時代も立場もバラバラだけど2016年現在、本邦に於ける共産圏指導者の認識ってこんなもんだよね? 実際はどこでも粛清とかあった筈だけどさ。 pic.twitter.com/CDz56gH7qx
— 第4インター系 (@Lev1026) 2016年11月26日
速水螺旋人ブログ
http://d.hatena.ne.jp/rasenjin/20161126
とうとうこの日が来てしまった。フィデル・カストロが亡くなりました。90歳。そろそろであろうな、とは思っていたので驚きはないですし、大往生でしょうジャージのおじいちゃん。しかし、英雄はついに去ってしまいました。
英雄。フィデルを評するのに、いちばんふさわしい言葉です良い政治家だったでしょうか?
政治家としては疑問符がつくでしょう。経済政策は失敗し、多数の国民を海の向こうに追いやり、政治犯を獄につなげた。アンゴラで戦争もした。漫画家が仕事するのは大変そう。とはいえ、あえていうならばそういうものです。英雄とははた迷惑なものです。
日本という地球の裏側から眺めるから、彼のことが尊敬できるのでしょうか?
確かにそうかもしれません。
しかし。
しかしだ。弱きを助け強きを挫くことを己の信条とした男。キューバをこよなく愛した男。常に強大な敵に立ち向かってきた男。革命を追って国を出たチェに対し、残って権力の舵取りを続けることを選んだ男。おおいに怒り、おおいに笑い、おおいに悲しむ男。
一代の英傑。
本来ならば、18世紀あたりが似つかわしい男。
おおお……フィデル逝去か。毀誉褒貶あろうけれど、傑物であったことはまちがいないだろうなあ。キューバ革命のエピソードは、驚くべきできごととして人類史に残るんじゃないかしら。多少のケレン味を込めて言えば、男一匹こんなふうに生きられたら本懐だろうと思わせるものがありました。ご冥福を。
— 瀬川深@キューバはうたう(フィデル追悼) (@segawashin) 2016年11月26日
「英雄」とか「男一匹」という表現がなかなかに面白い。善・悪……じゃないところに、ちょっとずれたところに、評価基準がある。
それゆえに、いわゆる独裁者……民意の洗礼を受けることで正統性を得られるという建前から外れた人であっても関係ないのだ(民意の洗礼という点では安倍晋三も菅直人も朴槿恵も盧武鉉もドナルド・トランプもオバマもプーチンも、すべてカストロと比較すれば上となる)。
で、その人気の源泉は何かといえば、結局「馬上天下を取った、国獲り伝説の実在者」であることなんだろ。
ドリフターズの面々のように。

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いまや毛沢東は「ヒトラー、スターリン、毛沢東」と3人を同一地平上に並べるのが自由を愛する人々にとっては常識の範疇の話だが、それはまあ2016年に至っての話で、70年代や80年代は…もちろん文革や紅衛兵にシビレタ人たちはその3、40年ほど前、ヒトラーやユーゲントにシビレタ人とかなり似ているけれども、それはそれとしてやはり「徒手空拳で馬上天下を獲った国盗り物語の主人公」…高島俊男流にいえば「最後の盗賊皇帝(劉邦とか、朱元璋とかですよ!)」へのロマンということもあったのでしょう。

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この物語は
藤子不二雄Aも横山光輝も漫画化したのだから。
(今から見たら、ポリコレ的にまずすぎる描写多し)

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幕末前夜「南蛮の男じゃが、奈利翁(ナポレオン)は憧れるのう…」というリスペクトが、西洋文化受け入れを準備した?
ナポレオンって、日本に情報が入ってきたとき「一介の民から天下人になった」「戦に強くて、次々国を平らげた」すげー大英雄ってことで、自由だ民主主義だという議論にまだなじみない、日本の「やや平凡な知識人レベル」でも興味を持つ人が多かったんです(続く)@project_Mr_A
— gryphonjapan (@gryphonjapan) 2016年10月12日
この話は以前、この記事で書きました
江戸の知識人らが、ナポレオンを歌った漢詩(新書「江戸のナポレオン伝説」) - http://d.hatena.ne.jp/gryphon/20140805/p6
王は何處(いずこ)に起こる 大西洋江戸のナポレオン伝説―西洋英雄伝はどう読まれたか (中公新書)
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太白 精を鐘(あつ)めて眼に碧光あり
天 韜略を付して 其の腸を鋳る
(頼山陽)
何れの国 何れの代に 英雄無からん
平生 欽慕す 波利翁(ナポレオン)
爾来 門を杜いて 遺伝を読み
惣惣として 年歳の窮まるを知らず
剣を撫し 天を仰ぎて 空しく慨憤す
(佐久間象山)
高野長英や渡辺崋山の盟友・小関三英(蛮社の獄で自殺)がナポレオンの業績を知らしめたとか。
サムライの世ですから、異人は穢れじゃとか日本は神州じゃ、といった意識は意識として「欧州を天下一統した、太閤や権現様のような男がいるのか。ほほう、ナポレオンと申すか。して、どんな武器で、いかなり戦法をとったのじゃ…?」
みたいなところは、無条件で興味や尊敬を得るアレでした。
1804年に皇帝の座に就き、1814年に敗れたナポレオン。この事績、情報がいろんなルートをたどって日本のほうに届いたとき、アヘン戦争で「欧州の武備おそるべし」「日本の武では歯がたたないかも…」という危機意識も生まれた。
そこからの備えが、なかなかギリギリで、ペリー来航に備える準備となった…というのが当方の見立て。
とにもかくにも、
「国奪り物語」には
無条件でロマンを感じてしまうよね!
というような感触を、カストロ訃報で感じた次第。