCH COMICS)
- 作者: 今井大輔
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2013/10/09
- メディア: コミック
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- 作者: 今井大輔
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2012/09/01
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・次にヒットしたのは「死役所」。コミックシーモアでブレイクしそこから各種アプリの配信で1位を総なめ。電子書籍版は50万部、紙版は70万部。アプリでは単純に本が売れるだけでなくそこに広告収入もある。
- 作者: あずみきし
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2014/10/10
- メディア: Kindle版
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- 作者: あずみきし
- メディア: コミック
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・書店売り場では売れなければ3日で退場。でもアプリだと運営側次第で何度でもチャレンジできる。
・くらげバンチは毎週更新し、一定期間が過ぎると「過去の作品は電子書籍で読んでね」、という形になる。現在、基礎となっているのは月に700万のPV 。 約200万人。
http://www.kurage-bunch.com/・こっから出た数十万部単位のヒット作は「間違った子を魔法少女にしてしまった」「山と食欲と私」「働かないふたり」「少女終末旅行」など。
間違った子を魔法少女にしてしまった 1巻 (バンチコミックス)
- 作者: 双龍
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2017/05/09
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- 作者: 信濃川日出雄
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2016/04/09
- メディア: コミック
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- 作者: 吉田覚
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2014/12/12
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・2018年内に映像化が決まっている作品は5本。
・現在新潮社のコミック部門は総員12人。今後拡大し、2020年までに売上3倍、サイト読者1000万人を目指す…
感想もうす。
自分はバンチの看板「軍靴のバルツァー」を高く高く評価するし
- 作者: 中島三千恒
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2011/07/08
- メディア: コミック
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- 作者: 中島三千恒
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2018/05/09
- メディア: コミック
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「お前はまだグンマを知らない」や「働かないふたり」も楽しい漫画と思う。「俺のプロレスネタ、全然食いつかないんだが。」もあったな…
でも、まぁ、おしなべていうと「まあ、バンチはチェックしなくてもいいかな…」と思っていたし、そもそも新潮社が漫画部門に進出するって話になったとき、普通に「やめとけ」と思ってしまいました。
いま「稼いでいる」というそれだけで実にあっぱれかつ、「ごめんなさい」的なそれだ。
と同時に、やぱり「紙の雑誌なんてのは、今までだってどこも赤字。単行本で稼いで相殺してた。同じことならネットで展開すれば雑誌のコストは劇的に下がる。単行本の損益点も下がる」
ってそうなんだろうな、と思ったのです。
そしてこの前紹介した
最近の「重版出来!」が、紙から電子書籍の「政権交代」の空気を反映して緊張感がある(汗) - 見えない道場本舗 (id:gryphon / @gryphonjapan) http://d.hatena.ne.jp/gryphon/20180223/p1
と、その次の号の骨子のエピソード、「うまく人気に火が付かず、不本意な終わり方をした全3巻の旧作が、電子書籍、それも無料配信と組み合わせた戦略で再び人気に火がつき、紙の本も重版されてウハウハ」という話は、ちゃんと現実世界でも実例のある、かなりリアリティに富んだ話だったということだ.
撤退戦の中の、ごく局地的な勝利なのかもしれないが、それでも、出版界、漫画界にはこんな事例があるって話を、共有できれば。