…試に見よ、方今我国の洋学者流、其前年は悉皆漢書生ならざるはなし、悉皆神仏者ならざるはなし。封建の士族に非ざれば封建の民なり。恰も一身にして二生を経るが如く一人にして両身あるが如し。二生相比し両身相較し、其前生前身に得たるものを以て之を今生今身に得たる西洋の文明に照らして、其形影の互に反射するを見ば果して何の観を為す可きや。
「文明論之概略」緒言 福沢諭吉
http://www.geocities.jp/hgonzaemon/bunmeironnogairyaku.html
【電遊奇譚】というエッセイ集が「IGN」サイトに連載されていた。
http://jp.ign.com/game-fable
ある方に教えられ、読み始めてみたのだが・・・・・まずはこの人の「ゲーム内キャリア」がすごいのだ。
一部タイトルだけ転載しよう
【電遊奇譚:其八】民の声は神の声(前編)
ゲームにまつわるちょっと奇妙な話。第8回は再びSF-MMORPG「Eve Online」に舞台を戻したゲームと現実をとりまく物語。
【電遊奇譚:其七】 敗北の先にある戦い
ゲームにまつわるちょっと不思議な話。今回は負けることに気づくことについて。
【電遊奇譚:其六】 小学生の雀鬼が麻雀を辞めるまで
ゲームにまつわるちょっと不思議な話。今回は麻雀と勝負の本質について。
【電遊奇譚:其五】彼らの電子的な青春
藤田祥平によるゲームにまつわるちょっと奇妙な話。第5回は高校における電子的青春について。
【電遊奇譚:其四】さよなら、ラクーンシティ
藤田祥平によるゲームにまつわるちょっと奇妙な話。第4回は「バイオハザード」と初恋の思い出。
【電遊奇譚:其三】銀河系の片隅の戦争と友情
藤田祥平によるゲームにまつわるちょっと奇妙な話。第3回はSF-MMORPG「Eve Online」を舞台にした大規模戦が綴られる。
【電遊奇譚:其二】人知れず去っていった天才シューティングゲーマー
ゲームにまつわるちょっと奇妙な話。藤田祥平によるコラム第2回はアーケードで再会した天才シューティングゲーマーとの邂逅が描かれる。
【電遊奇譚:其一】 身を滅ぼしてまでゲームに打ち込む理由
小学生で大人とやった麻雀の体験などの変化球もあるが、世界的なオンラインゲームの世界で頭角を現し、歴史に爪痕を残したネットゲーム「Eve Online」についての体験話が圧倒的に面白い…というか、こういう経験をした人がそもそもいないわけで、「チェチェンゲリラに混じって戦った日本人傭兵」とか「幻のシーラカンスを釣り上げて試食した男」の話がなんであれ興味深いように、その貴重な体験をシェアしてもらうことだけで実に重要な記録である。
そもそも、ネットゲームがどんどん自由度を増していって、たとえば片隅で商売にいそしむのも、人を見れば襲い掛かるのも、平和な独立王国をつくるのも自由自在だという話は聞いていたが、自分はそのオンラインゲームの世界の発展に乗り遅れ、知識も興味も旧時代のままだ。こういう、「本当に仮想世界の中で自由にふるまえるゲーム」って、自分は夢想していたはずなのだが…実際にそれが実現したときは、旧世代の人間として知らない、接点がないまま人生を終えそうだ。大航海時代オンラインは面白いですよ、と勧められた時にやっていれば…しかしまだテレホーダイ時代には無理だったか…しかし、オンラインゲームに嵌っていたらそもそも「見えない道場本舗」ブログを書く時間もなかろうしな(笑)
人間万事塞翁が馬だ。
さて、それはそれとして、「Eve Online」の話は
@IGNJapan 【電遊奇譚:其三】銀河系の片隅の戦争と友情 http://jp.ign.com/game-fable/9693/opinion/
その後日談
@IGNJapan 【電遊奇譚:其八】民の声は神の声(前編) http://jp.ign.com/game-fable/11206/opinion/
@IGNJapan 【電遊奇譚:其九】神の声は民の声(後編) http://jp.ign.com/game-fable/11370/opinion/
と続くのだが、最初の話は評判になり、ブックマークも50以上ついている。
…2014年の早春、私が所属していたアライアンス――企業連合「Nexus Fleet」は、長く続いたロシア人勢力との戦争の果てに、所有していたすべての星系の領有権を失おうとしていた。彼らは信じられないような規模の人海戦術をもちいて、すべての月資源採掘基地に爆撃をしかけ、光学迷彩艦で兵站ラインを分断し、我々が住んでいる星座の入り口を封鎖しつづけた。状況は悪くなる一方だったが、兵士たちはそこまで悲観していなかった。ぼろぼろの死に体ではあったが、とにかくも、戦争の最前線にぽっかりと浮かんだ出城のような星座の領有権を、数ヶ月にわたって維持し続けてきたのだ。
政治情勢を含めたすべての状況がわかっているのは、私を含むごく一部の上層部だけだった。とはいえ、私は英語がそこまでうまく話せるわけでもなかったし、辺境の外宇宙でプレイヤーが動かす政治についてはまったく無知だったから、いつ、どのタイミングで安全な銀河系中心部へと資産を搬出するのかは、他の幹部まかせだった。私が所属している企業は、Nexus Fleet唯一の日系で、ここでの私たちの役割はオーストラリアン・タイムゾーンと呼ばれる、比較的プレイヤー数の少ない時間帯の作戦行動を担うことだった。「徹底抗戦だ!」と若いフリートコマンダーが叫んだが、似たような状況をいくつか体験してきたほかのメンバーたちは、すでに我々の敗北が決定していることを承知していた・・・
なんやこれ、といえば、ゲーム以外の何物でもない。
ただ、ここで描かれる苦悩や逡巡や歓喜や戦略・・・・・・・そして勇気と友情は、どこまでも「リアル」であるということだ。敢えて言えば、「本物」と断言してもいい。
つまり、これぐらいの軍や組織を差配するという経験をする人は、日本ではどれぐらいいるのか、って話でもある。
ゲームの、この一大事業が終わったあと、筆者は仲間からこういうメールを受け取る。
…おまえが日本のどこにいて、何をしているかは知らない。ただ、おまえなら世界のどこにいようとやっていけることはわかっている。生きていれば、あのときのように、大切に作り上げてきたものを失うことも必ずある。しかし、おまえはいつでも、ああいった経験からなにかを学ぶことができる人間だ。それはいくら金を積んでも、上司にこびへつらっても、隣人をどれだけ愛しても得られない才能だ。
不思議なものだ。
これらを「しょせんゲームだろ、そこで指導力を発揮したって、成功したって、現実世界には何の関係もないよ」と言い切る人もいるだろう。
しかし、もはや、どう考えても、そうは言い切れない「何か」が今のゲームにはある、のだ。
希望をいうなら、このゲーム世界の興亡については、文学的な脚色を加えるのも面白そうだが、むしろ純然たるノンフィクションとして読んでみたい気がする。
「それでも町は廻っている」の作者さんはゲームもかなり好きで、7巻に出てくる、カードゲームの擁護のシーンはネット上で有名だ。
- 作者: 石黒正数
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それ町7巻(https://t.co/Lk927W5Ezi)の第54巻。弟のカードゲームのお話より、ゲーム否定派よりの主人公と古物店員の会話。
— みなみ よつば@同人RPG応援中 (@erorpginfo) 2016年1月20日
なるほどーと感じた。
この後620円のカード価値に関する話もゲーム制作者は見て欲しいー pic.twitter.com/tpq13Pt4X7
だがその後、実は10巻でオンラインゲームを主題にした「歩鳥の戦争」という作品を描いていて、これが作者も気に入っている傑作なのだ(と、本人も公式ガイドで言っている)
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それでも町は廻っている 公式ガイドブック廻覧板 (ヤングキングコミックス)
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『それでも町は廻っている』10巻 収録
第79話 『歩鳥の戦争』
http://jungfraujoch.blog33.fc2.com/blog-entry-896.html
〜あらすじ〜
タッツンの弟がネトゲ廃人になってしまった!
やってるゲームはイマージュオンライン。
歩鳥とタッツンは、同級生のオタク系男子・七瀬(β版からイマージュオンラインをやり込み、今は惰性で続けてる)
らの助けを借りて、タッツン弟をネトゲの世界から引き戻す計画を立てるのだった・・・。
作者・石黒先生は、それ町連載が始まったばかりの頃(2005年)、ウルティマオンライン(UO)をプレイしていたそうな。
仕事が忙しくなってしまい辞めてしまったが、楽しかったなぁ・・・と、あとがきにある。
http://ohtanouen.blog96.fc2.com/blog-entry-588.html?sp
・第79話 歩鳥の戦争
歩鳥がタッツンのために戦争を起こす! 自分はオンラインゲームをやったことがないが、それでもゲーム内の空気を感じることができたし、ゲーム内で戦争が始まるときの歩鳥のモノローグが良かった。
http://vipderenko.blog99.fc2.com/blog-entry-436.html
第78話 歩鳥の戦争
タッツンの弟がネットゲームにハマって引き篭もってるって話
10巻のあとがきの通り作者がネトゲやってなきゃわからないネタばかり
(このブログも最初はネトゲブログだったもので・・・)
それでもネトゲをやらない歩鳥は
いくら頑張っても現実的に意味ない
確かに当たってるんですけどねー
もう一度
うん、これが一面の事実でもあるけれども・・・・・・ただ、ここにある意味で、異議申し立てをするのが「電遊奇譚」なのだと見立てることもできよう。
一サラリーマンであっても、大軍を運営する指揮官になり得るし、逆に大会社の鈴木社長が、あぶなかっしい一兵卒「鈴(スー)さん」になることもできる。
まったく、ゲーム世界とは面白いものだ。
藤子・F・不二雄の最高傑作のひとつ、「のび太の宇宙開拓史」は、次元のねじれでつながっていたコーヤコーヤ星にのび太の部屋の畳の下から赴いて大冒険をしていたのび太グループが、その戦いの終了と、異次元のねじれの解消による彼等との永遠の別れを終えて、感無量の表情で帰宅する。のび太の母親は、「まあ 大勢で部屋で何してたの」と、その大冒険に気づく由もなく、皆を見送る。
そんなドラえもんの世界が、今のゲーム世界では現実にある。
上のエッセイでは、そんな話に加えて、100円玉をめぐる数十年の因縁と因果や、あるホテルのドアボーイと「マリオ」をめぐる挿話など、沢木耕太郎が市井の人々の一瞬を切り取った「彼らの流儀」をほうふつとさせるような文章もある。
男はその朝、サウジアラビアの砂漠に雪を見た。大晦日の夜、女は手帳に挾み込む緊急連絡先の紙片にどの男の名を記すべきか思い悩む。「今」を生きる彼もしくは彼女たちの、過去も未来も映し出すような、不思義な輝き方を見せる束の間の時…。生の「一瞬」の感知に徹して、コラムでもエッセイでも、ノンフィクションでも小説でもなく、それらすべての気配を同時に漂わせる33の物語。
- 作者: 沢木耕太郎
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- メディア: 文庫
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時間がある時にでも、ご一読をお勧めしたい。