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John 8:32 Then you will know the truth, and the truth will set you free."  複数ブログの過去記事を移管し、管理の委託を受けています/※場合により、語る対象の「ネタバレ」も在ります。ご了承ください 

「自治体独自の同性パートナーシップ」の思想的父(俺)が上から目線で語る、この制度のアレコレ。

東京新聞:同性カップル支援策を議論 世田谷区長「条例改正も視野」:東京(TOKYO Web) http://www.tokyo-np.co.jp/article/tokyo/20150805/CK2015080502000160.html


 受領証をもらっても、結婚と同等の権利を得られるわけではない。また、宣誓制度を条例化した渋谷区と違い、同性カップルに差別的な行為をした事業者への罰則規定もない。保坂区長は「第一段階として区長の裁量でできることをやった。今後、条例改正も視野に、具体的な取り組みを検討する」と話した。

世田谷区も同性カップル公認へ、「宣誓書」発行 渋谷区との違いは? http://huff.to/1ItinVl @HuffPostJapanさんから


東京都世田谷区が7月29日、同性カップルについて区発行の「宣誓書」でパートナーシップを認める方針を明らかにした。11月をめどに実施する。実現すれば、4月に同性パートナーシップ条例を施行した渋谷区に続き、全国で2例目

ふむ、渋谷に続いて世田谷でもかね。
この制度の創設を思想的な意味でリードし、同区の政界にもいち早く提言した、この制度の「思想的な父」であるid:gryphon としてはいささかの感慨がある。


いやホント(笑)。だれも褒めないので自分で褒めます。


これを自分が提唱したのは2012年5月。

同性婚(結婚)制試論…愛と家族と「私」と、法と制度と「公」。 - http://d.hatena.ne.jp/gryphon/20120512/p4

少なくとも、日本初の制度が生まれた渋谷区も含め、こういう主張が公の場で語られたことはあんまりないんじゃないだろうか。

まぁ、どっかであるかもしれませんが、どこかのエンブレムのように、類似例がどこかにあったとしても、少なくとも自分は知らない。

オリジナルでこの思想・制度を発案したのがいささかの自慢だ。


そして2013年にはLGBT問題を重視している、とする世田谷区議に直接建議をした。

自治体単独で(実際は無効力でも)同性婚を認める公文書は出せないか?」への世田谷区議・上川氏の意見 - Togetterまとめ http://togetter.com/li/541239 @togetter_jpさんから

togetter.com

それを実現するかしないか、渋谷区に先を越されるか越されないかは、あちらの話。
私の思想は、ちと世田谷が当時受け止めるには大きすぎたようだ。


…と、上から目線を言い放題。
こんなふうな具体的政策のアイデアを、実現および政治家の主張に先駆けて語っていた、と言えるのは滅多にないからね。つう訳で「自治体による、同性パートナーシップ制度の思想的父」と名乗らせてもらうのである。

で、その思想的父が、歴史への証言としてこの思想を導いた経緯を書き残しておこうと思う。

もともと「自治体独自のパートナーシップ制度」は、石原慎太郎とゴールドウォーターが参考になった。(国に自治体が叛旗を翻し、独自の制度を作るという意味で)

なんですよ、ぶっちゃけ。

ああ…最初の文章でもはっきり書いていたよ。

なぜこういうのを想像したかのひとつが、同性愛問題の本場アメリカ的な「州と連邦の、(首長の)イデオロギー的対立を通じた制度競争」を日本風にアレンジしたもの。今の日本では石原慎太郎橋下徹的な保守的自治体と政府の軋轢は目にするが、太田県政時代の沖縄を除いては左派的色彩を帯びた自治体―政府闘争をあんまりみないのでね

つまり当方は、連邦とは別に州ごとの独自制度をもち、それはある意味で国への異議申し立てがある…という話を知ったんだわ。アメリカでジョンソン大統領と選挙を争ったゴールドウォーターという共和党の大統領候補は、ジョンソンが推進した公民権運動に対して「私は人種平等に賛成だが、それは州の判断によるべきだ」という言い方をした。

こういう「州独自の制度」vs国家 

という構図から想像し、自分は自治体独自で名目でも「結婚ごっこ」を認める、という案を思いついたのである。

石原氏といえば、LGBTへの理解から何万光年だろうか、すくなくとも一番離れた御仁である(笑)。しかし、その男が渋谷、世田谷で実際に施行された政策を、最初に唱導した人物(俺)への思想的な刺激となったという事実を、ここに記録しておきたい。

ある意味、これこそが思想的ダイナミズムだと思うのである。


やはり当方は「同じロジックでポリガミー(複数婚)、近親結婚も認められる(認めないのは差別)となりますか」に今後もこだわり続ける。

だって、そう思うんだもーん。
頭の体操っぽい、切実感がない、といわれるかもだが、同性婚も当方の目からみれば頭の体操的な思考実験であり、その思考実験の結果「別にOKでしょ」と考えているのだから、上のような設問をしてもいいはずだ。

というか「自治体同性パートナーシップの思想的父」に、たかがにわかどもが文句をいうなっ(と、上から目線でいえるからこの自称は便利だなぁ(笑))


いろいろと専門家に聞ける場では聞いてみたり、議論を採集したりして、資料としてはなかなか面白い感じで集まっているよ。あとでそれを一覧化して、皆さんの議論に役立てたい。


そういえば7月に、例の「弟の夫」が超話題を読んでいる田亀源五郎 @tagagen 氏が論じたことがあり、当方もレスをしたことがある。
ふたつに枝分かれしているので、リンクも2つ必要か。

https://twitter.com/tagagen/status/619804629488922624

田亀源五郎 @tagagen 7月11日
同性婚を合法化するなら一夫多妻などのポリガミーは…という論をときおり見かけるけど、これ、その二つを接続すること自体が間違い。同性婚は結婚のシステム(1対1の契約)はそのままで組み合わせだけを広げようという話ですが、対してポリガミーはシステムの形そのものを変えようという話。(続く
 
田亀源五郎 @tagagen 7月11日
続き)つまり乱暴に言うと、同性婚の合法化とは基本的に現行の結婚の形自体に対しては肯定的であるのに、ポリガミーは逆にその形に異を唱えているわけ。論ずべきポイントが全く違う問題なんです。それぞれ別々に議論を進めるべき話を、無自覚か何らかの意図で接続しているだけ。(続く
 
田亀源五郎 @tagagen 7月11日
続き)で、それらが接続されるケースには2パターンあって、1つはポリガミーを合法化したいという人で、もう1つは同性婚を否定したいがためにタブーとしてのポリガミーを持ち出している人。前者はシステム自体の変更を求め、後者は温存を求めている…と、正反対なのが興味深い。(続く
 
田亀源五郎 @tagagen 7月11日
続き)しかしどちらも前述したように、「同性婚が合法化するなら…」という前提を持ってくるのは、論ずべきポイントが全く違っているので間違い、もしくは意味がない。それでもあえて接続ポイントを探すなら、それはもう「モラル」とかになっちゃうわけで「え、正邪の問題なの?」ってことに。
 
田亀源五郎 @tagagen 7月11日
補足:いちおう私個人としては、ポリガミーの合法化のような1対1という形に縛られない結婚の自由化も、どんどん進んでいけばいいなぁと思っています。ただし、論点は全く違う同性婚をダシに使うべきではない、という話

 

松代守弘【悲報】と【速報】はミュート登録 @m_m1941 7月11日
@tagagen ですよね〜あの手の「アレがアリならコレもアリ?」あるいはナシならナシ話法って、基本的に無理筋の屁理屈なので、事態をいたずらに混乱させた挙句、下手すると例えられた側にも巻き添え出るというのがね…まぁ、その混乱や被害の拡大こそ狙いなのでしょうけど、だからこそ苛立ちが
 
田亀源五郎 @tagagen 7月11日
@m_m1941 多いですよね〜、このテの。でも一度ちゃんと整理しておけば、巻き添え食って論に飲み込まれそうになった当事者が、「あ、問いかけ自体が間違ってるんだ」と気付けるかな〜、と。
 
松代守弘【悲報】と【速報】はミュート登録 @m_m1941 7月11日
@tagagen ですね。この手の話法そのものにうさんくささがあるものの、やはり関心分野についてはていねいに整理して、自分の中でも結論出すのが大切と思うのですよ。

https://twitter.com/gryphonjapan/status/621018984293384192
gryphonjapan@gryphonjapan
一応、当方も、その議論をだいぶしたことがあるのでここに、その理由を書いておこう。
 
1)ポリガミー同性婚も「他者危害が無い限り人の行動は自由でいい」「多様な家族や愛の形がある」という考え方から、同じカテゴリーで論じられるべきと思うからです 
 
2)また現行の夫婦関係は、病院面会権・遺産相続・外国人の場合ビザ発給…などの個別権利の集積だが、それが法律上の「妻(1人)」のみに認められるのは不公平ではないか…との論点は同性パートナーでも、愛する異性がn人の場合も共通すると考えました。
@m_m1941 @tagagen
 
3)百歩譲ってポリガミーは現行システム変更、同性婚は現行システム内範囲拡大、と別立てで論じるとした場合、今度は後者の問題として近親婚が論じられる筈…との論点は、伊佐岐 @midair_za 氏が既にツイートしているので略します。
@m_m1941 @tagagen

木村草太氏の論考について

報道ステーションのレギュラーコメンテーターになって知名度が急上昇しているだろう木村草太氏は、現在沖縄タイムスで連載コラムを書いていて、なかなか面白い。
ただ、沖縄タイムスの公式サイトに載っているのはありがたいが、惜しいことに公式サイトでは、一覧の目次ページみたいなものがない。


それを補うために、togetterでまとめが出来ている。

憲法学者首都大学東京准教授 木村草太 @SotaKimura さんの【木村草太の憲法の新手】 索引 - Togetterまとめ http://togetter.com/li/834253 @togetter_jpさんから

で、ここで最近、同性婚のテーマの回があった。

木村氏はこういう

婚姻を保護する理由は、そこにかけがえのない愛があるからだ。異性間の愛も同性間の愛も、同じ愛であり、差別なく保護すべきだろう。そう考えれば、異性愛だけを保護する現行法は、憲法14条1項が保障する差別されない権利を侵害し、違憲であるとの議論にも説得力がある。

ん?だが以前、

http://togetter.com/li/531566?page=2
gryphonjapan @gryphonjapan 2014-06-07 23:15:42
木村先生、突然専門家に質問する失礼お許しください。 同性婚憲法論から発展した一種の空想として(似た実例ありますが)…「姉と弟の結婚禁止は憲法違反だ」「1人が2人を妻(or夫)にできないのは憲法違反だ」との主張があったら、現憲法は、どう答えるのでしょう? @SotaKimura
  
木村草太 @SotaKimura 2014-06-08 16:38:37
@gryphonjapan 何年か前に学会でも議論になった記憶がありますが、さしあたり、それらの結合をどの程度保護するかは立法裁量の問題であって、禁止しても許容しても合憲だから、あとは立法府の判断だ的な議論に落ち着くと思います

というやりとりをしたぞ?
あー…そうか、だから「違憲であるとの議論にも説得力がある。」という言い回しなんだなァ。「自分は違憲だと考える」とは言ってない、んだ(ニヤリ)。


あと木村氏、憲法上は同性の「婚姻」は難しいかもしれない。だから婚姻ど同様の制度(シビルユニオン)が精一杯かもしれない、という説にも目くばせしてるぜ…。

また、憲法24条は同性間で「婚姻」は成り立たないと理解
  (憲法24条に言う「婚姻」が同性間で成り立つというのは文言上厳しい理解)しても、
  同性婚契約を「婚姻」と呼んではいけないというだけで、
  婚姻と効果が同じ「同性婚」という制度を作ることまで違憲ということにはならんでしょう。
http://blog.goo.ne.jp/kimkimlr/e/6f997602541ba03928e7e79f1171d0a3

この「『婚姻』のかわりにシビルユニオンで妥協しよう」も一部では批判されている議論なんだよな…。

おまけ

1999年時点で、さまざまな当事者団体の連合である東京都人権施策推進指針対策連絡会が、東京都に対し「東京都人権施策推進指針に対する要望書」で:

「3.同性間パートナーシップ登録制度の導入などにより、異性間と同性間のパートナーシップの間に存在する格差を解消すること。例えば、同性間パートナーや性同一性障害の当事者等を含むパートナーに都営住宅の入居資格を付与すること。」

という要望を明記しています。
http://www.waseda.jp/sem-fox/memb/02s/shimamura/sayo.index.html

との資料あり。


過去記事

私の提言、渋谷区で実現…同性カップルに「結婚に相当」と証明書を発行。そこから生まれる課題や論点は? - http://d.hatena.ne.jp/gryphon/20150212/p2