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John 8:32 Then you will know the truth, and the truth will set you free."  複数ブログの過去記事を移管し、管理の委託を受けています 

「一番早く、新発見を報告した学者に名誉」という『学会』の発明ってすごいよね。〜ノーベル賞に思う。

ノーベル賞の季節ですね。昨日、日本人3氏(国籍変更者もいるのかな?)が賞を受賞して、トップ級の話題になりました。


わたくしはノーベル賞の季節というと、時々これを書いていまして、そんなご縁がある。

■科学者スーパースター列伝・元素の魔術師!メンデレーエフ
http://d.hatena.ne.jp/gryphon/20080919#p1
■科学者スーパースター列伝 電気の神様!マイケル・ファラデー
http://d.hatena.ne.jp/gryphon/20101007/p4
■科学者スーパースター列伝  夢のPC砲!パスツールとコッホ
http://d.hatena.ne.jp/gryphon/20111005/p2
■科学者スーパースター列伝「大王の狩人(イェーガー)!! 窪寺恒己」〜副題:青いジャングル
http://d.hatena.ne.jp/gryphon/20131008/p1
※この前に、ほんの少しだけ描かれた「第0回」が発見、復刻されました。
■科学者スーパースター列伝(第0回)放浪の数学者!ポール・エルデシュ
http://d.hatena.ne.jp/gryphon/20130414/p1

今年もやれればやれるように、「列伝」で取り上げる候補は複数は挙げているんだけど(笑)、ちょっと別のことをやるかもしれないので保留してます。(いや待ってる人はいないだろうけどさ)



で、ここで書く話は表題のとおりですわ。

「学者さんは、『自分が発見したよーー』ということを、○○協会に論文送ってください。その業績をここで記録します。新発見者はすげーなー、ってみんながリスペクトします。どっちが早く発見したかは、協会に送ったのがどっちが早いかで決まります」


うーむ、まじ画期的なシステムじゃん。
その名誉心の刺激によって、ナントカ細胞とかカントカ超伝導とか、そういうエラーもでてきちゃうけど、トータルで言えば圧倒的な黒字。
どの国でも、自分の考えや発見を知識人は文字、書籍にして発表をしていたのだろうけど、あっちやこっちでランダムに出してもねえ。いや当時は書籍を出す場所も読む場所も限られていたから、自然とそういう学会というか論壇はできていたのかな?

しかし、やっぱりあったといっても、脆弱なものだったのだろう。


日本でもさまざまな数学的発見や医学的発見、科学的発見があったけど、その普及やシンポを妨げた大いなる障害が「家伝」「秘伝」だった……。
麻酔や種痘などにも、そういう部分があったりする。

花渡る海 (中公文庫)

花渡る海 (中公文庫)

  • 作者:吉村 昭
  • 発売日: 1988/09/10
  • メディア: 文庫
華岡青洲の妻(新潮文庫)

華岡青洲の妻(新潮文庫)

これは粗製乱造やバッタモンの拡大を防ぐ意味もあったりするらしいが、それでもなお…イギリスの王立協会と同時代から、日本に、中国に、朝鮮に、トルコに、インドに…同じような「学会」があり、論文、発見を登録発表保存する仕組みがあれば、世界の歴史は500年ほど早く進化したんじゃないだろうか。今ごろはドラえもんが作られていたかもしれない。


まあ、たらればの話をしてもしょうがない。ではこの「英国王立学会」はどういうふうにしてできたんだろうか。
しらん。
…のでウィキペディアだよりだ。

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%8E%8B%E7%AB%8B%E5%8D%94%E4%BC%9A
この会は任意団体ではあるが、イギリスの事実上の学士院(アカデミー)としてイギリスにおける科学者の団体の頂点にあたる。また、科学審議会(Science Council)の一翼をになうことによって、イギリスの科学の運営および行政にも大いに影響をもっている。1782年創立の王立アイルランドアカデミーと密接な関係があり、1783年創立のエジンバラ王立協会とは関係が薄い。
モットーは"Nullius in verba"(ラテン語で「言葉によらず」)。これは古代ローマの詩人であるホラティウスからの引用で、原文は"Nullius addictus judicare in verba magistri"(「権威者の伝聞に基づいて(法廷で)証言しない」)。つまり、聖書、教会、古典などの権威に頼らず証拠(実験・観測)を持って事実を確定していくという近代自然科学の客観性を強調するものである。
英語表記の Royal は、国王の許可を得て設立されたことを示すもので、元々は会への不当な干渉を防ぐためのものであった。国王が直接の資金援助を行った、あるいは設立に関与したわけではない。このため、日本の科学史家、板倉聖宣は王認協会と呼んでいるが、この呼称は普及していない。同様に名称に Royal を付ける許可をもらい、会への干渉を防ごうとした団体には、王立園芸協会(Royal Horticultural Society)などもある(なお、王立園芸協会の設立に当たっては、当時の王立協会会長ジョセフ・バンクスも関係している)。
王立協会は最初期から開かれた組織であった。協会は、世界中を連結し、得られた科学的知識を共有することを目指した。これはオープンコンテントの概念ともほぼ一致する。協会は秘密を排除し、会員間のコミュニケーションを促進させた。また、言語による他国人とのコミュニケーション不足がなくなるようにも努力した。

はー、なるほど。
別に名君が肝いりで、そういうのを作らんかい、と命じたわけじゃなかったんだ。
というか「ロイヤル」とはある意味「王が『不干渉を』認めた」という意味合いだったとはねえ。おもしろいもんです。


うーん、だが自分が知りたい「ここへの論文投稿を促すことで、学者同士にいち早く発見した名誉を争わせる」という仕組み、それはどういうふうにできていったんだろう?ということは書いてないが…たぶんこういう協会があり、論文投稿の仕組みがあれば、あとは「○○さんの発見のほうがXXさんより早いよ」「△△さんは■■さんの業績を盗んだだけだよ」という評価は自然となされていったのかしらねえ。

ほんとに江戸時代日本にこの仕組みがあったら、平賀源内は、伊能忠敬は、どんな論文を投稿したのだろうか。

ニュートンとフックは17世紀に早くも「発見の先陣争い」をしていた

まんが医学の歴史

まんが医学の歴史

  • 作者:茨木 保
  • 発売日: 2008/02/01
  • メディア: 単行本

などがありますが、後者を紹介。



(※この本、僕が今後ともタネ本にする予定なので、あまり読まないように(笑))


フックさんはバネの研究「フックの法則」や顕微鏡、ニュートンは引力やら錬金術、というふうなイメージがありますが、実はジャンルがかぶっていたのでした。

フックのほうがやや直情径行な面があり、ニュートンは基本的に穏やか。その結果ニュートンハレー彗星のハレーなどの協力者を得て科学界での権威、権力を増し、最後は貴族院議員にもなる。
政治の分野でも、貴族院の議事録をひもとくと、「議長、窓を開けてください」という発言が残っているという(笑)…なんでも、議員としての発言はこれだけなんだって(笑)。

でもでも、そういう才人たちの名誉と嫉妬が絡んだ高踏ならざる競争が、のちの産業革命を用意した。
『真理さえ、この自分が知ることができればいいではないか。なぜ名誉を求めて「これは俺が発見したんだぜー。世の中にはこういう法則があるんだぜー」と世間に触れ回る必要があろうか』
という謙虚な人ばかりが知識人であってはどうしようもない。

あ、その寓話が「梵天勧請」なのか。

http://www.nepal-buddha.jp/life_and_thoughts/encouragement-to-first-preach.php
菩提樹下で悟り、仏陀となった釈尊は、「ついに悟った。このよろこびは何ものにも替えがたい」と、法を悟った楽しみ、悟りを開いたよろこびに何日も浸っていました。「私が悟った法は、無師独悟のものであって、その内容はあまりにも高度なものであるから、一般の人に説いてもわかるまい。自分ひとりのものとして、この悟りのよろこびの中に生涯を終えるのも悪くない。」と思っていたのでした

そこに、梵天とよばれる高級霊があらわれ、釈尊にこう告げます。
「あなたは、悟りを自分独りのものとして、よろこびを満喫しているようですが、あなたが悟りを開いたのはいったい何のためであったのでしょうか。教えを説くことは難しいことかもしれませんが、多くの人びとの救済のために、あなたはあえてその法を説かねばなりません。」

「特許制度」も同じ意味があるのだろうが、やはりこういう仕組みを考えた文明が、世界をリードしたのは必然なのだろうな。

しかし、そんな慣習ができた後でも、やっぱり「自分ひとりが発見できたと納得できればいいやあ」と言って、発見を発表しなかった人がいたそうです。

ヘンリー・キャヴェンディッシュ(Henry Cavendish, 1731年10月10日 – 1810年2月24日)は、イギリスの化学者・物理学者である。貴族の家に生まれ育ち、ケンブリッジ大学で学んだ。寡黙で人間嫌いな性格であったことが知られている。遺産による豊富な資金を背景に研究に打ち込み、多くの成果を残した。
(略)
彼の死後には、生前に発表されたもののほかに、未公開の実験記録がたくさん見つかっている。その中には、ジョン・ドルトンやジャック・シャルルによっても研究された気体の蒸気圧や熱膨張に関するものや、クーロンの法則およびオームの法則といった電気に関するものが含まれる。これらの結果はのちに同様の実験をした化学者にも高く評価された。(ただしこれらは、未公開であったがゆえに、科学界への影響はほとんどなかった。「もし生前に公開されていたら」と、ひどく惜しまれた。

人類の知を100年早めた可能性がありつつ、そうしなかった人。
自分はこの人を

で知りました。


逆に…「アシモフの雑学コレクション」というのにあった話を記憶で語るけど
・とある国で、何かの医学書科学書)が出版された。
・この作者は、ハッタリを効かせようと思ったのか、過去の(架空の?だったかも)大魔術師として有名だった人の名前を騙って書いた。
・その本、今から見ると非常に画期的なことばっかり書かれていた重要な一書だった。著者が分かれば、その名誉は永遠に顕彰されただろうけど、そんなふうに名前を騙った名無しさんなので、顕彰のしようが無い(笑)



……と、そんなこんなで、科学者の名誉欲や自己顕示欲、嫉妬などを煽りに煽ってフル回転させる「学会」という仕組み。その仕組みはすごいものであるなあ、…と、毎年ノーベル賞のたんびに思っていた感慨を、文章にしてみましたのココロ。


あ、そうだ、こういうことを考えるきっかけのひとつに、「シビライゼーション」で王立学会を建てると科学知識の発展スピードが速まる、というのがあったことを記し、感謝しておきたい。