要登録
http://digital.asahi.com/articles/DA3S11026181.html
ヨーロッパから、3・11後の日本を、ある時は温かく励まし、ある時は厳しく叱ってきた人がいる。作家の塩野七生さんだ。イタリアに40年以上住み、古代から中世の地中海世界と向き合い、壮大な物語をつむいできた。東日本大震災から3年の私たちは、どう見えているのだろう。ローマ市内の自宅で聞いた。
(略)
「原発が絶対安全ではないことは福島で証明されました。これからも絶対安全だと考えてはいけない。ただ、私は再稼働には賛成です」――安全ではないけれども再稼働せよと?
「そうです」
――将来、また大事故が起きるかもしれません。
「もちろんそうです」
――それでも再稼働ですか。
「イタリアも日本も、中小企業で生きています。イタリアは原発をやめてフランスから電力を買うようになって久しい。その代わり、電力料金が他国に比べて3割がた高くなりました。こうも高くては、産業の競争力は低下せざるをえません」
――絶対安全ではないと学んだにもかかわらず再稼働しなければならないなんて、悲しくないですか。
「悲しいですよ、当たり前です。でも除染や廃炉を進めるのも、安全性を高めるのも、他の電力源の開発にも、お金が必要です。そのお金は人々が稼ぐしかないのです」
――再稼働すれば「原発のごみ」はさらに増え、未来に負担をかけます。未来の世代を考えろという話と矛盾しませんか。
「ここで立ち止まるのは、日本には許されません。始めたことを途中でやめては、これまでの苦労が水泡に帰する。続けていく中で軌道修正していくしかないのでは」
「私は批評家の東浩紀さんたちが提唱している『福島第一原発観光地化計画』に大賛成です。東京電力福島第一原発の事故の跡地。あそこを世界中に見せようじゃない、何もかも。原発業界の秘密主義の体質を変えるのにも役立つし、なにより今現場で大変な思いをしながら仕事している人たちを力づけることになる。事故処理や廃炉は日本人の知力と技術のすべてを投入して行い、それをガラス張りにして、原発の輸出とセットにしてビジネスにすることだってできるかもしれない。お金を稼がないと何もできないのだから」
これは自分も当時読んでいたが、21日の浅羽通明氏講演会で『非常に重要な文章』として紹介された。
同氏言う。
『原発推進はある意味ぜんぶ「現状を維持しよう」という話ばかりだったが、塩野氏の論なら賛否はともかく、原発推進”思想”といえるだろう』
『あと、身内同士の褒めあいしか目にしなかった東浩紀氏の福島観光地化プラン、外部から賛成意見が出たのは初めてじゃないか(笑)』