INVISIBLE D. ーQUIET & COLORFUL PLACE-

John 8:32 Then you will know the truth, and the truth will set you free."  複数ブログの過去記事を移管し、管理の委託を受けています 

アルジャジーラにW杯…の「中東の優等生」カタール王家で内紛?その裏側と、「21世紀の絶対王家」サウジとの暗闘

当方のアンテナには
佐々木良昭氏の「中東TODAY」
http://www.tkfd.or.jp/blog/sasaki/
そして”新進気鋭の若手学者”池内恵氏の「中東・イスラーム学の風姿花伝
http://chutoislam.blog.fc2.com/

が登録されております。この2ブログ両方で取り上げられるテーマだと、要は中東にとっての一大事といっていい。

そんな中で中東TODAYは

NO・3171 『アラブ革命の火付け役カタールで宮廷内紛か』
NO・3173『カタールムスリム同胞団員追放始める』

(3171)アラブの春革命を煽ったのは、カタールだったというのが、一般的なアラブ研究者の認識だ。カタールのアルジャズイーラ・テレビがチュニジアリビア、エジプトなどで起こった、アラブの春革命の火付け役であり、扇動役を果たしていた。
シリア問題でも、カタールは資金や戦闘員を、シリアに送り込む工作を進めてきたし、いまだにそれは続いている。そして、それをアルジャズーラ・テレビを通じて、効果的に宣伝してもいるのだ。
そのカタールサウジアラビアアラブ首長国連邦、そしてクウエイトとの関係をこじらせて、対立関係を生み出している。その後、カタールは湾岸諸国との関係は回復したと言うが、どうもそうではないらしい。
カタールとエジプトとの関係も、未だに相当悪化したままになっている。述べるまでもなく、カタールは長期に渡って、エジプトムスリム同胞団の重鎮カルダーウイ師を、匿ってきていたからだ。
言ってみれば、アラブ諸国にとって禍の元凶であるカタールでは、最近になって宮廷内紛争が、起こり始めているようだ。

と。
そして風姿花伝のほうでも

カタールエスノクラシー、原資は日本 (05/10)

http://chutoislam.blog.fc2.com/blog-entry-109.html

という記事をUPした。こちらは時事的ないま現在のカタールのトピックではなく、湾岸産油国という国家が持つ、ある種の裏の顔、体制のひずみを観察したスケッチだ。だからこそより興味深い。

いつものことながら湾岸産油国に行くのは気が重い。エジプトやシリアやレバノンで中東研究の基礎を学んだ私自身の経験が影響しているのかもしれないが、文化的な深みや知的活動の活発さ(質はさまざまだが)があるエジプトやレバント(シリアやレバノン)には、どんなに厄介な条件があっても、いざ行くとなるとわくわくする。

しかしペルシア湾岸の産油国は、国全体が「ドラ息子養成システム」にしか見えないことがあり、失望や困惑を最初から味わうことが多い。だいたい、行ってもほとんどカタール人やUAE人といった、現地の国籍を持って永住権を持っている人にほとんど出会わないのだ。
(略)
仕事で行くとなると、「エスノクラシー」とも呼ばれる、国籍によって身分・権利・待遇に厳然と差をつける、「詳細なアパルトヘイト」と言ってもいいような制度の暗く重苦しい空間に放り込まれる。そこでは産油国の国籍を持った市民が経済特権を持つ一級市民で、その中で首長家や有力部族家が政治的な権利を持つ主権者である。

欧米人は産油国の一級市民とほぼ同格の経済的地位を与えられ、法外な報酬を得る。しかし産油国に来る欧米人の側は「本国で食い詰めて、金に釣られて地の果てに来た」という都落ち意識が強く、「こんなとこにいられねーよ」とくだを撒き、「儲かるからいてやる」と露骨に差別意識で凝り固まっている。

そして。

日本人はと言うと、欧米人と比べるとびっくりするほど安い給料でなぜか自発的にせっせと働いてくれる、都合のいい中間技術者・・・ヒエラルキーの中ほどに位置する使用人として扱われているだけで、「アラブ人は親日的」なんてことはありません。単に欧米人に対して感じるコンプレックスを日本人に対してはまったく感じないので「気が楽」と言うだけ。「日本は素晴らしい」とか言っていた人の前に金髪・青い目・白人限定の欧米人が通ると、突然上の空になって、露骨に「ピュー」とそっちに行ってしまいます

欧米の国際メディアや人権団体からそれほど強く批判されないのは、やはり金の力。仲良くしていればいいことがあるかもしれない、となるとみんな黙る。欧米人を十分に儲けさせ、いい思いをさせているから、湾岸産油国はある程度以上叩かれないのです。あらゆることで西欧から「人権侵害」を批判されてしまうトルコなんて、天と地の差があるほどの人権・民主化先進国なのにね。

・・・そしてワールドカップに向けて各種施設の突貫工事が続くのだが、そこでの労災死の数が尋常ではない。亡くなっているのはもっぱら末端の建設労働者だ。この職種はエスノクラシーではインドやパキスタンやネパールなど南アジア系の出稼ぎ労働者に割り当てられることが多い。
(略)
批判しているのはインド政府や欧米の人権団体だが、それに対してカタールなど湾岸産油国の政府は欧米人の法律家やメディア・コンサルタントを雇って、欧米の法律用語を使って欧米メディア上で反論するので、ある程度以上の追及はなされない。外から見ると、欧米人が批判して欧米人が反論して高い報酬をもらうというマッチポンプにも見える。

だが、最近カタールに関する批判記事や王室の内紛を伝える情報が出てきた。
だがだが・・・

報道が出てきた背景には、湾岸産油国内部での対立がおそらく影響している。

3月にはサウジアラビアバーレーン・UAEがカタールから大使を引き揚げて対決姿勢を明確にしたが、これに先立つ時期にカタールをめぐるスキャンダル報道が続出したのは示唆的だ。結局、サウジ系のマネーの力が有形無形に作用して欧米メディアや人権団体のカタール批判が拡大したのだろうと推測できる。
(略)
カタール首長家の全面的支援によりドーハに設立されたアル=ジャジーラでは、カタール以外の湾岸産油国の人権侵害は頻繁に報道するのに、スポンサーのカタールのことになると沈黙・・・・・・ムスリム同胞団への支援などで湾岸産油国内部の対立が激化したことを背景に、サウジに近い筋が欧米メディアや人権団体を刺激してカタール叩きをやらせているのだろう、とまともに中東を見る人なら即座に推測できなければならない

プロパガンダロビイストの活躍によって一国のイメージが上がったり下がったりするか、といえば・・・
池内氏はこの本の文庫解説の執筆者だった。「日本三大文庫名解説」のひとつとも言われている(※俺が言っている)

銃弾より「キャッチコピー」を、ミサイルより「衝撃の映像」を!!

演出された正義、誘導される国際世論。
ボスニア紛争の勝敗を決したのはアメリカPR企業の「陰の仕掛け人たち」だった。

スパイ小説を超える傑作ノンフィクション!!
NHKスペシャル民族浄化」で話題を呼んだ驚愕の国際情報ドラマ!

人々の血が流される戦いが「実」の戦いとすれば、ここで描かれる戦いは「虚」の戦いである。「情報の国際化」という巨大なうねりの中で「PR」=「虚」の影響力は拡大する一方であり、その果実を得ることができる勝者と、多くを失うことになる敗者が毎日生み出されている。今、この瞬間も、国際紛争はもちろん、各国の政治の舞台で、あるいはビジネスの戦場で、その勝敗を左右する「陰の仕掛け人たち」が暗躍しているのだ。――序章「勝利の果実」より

象徴的存在と実際に政治に携わる存在の違いがあるとはいえ、日本の”王家(この用語をあえて使う)”は近代以降、本当に人に恵まれたな・・・・・・てかサウジをはじめとする湾岸首長国の体制は本当にいつまで持つのか。まぁうっかり政治的才能のある英邁な君主が生まれ、うっかり躍進したりする可能性も常にあるのだが、それが宝くじ的なものであることもたしかだ。

とりあえず上の、池内氏のカタール論(湾岸首長国論)は必読、だという話。